交差するDestiny Ⅳ

 灰崎君の暴走を止めた椿は、僕と共に青の騎士団本部へと戻っていた。契約して青の騎士団に入団したそのままに、裏世界の渋谷の方へと走って行き、スカイスティングレーを討伐した先で灰崎君と問題を起こして帰ってくる。もしかしなくても、僕と灰崎君はとんでもない問題児である。

 ホルダーなんていう超常能力たちを束ねている組織に入団しながら、そこでギフトを使って問題を起こすなんて、正直僕がリーダーだったら首にする気がするんだけども。


「……灰崎慎太は初犯ではないから一週間の謹慎処分。神代蓮は反撃していないから取り敢えず問題無し」

「なんでだよっ!?」

「黙れ。私は何度も忠告したはずだ……お前は問題を起こし過ぎだとな」


 エレボスは静かに、しかし確かに死を予感させるような圧力を発しながら灰崎君の方を睨んでいた。灰崎君もその気配を感じているのか、一瞬怯んだ様子を見せてから僕の方へを睨んだ。

 恐らく、灰崎君は今回の処分納得がいかないのは、僕に処分が下っていないからだろう。入団したばかりで、僕から問題行動を起こした訳ではないので処分無しという判断なんだろうけど、灰崎君から恨まれるようなことはしないで欲しいと思うのは、我儘だろうか。


 灰崎君がこちらを睨みながら退室していくのを横目に、僕は団長の方へと視線を向けた。


「君のギフト、時間を加速させているのかい?」

「……どうやって知ったか聞いても?」


 なにか苦言を呈されるのかと思ったんだが、出てきた言葉は僕のギフトに言及するものだった。しかし、僕がギフトに隠していたのは先日のことで、力を使ってモンスターなんかと戦うのはまだ2回目なんだが、団長エレボスは僕の能力を正確に把握していた。

 正直、外から僕のギフトである『時間の掌握』は外から見ていても理解できる訳がないと断言できる。それくらい、僕のギフトは不可解のはずなんだ。


「そう警戒しなくていい……秘書のドゥアトのギフトは『感知』といって、裏世界で起きている全ての事象を把握することができる。君の動きが異様に速くなったことに対して推測を立てているだけだよ」

「人のギフトを簡単にばらさないでください」


 横にいるドゥアトさんの反応から見て、団長の言葉は真実なんだろう。まさか裏世界全ての事象を把握できるギフトとは、予想を遥かに超える強力なギフトが出てきて驚いてしまったが、確かにそれなら僕の意味不明な行動速度も理解できるだろう。


「時間の加速とは……とんでもないギフトだね。本当に君が『敵』に渡らなくてよかったと思うよ」

「……敵?」

「説明されていないのか? ヘルヘイムならさっさと喋っていると思ったが……まぁ、今のうちに話しておこうか。我々、青の騎士団が敵対している組織のことを」


 面倒くさそうな話だが、これを聞かなければ僕が椿を何から守ればいいのかを把握できるかもしれない。未だに団長エレボスについては半信半疑状態だが、聞かなければならない話もあるかもしれないからね。

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