第2章

第10話 聖人の器


 ーー


 時は少し遡り、全と武仁が迷いの森林に落ちた時間、あの袋小路の地面に突如として現れた、底の知れない真っ暗な穴へ飲み込まれたのは、全と武仁だけではない。


 そう、全に絡んだ中高生3人組だ。


 3人は全と武仁とは違う場所へ落ちて来た。


 「なんだここ......おい起きろよ、トラタツ


 先に目を覚ましたのは真中 聖人まなか せいと、全に手を上げようとした彼だ。


 「う......ん......。せいちゃん、どったの?」


 次に目を覚ましたのは右京 虎次郎うきょう とらじろう、彼は寝ぼけているようだ。


 「......」


 最後に目を覚ましたのは左近寺 龍己さこんじ たつみ、無言で辺りを見渡している。


 どうやらどこかの部屋の中だ。


 とても豪華な室内、3人はそれぞれにベッドで目覚め、見覚えの無いこの空間に戸惑いを隠せない。


 聖人が2人に話しかけようとしたが、まるで3人が目覚めたタイミングを伺っていたかの様に、部屋の扉をノックする音が聞こえガチャっ、と扉が開くと、見知らぬ老人が入ってきた。


 「お目覚めですか、聖人の器の皆様。私は聖人の器の皆様を導く者、オダーと申します。皆様、まだ混乱されている事かと存じますので、順を追ってご説明致します。ご準備が整いましたら部屋の外におります、係の者にお声かけ下さい」


 そう言うとオダーと名乗る老人は部屋を後にした。


 「おい聞いたかよ、聖人の器? なんだそれ! てかどこだここ! 誘拐......!? 意味わかんねー!」


 「聖ちゃん、怖いよぉ......!」


 「......」


 3人はそれぞれに不安を抱える様子だが「爺さんだったし何かあっても3人で行けば大丈夫だろ」と聖人が言うと、ベッドから出て部屋の扉をを開けた。


 部屋の外にはシスターのような格好をした女性が立ち、その顔には目を覆い隠す様に布が垂れており、その布には大きな一つ目が描かれていた。


 気味が悪いな、と思いつつも3人は案内されるがままに廊下を進んだ。


 「こちらです」と通された部屋は広く、真ん中の床には魔法陣が刻まれており、部屋の奥には案内してくれたシスターと同じ、一つ目が描かれた旗が大きく掲げてある。


 部屋の扉から、真ん中の魔法陣までの導線を避ける様に、神父やシスターの格好をした人々がズラリと整列し、3人の登場を拍手で迎え入れた。

 さきほどオダーと名乗った老人は、魔法陣より奥に立っており、3人は進むしかなく魔法陣の上まで進む。


 「ここはどこなんだ? それにしても悪趣味だろ、気味が悪い。俺たちをどうしようってんだ?!」


 聖人が言うとオダーは答えた。


 「改めまして、ここは聖ライガ教会、私は教祖のオダーと申します。皆様は異界よりこの世界へ召喚された聖人の器。言わばこの世界における救世主でございます。丁重におもてなし致しますのでご安心下さい。わからない事や必要な物など、全て対応致します。ここに集まる者は皆様をお慕いする者ばかり。本日は聖人の器である皆様のそのお力を鑑定するべく、こちらのお部屋にお越し頂きました」


 オダーが言い終わると聖人は「異世界転移じゃん」と湧き上がった。


 「それでは鑑定させて頂きます。鑑定!」



真中 聖人まなか せいと


種族/人間 年齢/16

職業ジョブ/聖人の器 レベル/1


称号/雷神の加護(経験値2倍.レベリング加速2倍)


HP/1000

MP/1000

腕力/1000

腕力抵抗/1000

魔力/1000

魔力抵抗/1000

知性/100

感知/100

俊敏/100

運/100


スキル

・雷属性魔法

 雷属性の魔法を初級〜特級まで使える



右京 虎次郎うきょう とらじろう


種族/人間 年齢/14

職業ジョブ/聖人の器 レベル/1


称号/雷神の加護(経験値2倍.レベリング加速2倍)


HP/1000

MP/1000

腕力/1000

腕力抵抗/1000

魔力/1000

魔力抵抗/1000

知性/100

感知/100

俊敏/100

運/100


スキル

・雷属性魔法

 雷属性の魔法を初級〜特級まで使える



左近寺 龍己さこんじ たつみ


種族/人間 年齢/18

職業ジョブ/聖人の器 レベル/1


称号/雷神の加護(経験値2倍.レベリング加速2倍)


HP/1000

MP/1000

腕力/1000

腕力抵抗/1000

魔力/1000

魔力抵抗/1000

知性/100

感知/100

俊敏/100

運/100


スキル

・雷属性魔法

 雷属性の魔法を初級〜特級まで使える



 オダーは鑑定結果に雷神の加護を見るや否や、地に頭を擦り付け言った。


 「雷神様がついに降臨致しました! 皆さん、頭を低くお祈りなさい! 聖人の器様は御三方とも本物です、我々の魂をお導き下さるのは聖人様、虎次郎様、龍己様です! この名を心に刻みましょう!」


 そう言うと整列し見守っていたシスターや神父は、オダーと同じように地に頭を擦り付けるように3人を崇めた。


 この異様な光景に3人はギョっとしながらも動けず、ただその場に立ち尽くしていた。

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