第21話 王都へ
翌朝目覚め6日目のログインボーナスを貰う2人。
全はスキル魔法構築、武仁はスキル魔物召喚を授かると身支度を整えた。
宿屋で簡単な朝食を取っていると部屋をノックする音がし「はーい」と全が返事をすると入ってきたのはケインだ。
「国王への謁見許可がおりたよ。早速出発したいとクリスティナ様からの伝言だ。既にギルドで待機しているから準備が出来次第来てくれ」
ケインに「わかった」と返事をすると2人は急いで朝食を済ませギルドへ向かう。
ギルドに到着するとクリスティナとケイン、そして見知らぬ2人が待機していた。
「おはよう、朝早くすまないな。不測の事態だ、厄災がいつになるかもわからん、今からでも出発したいのだが構わないか?」
クリスティナが言うと武仁は「構わねぇが、コイツら誰だ?」と言い放つ。
全は、デジャヴだ......と1人脳内で昨晩武仁がカッセルに言ったシーンを思い出す。
「彼はコウヨウとシーテン。王都を拠点とするSランクパーティ、
この2人のどちらかが昨日マムが言っていたもう1人の転移(ワープ)使いか、と全は思いながら「よろしくお願いします」と挨拶した。
「噂は聞いているよ。ものの5日でAランクに到達した化け物みたいなルーキーがいるってね! おっと、言葉が悪かったかな......しかし凄いね。是非うちに欲しいくらいだ」
そう言うのはコウヨウだ。
彼は黒髪にロングヘア、どこか中華を連想する白い服を纏っている、どうやら武術家らしい。
「初対面なのに失礼だろ......すみません。コウヨウは軽口ですが悪いヤツじゃないんです。気分を悪くしないで下さいね。私はシーテン、魔術師です。王都までよろしくお願いします」
どうやらこの人が転移(ワープ)使いの様だ。
シーテンは紫色の短髪が印象的でローブを纏っており一見すればまだあどけない少年の様に見える。
「一刻を争うと考えると国王への謁見は早いに越した事はないが、その前に水上の街フォルダンへ転移(ワープ)を頼めるか? 転移(ワープ)は術者が訪れたことのある場所へなら瞬時に移動可能となる。全のためにも経由しておいた方が良いだろう」
そうクリスティナが言うととシーテンは「わかりました」と答えた。
「私が不在の間はギルドマスターのワンドを筆頭に、Sランク冒険者のカッセルとラエルがその補佐を、そして他の冒険者と騎士団にカルカーンを任せてある。それではワンド、カッセル、ラエル、少しの間だが留守を頼む」
ワンドが「任せろ!」と言うと「では行ってくる!」とクリスティナが声を上げ、シーテンは転移(ワープ)を発動させると6人は瞬時に水上の街フォルダンに到着した。
水上の街フォルダンは名前の通り、大きな湖に浮かぶ都市なのか、街をぐるりと囲むような光景は大きな水路のようにも見えなくはない。
「シーテン、わがままを言ってすまないな。ではこのまま王都へ頼む」
そうクリスティナが言うとシーテンの返事を遮る様に武仁が「ちょっと待て」と言った。
「この感じ......厄災の芽だ。この辺にあるぞ」
それを聞いたクリスティナは動揺する事なく「では直ちに討伐、種を回収し王都へ向かう」と言い、全員は頷くと厄災の芽をめがけ駆け出した武仁に続く。
水上の街フォルダンを取り囲む湖を西回りに沿って向かう武仁だが急にピタリと足を止める、しかしそこには厄災の芽の姿はない。
「おいおい、何にもないじゃないか。期待のルーキーも所詮はルーキーって事かな? まぁ......気を取り直して王都へ向かおうか」
コウヨウが言うと武仁は湖を指差して「早とちりすんな、この底だ」と言い、話を聞くや全は湖目がけ「拘束(バインドブランチ)」と唱えた。
「拘束魔法で拘束したところで水の底にある厄災の芽をどうやって討伐し種を回収するのです!?」
そう言うシーテンをよそに全は「浮遊(フロート)」と呟くと湖の底から厄災の芽が姿を現した。
厄災の芽は根ごと引き抜かれたかのようで、拘束(バインドブランチ)によって羽交締めになり根はもがいている様にも見える。
全が浮遊(フロート)を解除すると湖脇の地面に落下、すかさず「火球(ファイアボール)」と唱えると厄災の芽は炎に包まれその身を焼き尽くすと厄災の種がコロンと落ち全はそれを拾い上げた。
「浄化(クリーン)! ......厄災の芽は魔素を発しその地の人々へ影響すると聞きます。念のため湖全体を浄化しておきました」
その手際、そして聞き慣れない魔法、魔法に精通するシーテンは全に深い興味を示している様だ。
クリスティナは武仁に「もう大丈夫か?」と他に気配がない事を確認し武仁が頷くと「では王都へ向かおう」とシーテンに転移(ワープ)を頼んだ。
シーテンが転移(ワープ)を唱えると瞬時に王都へ到着する。
かくしてついにこの国の国王と謁見するべく王都ボルディアの地を踏んだ全と武仁は、王都と言うだけあるその都の規模に静かに驚きながらもクリスティナの後に続き王都の正門へ足を踏み入れた。
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