第11話

『続いてのニュースです。

 先日、国際絵画コンクールの結果が発表されました。

 見事、グランプリに輝いたのは須藤伶桜さん。前回グランプリの彩木絵人さんは、今回は落……』

 リモコンの電源ボタンを押した。

 テレビが真っ黒に戻った。


 あの一件の後、世間ではこのことばかりが話のネタになっている。世界規模のコンクールだから、無理もないと思うけれど。

 理由はきっとそれだけじゃないと思う。

 普通ならば、グランプリを取った伶桜を称賛する内容になる。でも、大体のメディアは僕について報道する。オブラートに包まれていても、滲み出ている悪意が隠しきれていない。

 意味が分からない。

 僕はそんなにも嫌われているのか。


「……絵翔。お前、これからどうするんだ」

 父が僕に問う。

「もう、絵でやっていくのは無理だと思うぞ」

「そうよ。最近苦しそうだし。描くのやめたほうがいいんじゃない?」

 両親はいつも、僕がやりたいと言ったことを快くやらせてくれた。

 やめろと言われたのは初めてだった。

「うん。そうするよ。これからは勉強がんばる。」

 親に言われなくても、そうするつもりだった。


 ごちそうさまと言い、食器を片付けて、その場を去った。階段をあがり、アトリエ兼自分の部屋に入る。

 石膏像、画集、絵の具などが、無造作に置かれていた。

その中でイーグルだけが、しゃんと胸を張って、誇らしげに立っていた。はみ出した絵の具が、ありとあらゆる所にこびり付いていて、綺麗とはいえないけれど……。


 僕に才能はなかった。あったとしても、それは中途半端なものだった。

 だから、絵を描くのはやめる。

 親の言う通り、この先を考えるとやめなければならない。

 

 これでいいんだ。


 僕は苦しみから開放されるし、両親もそれを願っている。落ちた天才がいなくなったって、悲しむ人は誰もいない。

 


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