温厚な僕と行きつけスーパーの新人研修
うたた寝
温厚な僕と行きつけスーパーの新人研修
自分で言うのも何だが、僕は比較的温厚な方だと思っている。周りにもよく言われるからあながち間違ってもいないのだろう。優しそう、ともよく言われ、そのおかげで会社の後輩のほとんどが僕に対してはタメ口である。これに関しては単純に舐められているのではないか、と思わないでもない。まぁ、怖がられるよりはいいかもしれないけど。
イラっとすること自体はある。僕だって人間だ。電車に乗っている時に隣の女子高生に思いっ切り肩をぶつけられた時とか(僕が一体何をした)、腹痛の限界でトイレに並んでいる時におじさんに横入りされた時とか(ドアの前で漏らしてやろうかと思った)、何じゃコイツはと思うことはあれど、それを口に出したりはしない。
怒る、という行為は何だかんだエネルギーを使うのである。怒りを覚えた相手にさらに怒って自分のエネルギーを消耗するのは勿体ないと考えている。自分のエネルギーは自分の好きなことに使えばいい。
怒りを覚えない人のことを『温厚』と呼ぶのであれば、僕はそこに当てはまらない(それは果たして人間か? と思わないでもない)。その怒りを人にぶつけない、というだけの話だ。それは正直相手のためと言うよりは、自分が怒るということにエネルギーを使いたくないだけ。自分のために怒っていないのに、周りからは優しい、という好印象を持たれるのだから不思議なものである。
ただまぁ、『優しい』というのも物は言いようで、最近いいように利用されているだけのような気がしてきた。
例えば、上司からの無茶ぶり。残業や休日出勤など、僕が何も言わないのをいいことにガンガン振って来るが覚えておくといい。僕は貴方が無茶ぶりした日付と回数をしっかりメモしている。
例えば、部下からのダル絡み。いつお前とそんな仲良くなった、と思うくらい距離感が異様に近い。そういう距離感の人、と思えば割り切れなくもないが、他の先輩社員にやっていないところを見るに、多分純粋に僕が舐められている。
まぁ、この辺は正直まだいい。仕事でお金を貰っていると割り切れるし、下手に反発して職場環境を悪化させた方が面倒だ、という考えがあるからだ。これがプライベートであれば文句の一つだって出ようというものだ。
しかし、だ。そのプライベートにも最近影響を及ぼし始めている。というのも、
「あれ? 反応しない……。あれ? 何で? えぇっと……?」
どうも最近、近所のスーパーの店員さんの新人研修に使われていそう、ということである。
最初は、ああ、新人さんなんだなー、頑張れー、くらいにしか思っていなかった。ちなみに、何故新人さんと分かったか。別に名札に書いてあるとかではない。見れば分かるほどに明らかにレジの扱いに慣れていないからである。初めて使ったセルフレジだって僕はもうちょっとスムーズに使っていたような気がする(セルフレジとは勝手が違うのかもしれないけど)。
出社時はともかく、帰宅時はそんなに時間に追われているわけでもないから、何も言わずにほんわか待っていたのだが、どうもこれが悪かった様子。あ、この人怒らないお客さんなんだ、とお店側に認知されたらしく、僕がレジに並んでいると、すぐこの新人の子のレジへと通される。おおまたか、おおまたか、としばらく鈍感に思っていたのだが、毎度毎度通されて流石に、おや? っと思い始め、最近確信してきたところである。
同じレジへと通され過ぎてもはや顔なじみである。髪切ったことにさえ気付く。切った? と聞いたら『えへへ』と照れて僕のアイスを電子レンジへと突っ込むから全力で止めた。これはまぁ業務中に横やりを入れた僕が悪いとしてもだ、まぁー色々とこの店員さんはやらかしてくれる。アイスを温めるのなんて序の序の序である。
まず箸やスプーンは付けてと言わないとまず付いてこない。これはまぁそういう教育なのかもしれないが、言ってもカレーに箸だったり、パスタにスプーンだったり、お寿司にフォークだったりと、食文化の違いなのかな? と思うほどに僕が要求した物が付いてこないため、もうマイ箸、マイスプーン、マイフォークを持ち歩くことにした。結果エコになったと思うことにする(環境に優しい素材を使っていたような気はするが)。
レジ袋。まぁ付かない。『レジ袋要りますか?』、『要りまーす』、『かしこまりました。……○○円になりまーす』、『はーい』、『………………』、『………………』、『………………?』、可愛く小首を傾げられるところまでがもはやセットである。エコバッグを持ち歩けという無言の圧なのではないかと思うほどだったので、エコバッグも買うことにした。ここまで来ると店員さんはもう僕にエコな生活を送らせたいのではないかと思う。
おにぎりでお手玉。食べ物で遊んじゃいけません。それは仰る通り。だが一応理由はある。きっと僕がおにぎりを3つも買ったのがよく無かったのだろう。レジへと通す際に1つが店員さんの手から滑り落ち、それを落ちないように慌ててキャッチしたところ、今度はその反動で手に乗っていたおにぎりが落ちて……、気付いたら目の前でお手玉である。結果は落ちはしなかったのだが、どーにも僕の目には三角のおにぎりがすっかり丸くなったように見えたのだが、個人の主観かなぁ、と思うことにして取り替えてくれー、とは言わないことにした。
僕のお弁当を消すイリュージョン。何を言っているか分からないだろう? 安心してくれ。言っている僕もよく分からない。その日はほんと数える程度にたまにある会計がスムーズな日だった。感動して目頭が熱くなったほどだ。しかも、僕が手に持っているエコバッグに気付いて、『お入れしましょうか?』とまで聞いてくれる気配り。ああ、成長したな、と思っていたのも束の間。渡されたエコバッグが異様に軽い。ん? と思って袋を見ると、お弁当が無い。レシート確認。会計は済んでいる。レジ台確認。何も無い。……えっ? どこにやったし? チラっと店員さんの方を見るが、上手くできたと満足げな顔をなさっている。水差すのもあれだなと、僕は静かにその場を後にした。
後まぁ、この辺りは証拠不十分ではあるが、僕のクレジットカードの磁気を破壊する。最初はもちろん店員さんとの因果関係なんか考えずに、ああ、磁気がダメになってたのか、としか思わなかったが、出す度出す度磁気が読み取れなくなるので、どーもこの店員さんが磁気を破壊しているのではないかと疑っている。
なら決済アプリならどうだと試したところ、出した瞬間、僕のスマホがフリーズ。電波状況が悪い? 格安スマホだから? と初めは自分を納得させたのだが、その後何度試しても、レジに並んでいる間は何の問題もなく使えているのに、レジで出した瞬間、やっぱりフリーズする。このフリーズを繰り返したせいでスマホもストレスをため込んだのか、勝手に初期化を始めようとしたので決済アプリも断念。どうもデジタル系の物を破壊する特殊能力者らしい(冤罪の可能性あり)。
カードもアプリも使えない。さぁどうする? 簡単だ。ツケてもらう。嘘だ。通報される。店員さんの能力が及ばない、現金を使う。本来キャッシュレス派の僕はこのスーパーで使うためだけに昔使っていた財布を引っ張り出し、現金を持ち歩いている。しかし、これはこれで、お金の勘定をよく間違えられるのだが(お釣りが多かったり少なかったり)。
そんな感じで、数々の僕との思い出(婉曲表現)を作ってくれた店員さん。これ、僕はともかく、よく他のお客さんとトラブルにならないな(僕は怒った方が面倒という考え+もう途中からちょっと面白くなってきちゃってる)、と思っていたのだが、どうも新人店員さんの列に並んでいい選手権(要は店員さんがミスしても基本怒らないお客さん選手権)を勝ち抜いたお客さんでないと、新人店員さんの列には並べないようになっているっぽい。先輩らしき店員さんが交通整理をする人張りに列を捌いている。
そうして、今日も僕が列に並んでいると、『あちらの列をどうぞ~!』と新人さんの列へと促され、今日も今日とて何かしらのトラブルが発生するレジへと誘われるのである。
今日の僕は機嫌が悪い。自分で言うのも何だが大変機嫌が悪い。自分で機嫌が悪いのを自覚している分まだマシだろと開き直りたくなるほどに機嫌が悪い。
まず朝。起きてすぐ頭痛がするという憂鬱さ。前日お酒も飲んでいないし、早く寝たハズなのに原因不明の頭痛に襲われる。朝起きてすぐの頭痛ほどテンションが下がるものもないと思っている。
普段であれば容赦なく会社を休むレベルなのだが、今日に限って僕は忙しい。上司のいつも以上に酷い無茶ぶり+部下の盛大なやらかし案件がダブルで発生しておりパーフェクトトラブルとなっている。マジでホント飛んでやろうかと思ったくらい入社して以来の激務が続いており、今日も出社しなければいけないのである。
おまけにだ。上司にしろ部下にしろ、どっちか一方でもいいからもう少しでも申し訳なさそうな顔でもしてくれていれば、まだ留飲も下がるのだが、どっちもずっとヘラヘラヘラヘラしているものだから、珍しく結構分かりやすく僕はイライライライラしていたと思う。途中、流石に周囲も普段と違う僕の異変を感じ取ったのか、周りがザワザワザワザワしているのは感じ取っていたが、今そっちにフォローを入れるような余裕は無いのである。
怒りを溜められるバロメーターがあるのだとすると、それがもう大分いっぱいいっぱいにまで溜まってしまっている状態だ。というか多分若干怒りが溜めきれずに零れ始めている。キレるとまではいかないものの(少なくとも僕はそう思っている)、普段なら絶対に出さないような声のトーンを出したせいか、上司と部下のニヤニヤがそこに来て初めて止まった(周りがザワザワした段階で気付け、と思わんでもない)。
そして退勤。何か上司がモゴモゴ言いたそうにしていたが、僕と目が合うとさっと目を逸らした。初恋か。ちなみに部下の方は入社以来初と思われる、僕に対して『お、お疲れ様……、です……』と言っていた。お疲れ様です、も初めて言われたし、敬語も初めて使われた。
いつものコースで帰宅すると、道中あるのが件のスーパー。普段であれば、流れでスーパーに寄って、夕食用の食材を買うところなのだが、今日は些か僕の機嫌が悪い。いつもスルーしている店員さんのミスが、今日に限っては僕の導線に火を点けないとも限らない。
どうしようかな、と僕が悩んでいると、どうも自動ドアのセンサーに触れたらしい。スーパーのドアが開くと、
中から怒号が聞こえてきた。
つい気になって入ってしまったが、入らなかった方が良かったかもな、とやや後悔。人の怒号など、自分に向けられてないとしてもいい気分がするものでもない。
怒号の発生源はレジ。どうも新人店員さんが何かやらかして、そのことに対してお客さんが激怒しているらしい。
おや? あんな人選抜メンバーに居たか? と、いつものメンバーなのでもはや新人店員さんの列に並ぶお客さんさえ顔なじみになりつつあるわけだが、あんな人居なかったような? と思っていると、奥から先輩店員さんが飛び出てきて仲裁に入り始めた。ああ、なるほど。運悪く、先輩店員さんが居ない時にあのお客さんが新人店員さんの列に並んでしまった感じか。
先輩店員さんが必死に、自分の教育不足、ということにして、お客さんの怒りの矛先を自分の方へと向けようとしているが、中々怒りが収まらないご様子だ。
ちなみに、断片的にではあるが、客観的にお客さんの怒号の内容を聞いていた感じ、大声で怒鳴る必要があるか、という部分を除けば、まぁ言い分的には妥当であろうな、というところ。少なくとも、無茶苦茶な言いがかり、という感じではない。
それこそ、もし先に僕が並んでいたのであれば、怒鳴っていたのは僕かもな、そう思う程度には共感できる内容だった。
先輩店員さんが平謝りを続けて、どうにかお客さんの留飲は下がったらしい。二度と来るか、という捨て台詞を残して去っていった。うん、二度と来ないでくれ……、という先輩店員さんの本音らしき言葉は、まぁ聞かなかったことにしよう。ぐったりと床に座り込んでいるところを見るに、先輩店員さんも先輩店員さんで大変なのだろう。
そしてもう一人、
「………………」
分かりやすく落ち込んでいる、新人店員さん。
気にしない気にしない、と先輩店員さんが新人店員さんの両肩を揉むが、新人店員さんの表情は暗い。
何となく店内に嫌な雰囲気が漂っている。そそくさとスーパーを出て行くお客さんもチラホラ。僕はどうしたものかとしばし考えた後、商品を取ってレジへと並ぶことに。後輩を気遣ってか、今日は先輩店員さんが列を仕分けなかったので、先輩店員さんのレジへと辿り着いた(結果、先輩店員さんが今レジを全部捌いているので、新人店員さんがほとんどレジの前に立つ置物と化している……)。おや、これは計算外、と僕は少し悩んだ後、
「あの、すみません。あっちのレジでもいいですか?」
言われた先輩店員さんは目を丸くしていたが、選抜に選んだ僕の顔を覚えているらしい。先輩店員さんも先輩店員さんで少し悩んだようだったが、どうも僕への信頼がそこそこ厚いらしい。OKです~! と新人店員さんのレジへと通された。
通された後レジでお会計。さっき怒られたばっかだから、どこか怯えながらやっているようにも見える。結果慎重にもなったのか、珍しく目立ったミスもなくお会計が済んだ後、僕は買った商品の一つであるカフェオレのパックを新人店員さんの方へと差し出す。
「これあげる」
「えっ?」
「ゆっくり休みなね」
僕がかけられる言葉というのはこれくらいだった。
頑張ってね、とは僕は言わない。だってもう頑張っているだろうから。
辞めないでね、とも僕は言わない。だってそれは自分で決めることだから。
だから休みな、ということだけ伝えた。嫌なことがあった時はゆっくり休むに限る。単純かもしれないが、僕はそうやって忘れて乗り越えてきた。いや、別に乗り越えなくてもいい。休んでそれでも嫌だったら僕は逃げてもいいと思う。
ゆっくり休んで、ゆっくり考えて、それから決めればいい。だから、まず初めにゆっくり休めばいい。そう思って僕は休みな、とだけ伝えた。
そして、その次の日。新人店員さんはスーパーには居なかった。
僕の会社でのブチギレ事件(僕は今いっぽこう言われていることに納得がいかない。だって怒ってはないハズだ)以降、社内の雰囲気、もとい、上司と部下の僕への対応がガラリと変わった。どうもあの日をきっかけに他の社員さんが色々動いてくれたらしい。
上司は偉い人たちに色々指導を受けたらしい。具体的に何をされたのかは知らないけど、以降無茶ぶりの数が激減した。多分顧客との兼ね合いでゼロにはできなかったのだろうが、たまにある時はすんごい下から残業をお願いしたい、というようにお願いしてくるようになった。何か気味が悪い。
部下の方はお偉いさんから指導、とまではいかなかったようだが、どうも、同期たちからこっぴどく怒られたらしい。こちらも具体的にどう怒られたのか知らないのだが、以降、どの社員と接するよりも、下手すると上司と接するよりも丁寧に接して来るようになった。これもこれで気色が悪い。
何だ? 何だ? こんなんなら最初から怒ってた方が良かったじゃないか、と思わんでもなかったのだが、後でちょろっと聞いた感じ、どうも『僕を怒らせるなんて一体お前らどんなことしたんだ』と僕が退勤した後、その場に居た全社員に詰められ、お偉いさんを巻き込んでの大事になっていたらしい。
まず、何度しつこいと言われても一貫して僕は主張させてもらうが、僕は怒ってない(低いトーンが出たのは認める)。加えて、仮に怒っていたとして、僕が怒るということはそんな会社全体が動くほどに凄いことなのか? であればもう迂闊に怒れないのだが。
まぁ、結果として労働環境が改善されたのだから良かったと言えば良かったのだが、何かどうも釈然としない。が、まぁ、定時で帰れる日が増えたからよしとするか、と僕は定時になった瞬間に退勤する(『お疲れ様です!』と今日日体育会系でもしないようなハキハキとした挨拶が部下から飛んできた)。
自宅への帰り道、いつものスーパーへと寄る。新人店員さんは……、今日も居ない。
レジの前に居る顔なじみの先輩店員さんが、僕の視線から何かを感じ取ったらしく、眉毛を下げて声を潜める。
「あの子、ねぇ……」
何か言いづらそうにモゴモゴしている。まぁおおよその検討は僕にだってつく。結構大声で怒られていたし、なまじ優しいお客さんの対応ばかりしていたから、お客さんに怒られた経験自体も初めてだっただろう。きっと、
「…………そうですか」
僕が察するように一回頷いたところ、
ガッシャーンッ!! と店の奥から何かが盛大に倒れる音と『ぎぃやぁぁぁっ!!』という誰かの悲鳴が聞こえてきた。というか、凄い聞き覚えのある声である。僕は横に居るアンポンタンを睨む。
「………………おい」
「私は何も言ってませーん」
「………………」
「痛い痛い痛い痛い痛いっ!! ぼ、暴力はんたーいっ!!」
僕がアンポンタンのほっぺを引きちぎる勢いで引っ張っていると、店の奥から頭に段ボールを乗せた新人店員さんが出てきた。どうやらさっきの音で酷い目にあったらしく、体中埃に塗れている。
新人店員さんは僕と先輩店員さんを数回交互に見ると、
「…………何してるんです?」
「貴方がレジに居ない、と私が謂れの無いお叱りを受けていたのよ。はい、代わって。私はきっと大惨事になっているであろうお店の奥を見てくるから」
そう言って先輩店員さんは有言実行。お店の奥へと消えていく。ふと、新人店員さんに接客させようと時間を稼いでたのか? なんて思いもしたが、まぁきっと思い過ごしだろう。
頭に乗っていた段ボールを床に置いて、商品をレジへと通していく新人店員さんを見て、
「昨日休みだったね?」
と聞いてみると、新人店員さんは腰に手を当てえっへんと、
「休めと言われたので休んでみました!」
まさかそこまでしっかり休むと思わなかった僕は若干戸惑う。まぁ元気になったならいいか、と僕は商品を入れた袋を受け取ろうとすると、
「?」
新人店員さんが袋を離さない。え? 何? 怖い。と僕が戸惑っていると、
「ちょっと待ってほしいんです。ちょっと待ってほしいんです」
二回言った。いや、ちょっと待ってて後ろに並んでいる人が、って行っちゃった。新人店員さんは店の奥へと消えていく。待てと言われたので大人しくレジの前で待つことに。
しばらくすると、『いたーいっ!!』という悲鳴と『ご、ごめんなさいっ!!』という謝罪と『でも気にしないですっ!!』という気持ちいいくらいの開き直りと『私の扱い酷いっ!!』という怒りに近い悲鳴が聞こえてきた。
再度レジに現れた新人店員さんはまた頭に段ボールを乗っけっている。察するに、修復作業をしていた先輩店員さんに突っ込んだ、というところだろう。
新人店員さんは頭の段ボールを取り、体に付いた埃を払ってから、
「これ! この前のお礼です!」
そう言って新人店員さんが差し出してきたのは、このスーパーで売っている、小さいシュークリームがいっぱい入っている商品だった。
何でこの商品? なんて無粋なことは僕は聞かない。僕が何度か買っているのを覚えていてくれたのだろう。受け取ろうか迷いはしたが、お礼だ、と言っているので甘えて受け取ることにした。
「ありがとう」
僕がお礼を言うと、新人店員さんは嬉しそうに微笑んだ。それからお礼のシュークリームを受け取る。
受け取った時にパッと見えた、期限を過ぎていそうな賞味期限は見なかったことにした。
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