第5話 資格!?もう1人の男の娘
「ふー!さんじゅいち!さんじゅに!さんじゅさん!さんじゅよん!さんじゅご!さんじゅろ...ぐはぁ!」
「まだ36回じゃない!せめて100回までは行かないとお話にならないわよっ!」
「だって...ぜぇ...ぜぇ...最近...ぜぇ...ぜぇ...腕立て伏せはおろか...運動なんてしてなかったから...」
「ほんとだらしないわねっそれじゃあヒーローなんて夢のまた夢よっ」
「そう言われても〜」
それだって勝手にやれと言われただけだ...一応覚悟は決めてはいるが...
「てかそもそもさ、本当に僕しか使えないわけ?クワトロハンドって使おうと思えば葵でも使えるんじゃないの?」
「いえっ無理よっクワトロハンドはつけた相手が男の娘か男の娘じゃないかを瞬時に判断する機能があって、男の娘じゃなければ機能しないようになっているのよっ」
「なんじゃそりゃ」
「理由はもう説明したわよねっ男にも女の子にも好かれやすいからよっ」
「それってつまり男の娘だったら誰でも使えるってこと?」
「まあ理論的にはね?」
「ふーん」
つまり僕以外の男の娘がいて、その人がクワトロハンドで催眠された人達と戦ってくれたら、僕はもう戦わなくてもいいってことか...
実際にそんな人がいるのかいないのか、そもそもそうなった時僕は素直に渡すのか色んな疑問が頭の中をよぎったが何となく肩の荷がおりた気分にはなった。
「ほら!休憩はこれくらいにして次は腹筋よ!」
「ええ!?まだやるの!?」
「良いから!」
「うえーーーん!」
〜***〜
ガチャ
「失礼しまーす」
「やあやあなしな君!今日はどういうご要件で来たのかな?」
あの後なんとか腹筋100回スクワット100回を終わらせた僕は逃げるように科学部へ来ていた。
「楽に筋力のつく機械とかないですか?」
「ないね」
「えぇー!なんでですか!?ほら!なんか腹筋パックみたいなの!あー言うの作ってくださいよー!」
「別にあれ腹筋割れるだけで腕に筋力がつくわけでもないんだから無駄だよ」
「えぇー!?」
「おとなしく努力する事だね、香澄君お茶を」
「はーい♡ぶちょー♡今お持ちしま...ちっなしなかよ」
なんか舌打ちされた...
「はいこれお茶」
「あっありがとう」
「ぶちょー♡これお茶です♡どーぞ♡」
「ああ、ありがとう」
お茶を渡し終えた香澄さんはサラッと科林先輩の隣に座る
ちゃっかりしてるなぁ〜
「と言うかそもそもなんで鍛える必要がある。クワトロハンドルネームがあれば大体の奴らは何とかなりそうな雰囲気があるのだが」
「僕もそうだと思ったんだけど校長曰く男だって催眠被害者になり得るしその場合なしなの筋力ではろくに戦えないって」
「ほぉ確かに一理ある...」
「あと」
「あと?」
「クワトロハンド最後のタイプ、グラビティハンドを使うには筋力は必要不可欠って言ってた」
「グラビティハンドねぇ?体が一気に重くなるとか?その重さで殴れ的な」
「でもそうしたら重さでなしなが潰れちゃいません?」
「君は僕をなんだと思ってるんだ。」
「だから鍛えなきゃいけないとか?」
「あーそれならありそう...」
「まあどの道鍛えるしか無いって事だね、頑張りな」
「えー本当にどうにかなりませんか?」
「鍛えるってのからはズレるけど相手を倒すって点だけなら良いのがあるよ...」
「え!?マジですか!?」
「超圧縮水圧カッター02、厚さ1mの分厚い鉄板すららくらく切り裂く優れものだけど」
「やっぱいいです」
〜***〜
結局楽する手段はない、それだけ理解した僕はため息を吐きながら帰路に着く...
「ねぇ、葵」
「何?」
「現実って上手くいかないもんだね...」
「筋トレの話?」
「そう、腕立て伏せ100回も行かなかった...」
「あははははwなしなって昔から運動はてんでだめだもんね〜」
手厳しい意見だ、いや実際そうではあるんだけど。
小6の時の僕の徒競走の記録は26秒58、女子にすら劣っていた。それからはずっと似たような記録だったし、体育の評定はいつも2、マジでギリギリだった。
「はぁ〜地道に筋トレ頑張るか〜」
「それしかないんだから頑張りな〜」
「そういえばお昼ご飯ってなんだっけ?」
「えらく唐突だな」
「気になった」
「今日は確か唐揚げだよ」
「ヤッター」
くだらない雑談をしながら僕らは1本道を歩いて行くのだった...
〜***〜
「ふぅ」
夜ご飯を食べ終えた僕はベットに倒れ伏して横になる。
「はぁ〜やっぱ筋肉が足りないのかな〜」
僕はため息を吐きながら自分の二の腕を見てみる...
「うわほっそ、そりゃ100回も腕立て伏せ出来ないわこりゃ」
正直自分で言ってて悲しくなる。このままじゃだめだって分かってる、前の科学部の時だって2回とも葵が来てくれなきゃ何とかならなかったし、葵の時だって本当にほぼ偶然何とかなっただけだったんだ、もしまた葵ぐらい力の強い、それこそ男の潜伏タイプだったら2人組でこられたら...
「はぁ、ほんとヒーローしてて良いんだろうか......僕って」
何となくの不安感が身体を伝わっていく。
〜***〜
ぽちゃん...ぽちゃん...
水が落ちる音が辺りに静かに響く。
「あら?水道管閉め忘れてたかしら?」
私はすぐに蛇口を閉めてソファに座る。
目の前にいるのは先程まで寝ていた男の子、どうやら体育の着替え中に鼻血を出して気絶したらしい。
「それでなんで鼻血出して気絶しちゃったの?」
私は優しく諭すように彼に問いかける、すると彼は少し体の力を抜きぽつぽつと語り始めた。
「俺のクラスに女っぽい男がいるんですよ、可愛くて愛想良くて...俺も友達として仲良くしてんすけど、体育の時間俺の目の前で脱ぎ始めた時なんかわかねえんすけど、胸がドキドキして...そいつのことがめっちゃエロく感じでつい......」
「出しちゃったわけか...」
..........最っ高だ、最&高だ!
ここまでの男の娘への劣情を持った男なら実験にちょうどいい!なにより!こんなに悩ましい悩みを持っているのなら!解放してあげなければ可哀想がすぎる!
「そっか...」
「先生...これっておかしいことなんでしょうか...」
「全然おかしくないよ!むしろ先生はいい事だと思うな...今の時代誰が誰に恋をしたっていい時代なんだから」
「ほんとですか!?」
「勿論!」
私は胸に付けておいたネックレスを外し、振り子のように持つ
「だからぁその欲望...解放していいんだよ?」
私はその男の子の目の前にネックレスを見せて、催眠に掛ける。
「え?あぁああああ!?うぁぁぁぁ! !?あああ!??」
彼はあと1時間くらいは理性と本能の狭間で苦しむことになるだろう...私も心苦しい...だが!それも彼の解放には大切なのだ!欲望を解放して上手くくっつけることを期待しよう!
〜***〜
「ふぅはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
まだまだ光も刺したばかりの朝、僕は1人誰もいない歩道を走る。前から来る向かい風がやや心地よく感じながらスマホで目的地までのルートを確認する。
「えっとショッピングモールライオー前の公園まではこうこうこういって...」
「いや、せっかくのジョギングなんですし少しでも距離を稼いだ方がお得ですよ、ここを曲がると200mぐらい遠回りして行けますよ」
「確かに...じゃあそれでって...誰?」
あまりにも自然に並走してきたからつい何も考えず乗ってしまった。いま話しかけてきたやつは僕の知り合いでもなんでもないやつだった。
見た目の印象は茶髪ショートの活発美少女と言った感じだが、僕にはわかるこいつは男だ、肩周りや筋肉の付き方的が完全に男なのだ、ん?なんでそんなこと知ってるのかって?身分証を忘れたときに少しでも男の証明をするために決まってるだろ
「失礼しました...グス...お兄さんが走りなれてなさそうだったのでつい...グス...おじゃまでしたよね...グス...ごめんなさい...」
「いや...別に...嫌って訳じゃ...」
「じゃあついて行きますね!」
「えっあ...うんいいけど...」
「えへへ泣き落とししたかいありましたー!」
騙された...急に泣き出すもんだからとっさに同行を許可してしまった...
「えへへお兄さん!よろしくお願いしまーす!」
「はいはいよろしく〜」
「お兄さんって男とは思えないぐらい華奢ですね」
「君も人のこと言えないと思うけど」
「え?男って気づいてました?よく分かりましたね」
「それはそっちもでしょうが」
「そりゃそうですね」
〜***〜
相も変わらず誰もいない道路を僕達はくだらない話をしながら走っていく、まばらに敷かれているじゃりがジリジリと音を立てており、それまた心地よく感じる。
「へぇ〜じゃあそのクワトロハンドって言うので男に電を流すため筋トレしてると」
「言い方ね...まああんまりこれ他の人には言っちゃ行けないんだけど...」
「じゃあなんで教えてくれたんです?」
「なんでだろ?安心したからかな」
「なんですかそれ」
誰でもいいから僕の悩みを聞いて欲しかったのかもしれない...
「じゃあせっかくなので僕の秘密もバラします...」
「何その流れ...」
「まあまあ、僕これでも道場の跡取りなんですよ。」
「へぇ〜それはご大層な...」
「そんないいもんじゃないですよ、ちょっとでも女っぽい見た目をしたら怒られるし、やりたいことも全然出来ないですし、こうやって体を鍛えなきゃ行けません、枷が多すぎます。」
彼には彼の苦労もあるだな...
「でも...」
「でも?」
「そんなに嫌いじゃありません...」
「だろうね...走ってる君楽しそうだもん」
「プロポーズですか?照れます」
「違います...そもそも僕君の名前すら知らないし」
ここでハッとするそういえば名前聞いてなかった...
「そういえば...君は名前なんて言うの?」
「夏木怜斗です、ちなみにお兄さんは?」
「僕はなしな、男らしくない名前でしょ」
僕は自重気味に笑う
「まあ確かに男らしくない名前ですね」
「なんでも、最初お医者さんが産まれてくる子は女の子だって間違えて伝えられたみたいで、その影響でそのまま女っぽい名前に、そしたら女の子っぽい見た目にまでなっちゃって...男らしさっていうのが昔から全然なくて...その点怜斗君は同じ男の娘でも結構違うよね」
「そうですか?」
「そうだよ、今の僕もうクタクタで汗もだいぶかいてるけど、怜斗君は全然かいてないじゃん。」
「まあなしなさんの身体はよわよわなのでそんな感じはしますが、男らしくないっていうのは的外れな気がしますね。なしなさんは私なんかよりずっと男らしいですよ、まるでヒーローみたいだ。それに...私なんて全然強くないですよ...」
そういうと怜斗君はカラッと満面の笑みを浮かべ、その後少し沈んだような曇り顔をする。その姿が妙な不安を誘った。
〜***〜
「...とそろそろ着きますかね」
「ぜぇ...ぜぇ...ぜぇ...やっとか」
目の前にそびえ立つのはデパートライオー、最近たったばかりの出来たてのデパートだ。
「お兄さんお兄さん!せっかくなら一緒に行きませんか?デパート!」
「え!?いや...ちょっと特にお金とか持ってないし...」
「私が出しますから!ちょっと遊びましょーよー」
「いや年下に出してもらう訳には」
「あーもー!良いから遊びましょーよー!」
「え!?あっちょっと!掴むのやめて!んな強引なー!」
〜***〜
僕は怜斗君にほぼ引っ張られる形でライオーへ入店する。
「やっぱ開店したて!いっぱいいますね〜!」
「はあ...僕今500円玉しかないよ?」
「いいですよ!せっかくなんで僕の買い物に付き合って下さいよ!」
「まあそこまで言うなら...」
「やったー!」
こうして僕は怜斗君につられて色んなお店(主に服屋)に行くことになる。
「どうですかお兄さん!この格好!」
「どうって...確かに可愛いんだけど...これはちょっと...」
「え!?そんなに駄目ですか?」
「いやこれ...ちょっと...スカートがスースーするというか...明らかにレディースだよね!?なんで僕にこんなの着せるの!?」
長めのロングスカートにポップな服、アクが強めのベレー帽、どう考えても僕が着るべき服では無い...
「さあ!どんどん行きますよー!」
「え!?続くの?」
そこからはまあなんというか怒涛だった怒濤
「王道ど真ん中!ストレートにワンピース!」
「普通に恥ずかしい!」
「ちょっとあざとめ?ゴスロリドレス!」
「自分で言うのもなんだが人形感が拭えんなこれ」
「ここであえてのメンズ!」
「まあこれぐらいなら?」
「そして最後に水着!」
「ちょちょちょちょ!?これは!?これはダメだって!」
ヤバイヤバイヤバイ!どんどんエスカレートしてってる!
ガシ!
僕は思いっきり怜斗君の服の裾を掴む
「1回!1回休憩しよう!ね?」
「そんな涙目にならないでくださいよ...」
「だって...だってぇ」
「ほんと可愛いなこの人...とりあえずクレープ屋行きましょうか...」
〜***〜
「さとこ...なんでパチンコなんて行こうとしたの?」
「だって...ぐす...行きたかったんだもん...」
「行きたかったじゃないよ全く...」
「どうしたんですかお兄さん?」
「いや...知り合いがパチンコ行ってたとかそういうので怒られてた...」
「あー」
傘谷さとこ、僕が自己紹介をした時に何故かぶっ倒れれたやべー奴、それ以降何かと目の敵にされる...ほんとなんでなんだろうか...まあ今回あいつが怒られてる理由は全く違ったぽいけど
「ほんと...ほんともうしないので許してください...」
「いいけどお小遣い減額ね」
「まって白姉さん!そんな無情なことしていいとでも!?」
「うん」
「酷いー!」
どうやら交渉決裂したらしい
「お兄さん...パチンコ行ったらダメですよ」
「行かないよ!?」
この後、僕達はクレープを買って、テーブルに座って食べはじめる。
「それでやっぱり私が折れるべきかな?」
「白姉さん!考え直そう!」
「はぁ何が悲しくて1人でクレープを...イリス...誘えば良かった...」
「はぁ〜童貞無職で真っ昼間からひとりクレープか...」
なんかここ暗い話多くね?
「なんか暗いですねここ、なんというか重さが...」
「確かに...謎の重みを感じる...」
「まあみんな何かしら悩んでるってことですかね」
「みんな簡単には人には言えないことや何も考えずにやらかしてしまったこととか色々あるもんね」
「でも案外、直面してみれば楽なのかもしれませんよ?」
「どうかな...」
「まあそれは人それぞれですね。」
「確かにね、そろそろ帰ろっか」
「そうですね、いっぱい遊べましたし」
〜***〜
こうして僕達は帰路に着いたのだが、こういうタイミングにこそ、色々な災いが起こるのだろうか...最悪な自体に直面していく...
「れいとおおおおぉ!」
「「え!?」」
突然目の前に学生服の男が現れるしかもうちの学校だ!、ちらっとだけ見えたが目にハート明らかに催眠被害者だ。
「怜斗君!逃げて!」
明らかに狙いは怜斗君だ、僕はいち早く彼に逃げるように伝える。
どうする...クワトロハンドは自宅に置いてきてる...いまは使えない...とりあえず葵には連絡するとして...なんとそれまでの時間稼ぎを...
「れいとおおおおおおおお!!!!」
「んな!?」
僕が考える余裕なく男は襲って来る.....やっぱり男のとの力の差は絶大で、防戦一方どころが速攻で絞め技を食らい地面に叩きつけられる...
「早く!早く逃げるんだ!」
このままじゃ怜斗君が捕まる!なのに身体動かない...嫌だ!さっきまで仲良く話してた子が目の前でぐちゃぐちゃに犯されてるところとか見たくない!そんな展開誰も望んでない!
「れいとおおおおおお!」
「やめろぉぉおおおお!」
「大丈夫です!お兄さん!」
そういうと怜斗君はすかさず男に懐に潜り込み膝打ちから裏拳、回し蹴りトドメに右ストレートの4連撃を浴びせる...
食らった男は悶絶していた...
「え......強くね?」
「まあ跡取りなんで...」
「まあ確かにそうか...」
すごいな...僕と同じ男の娘なのに強くてかっこいい...まるで...
〈「それってつまり男の娘だったら誰でも使えるってこと?」
「まあ理論上はね?」〉
彼になら...任せても...そもそも僕は緊急でなっただけだし、特撮でありがちな最初になった人しかなれない的なものでもない、一応なろうと思えば誰でもなれる...だったら彼が相応しいんじゃ...
「なしな!これ!」
僕の邪な考えを突き破るようにクワトロハンドが投げ渡される。
僕はそれをすかさず受け取って右手に装着し立ち上がる
【クワトロハンズ!!ON!!ON!!⠀】
「さっさと終わらせる!」
【ハート!!マグネ!!ストライク!!】
僕はハートのスイッチを押しマグネハンドを起動する。
そしてそのまま男まで近づいて...
【ダイヤ!!エレキ!!ストライク!!⠀】
「これでフィニッシュ!」
「れいとおおおおおおおおおおおおあばばびびばびはまゅ」
猛スピードでエレキハンドを浴びせて元に戻す...
「今回過去一電撃を受けた時の声気持ち悪かった...」
「健一...」
「あ、やっぱり...」
「うん、私の友達です...」
やっぱり友達が苦しむ姿は見てて辛かったのか怜斗君はかなり落ち込んでいる...
そうだよな...今回は僕がこれをやったけど...怜斗君にこれを押し付けなきゃ行けなくなるわけか...
「ねえ...なしなさん...」
「ん?」
ドン!!!
めっちゃ鈍い音がして...辺りの視界が暗くなる...
「れい...と...く...なん...で....」
「すいませんなしなさん」
視界が暗転する...こうして僕はそのまま気絶してしまった...
次回予告!
怜斗の謎の腹パン、その謎を探るためなしな達は捜査を開始する。その中で知る怜斗の後悔、コンプレックス、これらを見て知り、そしてなしなが何かを決断する時、遂に四つ目の力が覚醒する!かも?
次回 「資格!?なしな、ヒーロー合格!食らわせろ英雄激重拳!」
お楽しみに〜
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