第9話 電車

揺れる電車の中で外を朧げに眺める


僕は一人の世界に入り込みたいのに、ここから目を背けたいのに彼はいつも僕のことを見つめる


この世界に逃げ場なんてないことを悟りながらも、それでも僕は外を眺め続ける


鏡の中のもう一つの世界、その世界から悪魔はじっと見ていて僕を鎖で縛りつける


ああ、もし僕をこの世界から逃がしてくれるならこの深紅の心臓を石の祭壇に喜んでささげよう


僕の体がまだあったかいうちに、若いうちに、育っているうちに取りに来て


それでも彼はじっとこちらを眺めるだけだし、手を伸ばしてこない。


僕は思う、この世界に逃げ場なんてないんだと



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