ステータス上限999世界のモブに転生したけど俺だけ上限9999、魔王退治は上司に任せて楽しく生きる ~序盤で滅ぼされる村を救ったら、何故かクソ上司が破滅してんだけど~
第19話 これはキガホノオではない、ホノオだ
第19話 これはキガホノオではない、ホノオだ
「エルフ族の長、メルヴィの名に於いて……この者たちに”開眼の儀”を授けることをここに宣言します」
おおおおっ
エルフたちのざわめきが、さざなみのように広がってゆく。
「それでは、ジュンヤ殿、アルフィノーラ殿、こちらへ」
メルヴィ当主の導きに従い、屋敷の裏手へ進む。
「わあ……!」
色とりどりに咲き誇る花に隠れるようにして、人ひとりがやっと通れるくらいのケモノ道を上っていく。
山とも言えない小さな丘だが、うっそうと木々が茂っており、すぐに村は見えなくなる。
「あれは……」
ほどなくして小さな祭壇が見えて来た。
岩の隙間から漏れだす清水。
両側に白銀に輝く水晶が浮いており、清水が濡らす岩肌には謎の文字が掘られている。
(モンクエまとめ動画で見たことがある。エルフの間に伝わるルーン文字というヤツだろう)
「メルヴィ当主、こちらを」
十二単(じゅうにひとえ)にも似た、真っ白な祭衣を着て俺たちを先導していたフェリシアが、岩肌に設置された小さな扉を開ける。
「では、儀式を始めます」
扉の中に安置されていた蒼色に輝く宝玉を取り出すと、メルヴィ当主はこちらを振り返る。
キラキラキラキラ……
(おおっ、凄い……動画で見たゲームのシーンそのままだ!)
「……どうが?」
序盤の強化イベントである、エルフの村での”開眼の儀”……ゲームではムービーが流れるのだが、その出来があまりにもいいという事で動画サイトで話題になっていた。
僅かに宙に浮く銀髪のエルフの長。
傍らに跪く第三王女フェリシア。
宝玉から生まれ出でたきらめきが、俺とアルを包み込む。
ゲーム以上に幻想的な雰囲気に、思わず見入ってしまう。
『この善き者たちの……秘めた力を導き給え。
全ての生きとし生ける者のために……』
ぱあああああっ
白銀の光が俺の視界を覆っていく。
それと同時に、新たな力が身体の奥から湧き出してくる。
「……ふぅ」
「いかがでしょうか?
”開眼の儀”はそなた達の眠れる力を呼び覚ます儀式。
劇的な効果は望めませんが、旅路の一助となりましょう」
「あ、ありがとうございます」
先ほどから体の奥がムズムズする。
何かの予感があった俺は、急いでステータスウィンドウを展開する。
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モベ ジュンヤ
LV6 ヒューマン
HP :2,370 最大値:9,999
MP :1,101 最大値:9,999
攻撃力 :985 最大値:9,999
防御力 :910 最大値:9,999
素早さ :678 最大値:9,999
魔力 :777 最大値:9,999
運の良さ:589 最大値:9,999
☆戦闘スキル熟練度:7
☆築城スキル熟練度:12
☆戦術リンク(アルフィノーラ):4
E:ロングソード(攻撃力+10)
E:ファイバージャケット(防御力+50)
魔法:ヒール、ホノオ、コオリ、テンイ
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「……は?」
ステータスを見た俺は、思わず硬直する。
上がるはずのないレベルが上がっているのも勿論だが、バグかと思うくらいステータスが上がっている。
「それに、魔法も?」
名前的に初級っぽいが、モンクエ世界の魔法が使えるようになっている。
「ちょっ、ちょちょちょ!
どうなってんだユーノ!?」
慌てて後ろを向くと、自分の担当女神を呼び出す。
『わわわっ!? エルフさんもいるのにっ!』
のんびりティータイムでもしていたのか、ほっぺにクッキーのかけらを付けたユーノのバストアップが小さく映る。
「何事だよこれは!?」
バグったとしか思えない俺のステータスを彼女に見せる。
レベルが少し上がっただけで熟練度はそのままだ。
モンクエ基準で考えても、こんなにステータスが上がるはずがない。
『い、いや~……よく分かんないんですけど。
エルフさんの強化イベントが割合での強化とか……いや~、違うかな?』
……駄目だ、まったく参考にならない。
「ねえジュンヤ、アルも!」
俺が困惑していると、興奮した面持ちのアルがててっと走り寄ってくる。
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アルフィノーラ
LV15 ジュウジン
HP :285
MP :210
攻撃力 :152
防御力 :255
素早さ :157
魔力 :230
運の良さ:222
好感度 :秘密!
☆戦術リンク(ジュンヤ):4
E:マジックロッド(攻撃力+10)
E:私立○○女学院制服(防御力+77)
E:スターローファー(かわいい)
魔法:ヒール、ジョウヒール、メガホノオ、メガコオリ、ヘビーフォグ
その他:@p@#$&’’()))&’%’
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「な!?」
転生者にしか出せないはずのステータスウィンドウ。
所々に意味不明な記述があるだけではなく、一部は文字化けして読めない。
っていうか、アルまで大幅に強くなっている?
「どういうことだユーノ!?」
「教えてユーノお姉ちゃん?」
もはや完全にユーノを知覚しているアルは置いといて、
頼れる女神様が出した結論は……。
『わかりません!!
害は無さそーなのでジュンヤさんたちで調べてくださいっ!』
まさかの丸投げだった。
「マジか……やばいバグじゃなければいいけど」
リバサガにもプログラムバグを応用したギリギリのチート技と言うものが存在する。
うまく使えば面白いが、ゲームが進行不可能になったり最悪運営からBANされる危険もある。
モンクエの世界に両方エアプのユーノがリバサガのルールを持ち込んだ。
なにかとんでもないことが起きなければいいけれど……今さらながらに心配になる俺。
「……どうでしょう?
初級魔法で申し訳ありませんが、いくつか魔法が使えるようになったはずです」
「ふふっ、あんなにはしゃいで……アルちゃんかわいい」
……ユーノが何かしたのか、俺たちの大騒ぎはメルヴィ当主やフェリシアには知覚できなかったようだ。
「え~っと」
とりあえず、チートレベルに強くなったことは確かだ。
おそらくモンクエでのレベル99のステータスを凌駕してしまっただろう。
「あ、そうだ……
ジュンヤさんって基礎魔法が使えないっておっしゃってましたよね。
この辺りはマナが満ちていて、自動でマジックポイントが回復するんです。
試しに魔法を使ってみては?」
期待を込めた目でフェリシアが促してくる。
戦術リンクを使える状態で、初級魔法を使うシーンは少なそうだけどモンクエの魔法に対して興味もあった。
「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えて」
俺は念のため、指先を遥か天空に向ける。
「”ホノオ”」
ブオオオオオオオオッ!!
「……は?」
ゲームのムービーではバレーボール大だった炎の塊。
だが、俺の指の向こう、はるか上空に出現した火球はどう見ても直径10メートル以上。
クアアアアアアアアアアアアッ
ズッドオオオオオオオオンッ!!
火球はフェニックスの姿を取り、炸裂と同時に周囲の空間全てを震わせる。
「……………なんと」
「ウソでしょ…………」
「た~ま~や~」
あんぐりと口を開け、硬直するメルヴィ当主とフェリシア。
楽しそうに歓声を上げるアル。
俺はとりあえず、天空を指さしたまま……。
「これは”ギガホノオ”ではない。
”ホノオ”だ」
「「!?!?」」
どこかの大魔王様みたいな台詞を吐くのだった。
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