レーフェ編 第二十三話 異世界人Ⅱ
「とりあえず、夜ご飯どうする?」
「うーん、ここってご飯出るんかな」
「確かに。聞いてみよっか」
ご飯が出るのか聞くために俺たちは階段を降りてさっきの女の子に聞く。
「ここってご飯でますか?」
「お食事は言ってくださると部屋まで運びますので、お部屋にあるメニューから選んでいただいて魔電から注文してください。外の看板など掲載されている料金には一泊二食分含まれていますが減らすことも増やすこともできますのでご心配なく。そちらの調整は最後に部屋を出る際にまとめて払ってもらいますので」
「あ、はい。わかりました……」
少し気恥ずかしさに襲われながら二人はやや早足で部屋に戻る。
「魔電なんてどこにあった!?メニューも見当たんなかったよね??」
「魔電がわからないからなんと言おうが……」
「魔法電話!!」
「なるほど」
少し部屋を探すと机の俺が荷物を置いた引き出しの中にそれっぽいものとメニュー表があった。
「これじゃない?」
「ほんとだ……割とわかりやすいところにあった……」
そういえば、メニュー見て電話するって完全にラブホのシステムだよな。普通の旅館にはなかったような気がする。あるところもあるのかもだけど。
ここってラブホなのか?気のせいっていうか文化の違いか。
メニューには知らない料理がズラーっと並んでいてどれを頼もうか迷う。
料理にはデッサンの挿絵もついているが盛り付けすら見たことない料理もあった。盛り付けが見たことある方が安全度は高そうだけど……。
悩んだ挙句、一回説明してもらったメルンという料理を食べることにした。メルンのパンも食べたことあるし安全だろう。
ミシアに頼んで電話をしてもらい、しばらく経った頃に部屋にノックの音が響き、さっきのフロントの方かと思いきや年老いたおばあさんがトレイに乗せてそれを運んできた。
「あざす……」
手短にそれを受け取りすぐに扉を閉める。
歩きながらトレイの上に乗った白色のそれを見る。これが多分メルンだよな。あの村で見たそれもこんな感じだったがメルンはウィクに限らず見た目が悪い。これに食欲を失うのも俺が異世界人だからだろうか。
ミシアの頼んだものはあんかけ焼きそばのようだった。っていうかまんまそうだ。
これにすればよかった。メルンなんて食べたくない。
「なぁ、このメルンって美味しそうに見えんの?」
「あー、私は全くそう思わないよ。全然美味しくなさそうだし食べたことないかも」
「え、そうなの?誰がこれを好んで食べてんの?」
「どっかの郷土料理だからね。どこの街かは忘れたけど」
「通りで……。ミシアのはなんてやつ?」
「私のはね、『あんかけ』ってやつ。そういえばこれって異世界人が広めたやつだった気がするけど知ってる?」
そんなのメニューにあったっけ。見逃したか。
「あ、まじか。俺がいた国だ。あっちの世界で食ったぞ」
「え!!やっぱり?そうなんだ」
「他に異世界人の料理ってあんの?」
「『シチュー』とか?あんまり料理詳しくないからパッと思いつかないけど」
「おーそれそれ。懐かしいなぁ」
「懐かしい?ここにきてからそんな経ってないでしょ?」
「まぁそうだけど。これで争いが起きたりすんだよな」
「シチューで?」
「そうそう。の上にかけるかかけないかだったっけか」
「米?んっと、コウシの国の料理?」
「米知らない?」
「うん。聞いたことない」
「米ないんだ。あーまじか。米ないんだ」
「そんな好きなの?」
「好きっていうか、俺の国のパンみたいな感じ。基本米と何かで一つの食事みたいな」
「そのポジションなの!?お肉みたいな?」
「農作物だよ。穀物ってやつ。確か」
まぁ、自然環境が違ったら作るの難しそうだしな。こっちの料理を広めた日本人も米は再現できなかったか。塩もないだろうし、苦労したんだろうな。
「へー。」
「あ、明日はスキル見に行ってもいいか?」
「お、いいね。見にいこ。」
そう話してうちにメルンを食べきる。味は悪くないんだよなぁ。
「よし。じゃあ俺疲れたし寝るわ。ミシアは気にしなくていいからな。」
「うん……おやすみ。」
ベッドの上のものを適当に片付けて部屋が明るいまま寝る。
今日は疲れたな。あんな戦闘をしないと俺は生きていけないのか。まぁ、しょうがないか。ただの高校生だもんな。何か資格があるわけでも、特別な才能があるわけでもない、温い世界で育ったただ言葉が喋れるだけの日本人。
料理を広めた日本人みたいな才能があったらまた別の職業があったろうに。
くっそ。なんかやっとけばよかったとかで解決する世界じゃない。何をやっていてもこの世界で最適解を出し続けても日本人の俺じゃ一般人になることが関の山か。
剣とかやっぱ持った方がいいのかな……。魔法も………………
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