ついてない

第1話

最近マジでついてない。

仕事はクビになるし。

ギャンブルは勝てないし。

女には相手にされないし。

本当に嫌になるわ。

でもさ、ちょっと嬉しいこともあったわけ。

女から声をかけられたわけよ。

「ちょっといいですか？」

なんて言われてさ。

逆ナン？と思ってテンション上がったよね。

ちょっとタイプだったのよ。

世の中捨てたもんじゃないと思ったね。

カフェでも行こうかと思ったんだけどさ女の子があまり人がいないところで話したいって言うんだよ。

ちょっと期待しちゃったよね。

まぁ、そんなに上手くいくはずがなくて人がいない小さな公園みたいなところに移動したんだけどさ。

そしたら、その子が言うわけよ。

「憑いてますよ」

って。

最初なんの事かわからなかったけど霊が憑いてるって言うわけよ。

これは壺とか買わされんのか？って警戒したよね。

俺はハッキリ言って霊なんか全然信じてなかったからさ。

適当に話を合わせておこうと思ったわけ。

試しにどんな霊が憑いてるのか聞いてみたらさ

白いワンピースを着た黒髪ロングの女性で頭から血を流してる

って言うわけよ。

具体的に言ってくるからさ本当に見えてるんじゃないかと思って、ちょっとビビったよね。

その子が言うには霊と話をするのに憑いてる人の許可がいるらしくてさ、ちょっとビビったけどOKを出したのよ。

そしたら俺の少し後ろに目線を移動させて話し始めたわけ。

大丈夫とか私は敵じゃないのとか。

気になってどんな話をしてるのか聞いてみたらさ

「『早くここから立ち去れ』って言ってます」

とか言うわけよ。

本当に会話できてんのかよって疑わしかったけどさ。

なんかウンウン頷いてると思ったら女の子の顔がだんだん青ざめていくわけ。

どうしたのかなと思って何の話をしてるのか聞いてみたらさ

「『私を殺したのはこの男だから早くここから立ち去れ』って言ってる」

とか言うわけよ。

本当に霊能者っているのかよって驚いたよね。

最近マジでついてない。

仕事をクビになってさ。

競馬で何とかしてやろうとしたら大負けしてさ。

気晴らしに女でもナンパしようと思ったら冷たくあしらわれてさ。

カッとなって落ちてた石を拾って殴りつけたら死んじゃってさ。

殺す気なんかなかったのによ。

逆ナンかと思ったら本物の霊能者だったなんてさ。

この女も殺さなきゃいけないのかよ。

本当に嫌になるわ。

最近マジでついてないよな。