レーフェ編 第22話 異世界の文化
ミシアによれば魔物の死骸も早いうちに持っていくことで金になるらしいということで金になりそうな狼の毛皮をなんとなくで捌いたものと人狼の全身を返り血だらけになりながら担いで酒場まで持って行くことにした。
国に入る前はどんな目で見られるかわからなかったが住民にとっては冒険者が死体を担いで帰ってくることは日常茶飯事なのか特に見られもせずに酒場までつく。
「じゃあミシアはこれ頼むわ。俺報告してくるから」
「はーい。よいしょっと」
そう言って人狼の死体をミシアの肩に乗せてポケットに入れた依頼受託処理書を取り出す。
「依頼の報告に来ました」
「はい。処理書の提出をお願いします。――ありがとうございます。では、こちらが報酬です」
そう言ってトレイの上に出されたお金を受け取ってポケットに突っ込む。
「ではお疲れ様でした」
「あしたー」
ポケットに手を入れてどれくらい貰ったのかなんとなく確認しつつ別のカウンターで精査をしてもらっているミシアの元に向かう。なんとなくお札が多いような気がする。っていうか小銭が一枚しかない。
「ミシアーこっち終わったぞ。どんなもん?」
「もうすぐ私の方も終わるよ。なんかね、爪とかツノがあればもうちょっともらえたんだって」
「んなんだ。何が高いのか全くわからんな」
「ねー。私の村は転移できる人いたしとにかく全部持って帰ってたから……」
転移。これも神器の能力か。
それから少しして死骸の精査の方も終わりとりあえず酒場の席に座った。
「どれくらいもらった?」
「こんなもん」
そう言ってポケットの中に入れていた報酬を机の上に出す。
「おー。私はこんな感じ」
ミシアのポケットから出たのは札だけ。
「これって何円なの?」
「んーとね、二万三千円だね。これが一万三千円硬貨で二千五百円札四枚だから」
「なるほどなぁ。やっぱり区切り悪いね。一万三千円硬貨ってなんだよ」
「え?よくない?」
「え?俺がいた国は一万円札、五千円札、千円札。で、こっからが硬貨で五百、百、五十、十、五、一だったけど」
「多いね。しかも硬貨が安いんだ……。紙が貴重なの?」
「いや、そういうわけじゃないけど……」
確かに、なんで紙幣が高いんだろうな。言われてみればなんでか全然わからないな。
「あと、めちゃくちゃ区切り悪いよ?どうなってんの?」
「え、まじ?こっちでは普通に区切りなんて気にしないぐらいなんだけどな……」
翻訳する過程で物価にも合わせられてるのだろうか。そうじゃないとおかしいっていうか、多分そうだよな。
「ふーん、ま、とにかくこれくらい稼いでれば暮らせるからいいかんじかも。じゃあ宿屋探そっか」
「おう。どっかある?特に?」
「うん。特にないかな」
それから国をしばらく歩いて何個か宿屋を見た。料金設定は大体同じぐらいだったから真ん中ぐらいの値段で外観が質素なところに泊まることにした。
「コウシ、こういうのってね、外観がおしゃれだとその整備費も含めての値段だから同じ値段だと外観を気にしてない方がご飯だったり部屋のクオリティが高かったりするのよ。知ってた?」
「いや、知らないけど……ほんとに?」
「ほんとほんと!旅好きのリョーさんが言ってたんだから」
「はあ」
確かに言われてみればそうかもしれない豆知識を聞きながら宿に入る。
中には意外と若くて可愛い女の子が受付におり、入ってきた俺たちを笑顔で迎える。
「二名さまですか?」
「はい」
「お部屋はどうしますか?」
「んーどうする?」
これって一部屋もらうか二部屋もらうかってことだよな。
「どっちでもいいけど」
「じゃあ、一部屋で」
「はい、わかりました。では二〇六号室まで案内しますね」
そう言われて上品な歩き方をする女についていく。
階段を登って少し歩き、突き当たりの部屋に入る。
「こちらが鍵ですので」
そう言って鍵を一つミシアに渡し、階段を降りていく。
その鍵を使ってミシアは扉を開けると中から木のいい香りがぶわっと広がる。
「うわー!いい香り!!めちゃくちゃいいじゃん!!ベッドもふかふかー…………」
腕を大の字に広げて匂いを感じたのち、すぐに真っ白のベッドにダイブして嬉しそうにしてたミシアが急に現実に戻ったかのような顔をした。
「ミシア?どうした?」
「ベッド、一つしかないね……」
そう恥ずかしそうにするミシア。成人は超えてる女なんだからそれくらいで狼狽えないでほしい。
「別にいいだろ。一つのベッドで寝ても」
「い、いや……その……」
「何?処女でもないんだから何をそんな困ってるんだか」
「処女でもないんだからって……何勝手に決めつけちゃってんのよ」
「何その反応。え、処女なの?」
「そ、そうだけど、何か悪いんですか!!」
「開き直られても困るし、なんも悪くねぇよ。誰だってその時期はあるんだし」
「そ、そうよね!そんなこと言うコウシだってまだ十七じゃない!童貞なんでしょ??」
「いや。全然。自慢できるほどしてるわけでもないけど」
友達は何十人とかザラでいる。
「え、え、嘘。え、ほんとに?な、何人ぐらい?」
「正確な数わかんないけど、十ちょいじゃない?」
「じ、十ちょい……どうやってそんな……浮気とかしてるってこと?」
「いやいや、仲良い女友達とかその辺で知り合った女とかクラブとか……クラブはあんま好きじゃなかったからそんなないけど」
友達に無理やり連れられて行ったっきりだな。酒の匂いがきついしあの最前のテンションがきつい。
「くらぶ……はわかんないけど、そんな誰とでもやっちゃダメだよ!もう、だって、コウシの体はコウシのものなんだし大切に扱わないと……」
「自分の体だからこんな使い方してんの」
「それはそうだけど……」
そこで俺がずっと扉の前で立って話をしていることが気になって話を区切る。
荷物を適当に使わなそうな机の上に置いて宿の中を確認する。
そこには個室のシャワー室とリビング、トイレがあり、トイレはぼっとん便所のようだったが浅い底魔法陣がある。
「この魔法陣何?水出んの?」
「水なんか出してどうすんのよ。あーコウシは知らないもんね。これは転送式トイレなんだけど、この魔法陣が排泄物に反応して、転送するの。で、そこで加工されて、肥料だったりいろんなものになるの。これが今世界で一番主流じゃない?」
「えーすごいな」
企業さんとかが開発したんかな。
「せっかく説明したのに反応が薄いわね。私だってトイレの解説なんてしたくなかったのよ?」
「ごめんって。俺だってそんなトイレに興味津々になりたくねぇよ」
二人でトイレを出て今一度リビングの中を見ると大きなベッドとクローゼットと机があり、そのほかにまた別で壁に沿った机がある、正方形の部屋だ。
「ほら、いいかんじの部屋じゃない。リョーさんの言う通りね……」
ミシアはそう言ってるがこのくらいのクオリティ、どこもこんなもんだろ。
ビジホだってこれくらいやるわ。
「とりあえず、夜ご飯どうする?」
「うーん、ここってご飯出るんかな」
「確かに。聞いてみよっか」
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