第13話 厄災の種
ーー城下町カルカーン
場面は冒険者ギルドに駆け込んだ全と武仁へ戻る。
受付のマムに、厄災の芽の出現について伝えると、マムは耳を疑いながらも差し出された一つ目を見るや、大慌てで2人をギルドマスターのワンドの元へ連れて行く。
「そんなに慌てて何事だ」とワンドが言うと「厄災の芽が出現しました」と血相をかえてマムが報告した。
ワンドも驚きを隠せない様子だが、2人事の経緯を聞くと冷静に説明しはじめた。
「なるほど、ムツノハシ村でそんな事が......。その目は厄災の種と言って、厄災の芽を倒すと姿を表す、言わば厄災の芽の本体だ。厄災の芽自体はそれほど脅威ではないが、生息する場所が今回のように人里であれば厄介で、厄災の芽から放たれる濃い魔素により周囲の人間の自我を奪うのだ。厄災の芽が出現したとなると、厄災の発生......
そう言うとワンドは真剣な顔で続けた。
「しかし、ケインが同行し厄災の種を持ち帰ったのは良かった......。これは粉砕してしまうと厄災を早める深刻化させるだけではなく、粉砕時にそいつの魔素が全て放たれ、周辺の魔物を活性化させてしまうからな! いやぁ、本当に良かった!」
武仁はホークアイの一件で、単に討伐証明なのかと拾っていたが「あぁケインが教えてくれたからな」と咄嗟に答えながら内心、危ねー、と1人胸を撫で下ろすのだった。
その後、普段出現しないホークアイが出現したのも厄災の芽の影響だろう、と言う結論が出たところで話も一区切りつき、2人は受付に降りて受注していたクエストの報告をし薬草を納品した。
「お2人ともお疲れ様でした。全さんの3種の薬草採取のクエストも納品された素材は全て間違いなし、武仁さんに関しては厄災の芽の件は本当にお手柄ですよ! 領主様から別で恩賞が出るくらいの事です。 それではこちらが今回のクエストの成功報酬となります、ご確認下さい」
全は金貨1枚、武仁は金貨10枚を受け取ると一旦宿屋に戻る。
宿屋に着き部屋に入ると全は武仁に切り出した。
「凄い濃い2日間だなあ、怒涛の展開と言うか......異世界をゆっくり楽しむって言うのは、なかなか骨が折れそうだ」
「俺なんか危うく厄災とやらを早めるところだったぜ......おいズチ! そこは言っとけよな!」
武仁が言うと呼ばれたズチは声のみで答えた。
『申し訳ない! まさか厄災の芽がこんなにも早く現れるとは......此度の召喚対象が変わった事により、世界の流れが変わろうとしているのやもしれぬ......』
「リン、厄災の芽の発生をあらかじめ探知できないのかい?」
武仁に続きリンに問いかける全。
『神々や神の使いの私達が、この世界に物理的干渉をする事はできません〜。そして創生の記憶をお教えする事もできません〜。しかし厄災の芽の場所については制限外、発現次第私たちもお教えします〜。今回はズチの言う通り早すぎて対応不可能だったのかと〜。しかし〜道を示すのが私たち神の使いの役目、厄災の種を浄化する為には......ここから近い火神の大樹を目指すと良いでしょう〜♪』
そう言うとリンは、火神の大樹がカルカーンの北にあるマグマ山にあると教えてくれた。
「厄災までどのくらいの猶予があるのか」と全が尋ねる。
『本来であれば、聖人の器が召喚されてから1年をかけて、7つのうち6つの厄災の種を浄化していき、最後の浄化をきっかけに
2人は息つく暇もないな、と言う顔をしつつ「次の目的地も決まったところで、話しておきたい事があるんだ」と全が言った。
「迷いの森林でケインを鑑定しただろう? その時のステータスなんだが、ケインはレベル32だったがステータス値はどれも300前後だった。騎士団副団長のクラスで、だ。僕はホークアイを、武仁は厄災の芽を討伐した事でレベルが上がっていると思う、改めてステータスを確認して、これから行く先々で騒ぎにならないよう、パワーバランスを考えながら動いた方が良いと思うんだ」
そう全が言うと武仁は「300......」と呟くと、信じられない、と言うような顔をしながら自身のレベルを再確認した。
全 レベル59
武仁 レベル63
2人はそれぞれのレベルに驚愕した。
その様子を見ているのか、ズチは笑いながら端を発した。
『はははっ! それは当然の事ですぞ! 六神の加護があるお2人は経験値獲得量が6倍ですからな! ちなみに初期ステータスに至っては適正職業に関わる値は1000倍、それ以外でも100倍もこの世界の人々より優れておりますぞ! 本来聖人の器が授かる加護はどれか一神の加護だが、お2人は迷いし落ち人としてやってきた勇者と賢者なのですからな! 神々も大盤振る舞いですぞ!』
「そんな設定でいいのかよ......」
武仁は呆れたようにツッコんだ。
しばらくすると、領主様が2人に会いたいそうだ、とケインが宿屋に訪れた。
2人はこれを了承すると、ケインに連れられて領主の待つ城へ向かった。
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