第10話

 まず、入賞。

 僕の名は――ない。

「よかったぁ」

 思わず、ふうっと安堵のため息をつく。ここに名前が載っていないということは、前回よりも上がった可能性が高い。

 佳作――にもない。

 優秀賞、金賞、審査員賞など、どの賞にも僕の名前は記載されていなかった。ただ一つ、グランプリを残して。

 あと指を二センチメートル動かしたら、結果が分かる。

 グランプリか、落選か。その二択だった。

 一つ、大きく深呼吸する。

 目を閉じて。

 肩を使って。

 冬の乾いた風と春の陽気な香りが混ざった空気を、できる限りまで全部吸い込む。

 次は、自分の肺に溜まった空気を一つも残さず、全て吐き出す。

 目を開ける。

 画面をスクロールする。















グランプリ  須藤 伶桜




 ……そんな、ばかな。

 なんの賞にも引っかからなかった。

 僕は、落選した。

 グランプリは伶桜がとった。

 

 気が付くと僕は泣いていた。この涙は、落選した悲しみや悔しさ、伶桜への嫉妬ではない。

 これは、単なる不安だ。

 この先、どういった目で世間に見られるのか。僕の結果を知った伶桜は、これからどんな嫌がらせをしてくるのか。伶桜だけじゃない。他の生徒からもされるかもしれない。考えたくはないけれど、親や先生にも嫌われてしまうかもしれない。

 ぞっとする。

 目の前が、どんどん闇に覆われていく。

 もう、これからの未来に希望を持つことができない。

 今、この瞬間から、何もかもが僕の敵だ。

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