ポーン教団編 第三十一話 超加速

 ミトラさんとクラークさんが教会の中に入ってしまった。


「ねぇ大丈夫かな……」


「大丈夫よ!だってミトラさんとミトラさんが一番強いっていう人だから安心して待ってようね」


「う、うん……」


 実際昨日の戦いの感じからしてあの二人の強さはわからないけど、決して負けることはないと思う。昨日はもう少しで届きそうな雰囲気があった。それの部下しかいない教会に負けるとは到底思えない。

 二人はしばらく歩き、歩みを止めた。すぐに、大きな爆発音が響き、扉から爆風がこちらまで届く。


「うっ……」


「大丈夫だからね……」


 あんな威力の魔法が打てるんだ……。


 すぐに同じ音が再び聞こえてくる。

 その魔法を一眼でも見ておきたい。魔法は使えないけど戦闘の勉強になるかもしれない。

 ちょっとだけ覗いてみてもいいよね……。


「おばちゃん、この子をお願いします。ちょっとみにいってきますね。アイラちゃん、すぐ帰ってくるからね」


「いっちゃうの?」


「ううん、ちょっとみてくるだけだからね」


「そっか!待ってるね」


「うん、じゃあいってくるね」


 コウシ……大丈夫かな……。酷いことされてなきゃいいけど……。


 中に入るとミトラさんがコウシを誘拐した男に吊るされて反撃できていない。

 流石にやばい。


「精霊斬!!!!」


 高く跳び鞭を切り落とす。

 着地するのに精一杯でキャッチすることができなかった。


「ミトラさん!!大丈夫ですか!」


「あぁ、大丈夫だ。私の心配なぞしなくて良い。君は君の心配をしたまえ。ほら、そこに。大地の叫びラウドアース


 ミトラさんが心配で近づいたら、どうやら後ろから復活した鞭に襲われていたみたいだ。危なかった……。


「気をつけます!!こっからのビジョンは!?」


「ない!!正直、ラオがいるとなれば勝てる可能性は低いだろう!クラークが自由になれば逆転できるのだが、あの様子じゃ無理だ!まずはラオを見つけださないと……天啓の雷撃エンジェルボルト!!」


 私が三本しか切り落とせなかった鞭を一気にミトラさんは全滅させる。すぐに復活してしまうが。ラオ……昨日のおばさんは生きていたのか……。厳しいなんて。

 

「そうですね!勝てる可能性……ミトラさんが教会ごと破壊するのはどうですか!?」


「コウシがいる!」


 そうか。コウシのせいで派手な強い魔法が打てないのか。


「じゃあ助けてきます!!」


「させるわけないだろ!!束縛する蛇!!!!」


 男のスキルが私の目の前まで迫ってくる。


「あぁ!行ってこい!!飛来する龍アイアンシャトル!!」


 複数の鉄の板が自由に飛び回り私のことをむちから守ってくれる。


「早くいけ!ミシア!!」


「はい!わかってます!!精霊の風!!」


 さっき全速力で走ってもらったがもう休み終わったみたい。

 さて、どこにいる。

 と、いっても多分あの一番奥の部屋だろう。一気に一人分の扉を通り抜けた瞬間、腹に強い衝撃が走る。精霊の風が解除されてしまう。


「またきたのか。何度私たちの邪魔をするつもりだ」


「ラオ……!!コウシは……」


 部屋を見渡すと奥に魔法陣があり、その真ん中に鎖で繋がれているコウシがいた。目は閉じているが苦しそうな顔をしている。

 あの魔法陣が何なのかはわからないが危険なものであるのは間違いない。

 救おうにも鎖を一旦切らないといけないから今すぐ精霊の風で逃げるのはダメだ。断ち切りに行くとラオが邪魔してくるだろう。一旦無力化させないと……。私一人でどうにかなるのだろうか。

 

「この男を助けにきたのか。安心しろ。いずれ返してやる。こいつの魔力と生命力を全て吸い取り空になったこの男をな」


 吸い取る……。よく見れば、ラオは昨日ので生き残ったのかと思えば傷が一切ない。少しはダメージを食らっていそうだが、回復してしまったということなのだろうか。

 

「だから、出て行くか死ぬかしろ」


「いやです!あなたを倒してコウシを救います」


「そうか、じゃあ殺すしかないな。ほれ」


 ラオはしゃべっている間常に右手を動かしていた。そして、「ほれ」という声と共に左手を動かし、私の左頬が殴られる。この人の攻撃は自動で当たっているのだろうか。きちんと狙わなければならないのなら、私の獲得したスキルが輝くが……一回やってみるか。


「超加速!」


 二秒の間、動きが格段に速くなるというものだ。精霊の風の全速力よりかは遅いが何回でも使えるし、割と自由に動ける。最中に攻撃もできる。

 ラオを蹂躙するように動くとラオは左手を動かしているが私には当たっていない。見えないから外してるのかもわからないけど。

 これならいけるかも。

  

「超加速!精霊の風!!」


 精霊の風も織り交ぜて高速移動中に瞬間移動もすると、目でも終えていないようだ。

 いけるいける。


「精霊の風!!超加速!大斬!!!!」

 

 走り回り、頭上を跳び、腕を切り落とすことに成功した。

 意外に大したことなかった。


「コウシ!今助けるからね!自然の剣戟!」


 スキルによって補正された剣捌きによってコウシを縛っていた数本の鎖を切る。

 コウシは力がもうないのかそのまま倒れそうになるがそれを優しく担ぐ。


「早く来いよ!!!!ミシア!!」


 さっきの部屋からミトラさんの声が聞こえる。こんなふうに声を荒げて口調を崩すことがあるのだろうか。


「精霊の風」


 一気に戦闘中の部屋すら抜けて外に出る。

 これでいいのだろう。


「ミトラさん!!いっけーーーーーーーー!!!!!!」


「あぁわかっているよ。言われずとも起動させていたさ」


 口調は戻っているが何か光芒とした雰囲気で返事をもらう。


「死ね!!!!ロッシュ限界への到達メテオ!!」


 教会の屋根を突き破り建物を破壊していく。大量のエネルギーに包まれ教会と尻尾が焼かれる。

 中の様子はわからないが、唯一わかるのはこの事件が終わったこと。


「ねぇ……終わったの?」


「うん。終わったよ。全部」


「そっか……ふふっ」



「あらぁ、これはたまげたねぇ……」


「なんかのお祭りー?」

「そうかもしれないわね」


「どかーーん!あはははっ!!」

「楽しいね!!」「うん!!」


 周りの人はみんな教会の方を見て様々な感情や感想を抱いている。

 

 少しすると中からミトラさんとクラークさんが出てくる。

 

「ミトラさん!クラークさん!無事だったんですね!」


「あぁ、私はな。ただ、こっちはそうでもないため、一旦酒場に戻ってこれを休ませるとするよ。そちらの様子はどうだ?」

 

 クラークさんは怪我をしてしまったのか……。


「それが……」

 

 私は中で見たものとやったことを言うとミトラは


「そうか、ならコウシも一旦休ませるといい。一日後とか二日後にまた会おう。祝勝会もしたいしな」


「そうですね。コウシが良さそうだったら一旦ミトラさんの所に行きますね」


「あぁ、では待っていよう。楽しみにしているよ」


「はい!私もです。じゃあ一旦解散しましょうか」


「そうだな」


 そういって私たちは二手に分かれて解散した。

 この事件の後始末はミトラさんがしてくれるらしい。


 三人で宿に戻り、コウシをベッドに寝かせる。私も疲れたし、アイラちゃんもドキドキして疲れただろう。

 今日はもう寝ちゃおう……。

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