幕間 現れたUnknown
「ドゥアト、あの少年のことをどう思った?」
扉から出て行った神代蓮を思い出しながら、青の騎士団の団長である少女エレボスは己の隣にいる秘書に問いかけた。
通常の人間が認識することができない超能力『ギフト』を扱う者たち『ホルダー』の組織を管理するエレボスは、神代蓮という人間のことをどう思ったか信頼する秘書であるドゥアトに問いかけたのだ。
「……正直、貴女の放つ殺気に対して全くもって動じなかった時点で、化け物級だと思いますが」
「いや、彼は私の放つ殺気なんて気にしてすらいないさ。なんなら、戦闘になれば勝てる見込みがあったんだろうね」
ドゥアトはその言葉に絶句した。
青の騎士団の参謀兼索敵リーダーを務めるドゥアトにとって、戦闘は全く持って専門外の話なのだが、それでもエレボスがどれだけの力を持っているのかは知っている。だからこそ、ただの新人少年が勝てる気でいたと言いながらも、エレボスはそれを無謀だと笑わない事実に、絶句したのだ。エレボスという少女は、それが無理だと思ったら本人の前で爆笑する空気の読めない人間なのだ。
「あの少年……レンのギフトは私の理解を超えたものかもしれない」
「……それは、途轍もないですね」
そのエレボスの言葉が本当かどうかなど疑っていない。断言していない時点で、ドゥアトはエレボスが本当にどうなるか、わからないのだと思ったということだ。
「……まぁ、今は取り敢えず彼がヘルヘイムの精神安定剤になってくれると思えばマシさ」
エレボスは神代蓮という人間がヘルヘイム、つまり榊原椿のことを心の底から大事にしていることを確認してわざと言わなかったのだが、椿は青の騎士団として活動する途中で何度か錯乱したことがある。それが裏世界での活動の精神的なストレスから来るものなのか、表世界での生活による精神的ストレスの結果なのかはエレボスにもわからないが、彼女の記憶にある榊原椿という少女は、自らの力を制御しきれない子供だった。
しかし、今日この青の騎士団の本部にやってきた椿は非常に安定している様子を見せていた。
「やはり彼女には同年代の語り合える存在が必要だったのだろうな」
数年前から活動しているため、青の騎士団に属しているホルダーは基本的に社会人のことが多い。高校生として現役で活躍しているホルダーなど、そう多くない。
「……彼はどうするのですか?」
満足気に頷いているエレボスに対して、ドゥアトは一人の少年のことを思い出して問いかけた。椿と同じ年頃でありながら、全く可愛げもない少年は青の騎士団の困りごとの一つだった。
「次に問題を起こしたら謹慎でいいだろう。性格はあれでも、実力はそれほど悪くないからな」
「……ヘルヘイムの精神的ストレスの三分の一は彼だと思いますけどね」
ドゥアトの呟きに対して、エレボスは一人で笑っているだけで全く取り合うつもりはないらしい。それを察したドゥアトは、活動する度に問題を起こす少年の対応を考えて、溜息を吐いた。
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