密室殺人

今日もまた、警部は探偵の元に事件の相談に行っていた。


警部「探偵くん。今、抱えてる事件なんだが…どうしても、分からなくて困っているんだよ」


探偵「では、僕が一緒に考えてあげますから、事件の特徴を教えてもらえますか」


警部「とある一軒家で、死体が発見されたんだけどね。入口のドアは内側から鍵が掛けられていたんだ」


探偵「じゃないですか」


警部「あー、密室殺人ね」


探偵「そうですよ。完全に密室殺人の特徴ですよ」


警部「確かに、私もそう思ったんだが、窓が一つだけ開いていたんだ」


探偵「だったら、密室殺人と違いますね。

窓が開いていたんなら、犯人はそこから脱出すればいいんですから」


警部「ただし、その窓は猫が通れるくらいの小窓なんだ」

探偵「やっぱり、密室殺人じゃないですか!


猫が通れるくらいの小窓じゃ、人間は通れないでしょう。それはもう、実質密室ですよ」


警部「でも、分からないんだよね」


探偵「何が分からないんです。

密室殺人でしょう!」


警部「まず、ホトケさんは首を吊って死んでいたんだが…」


探偵「自殺ですね、それ。

密室も何も、自分で鍵掛けて、自分で死んでるだけです」


警部「しかし、鑑識が言うにはね。

首にはロープ以外に、人の手で絞められた跡があったらしい」

探偵「ほーら、密室殺人!!


自殺に見せかけた殺人!そうこなくっちゃ!」


警部「私も、密室殺人だと思ったんだが」

探偵「そうでしょう!?」


警部「部屋をよく調べると、本棚のとある本をカチッと押すと本棚がスライドして、その奥には通路があって…」

探偵「え!?」


警部「さらに進むと、井戸に繋がっていて、外に出られたんだよ」


探偵「何ですかそれ!?

ふざけてんですか!!!!」

警部「あったんだもん」


探偵「秘密の抜け穴!?

反則でしょう、そんなの!

誰も納得しませんよ!!」

警部「知らないよ!


まあでも、その井戸の前では、近所の主婦がずっと立ち話してて、そこから出てきた人間は誰もいなかったそうだ」

探偵「はい、密室殺人!!やった!!!!


文字通りの井戸端会議という事ですね。それじゃ出口はあっても実質出られない、実質密室ですよ」


警部「でも、分からないんだよなあ」


探偵「分からない事ないです!密室殺人です!!」


警部「家の鍵は、玄関の横の植木鉢の下にあって、その事は誰でも知っていたらしいんだ」

探偵「は!?

何ですかそれ!セキュリティガバガバじゃないですか!!


もう~、何で密室じゃないんです!!」

警部「そんな事言われても」


警部「ただ、その日は雪が降っていたのに、玄関までの道に人間の足跡はついていなかったんだ」

探偵「よし来た!!!!密室殺人ですね!!」


警部「いやでも、家の鍵は誰でも使えたんだよ?」


探偵「足跡をつけずに、誰も出入りできないでしょう?それは広義の意味での密室ですよ。実質密室ですよ。


ていうか、雪降ってたのにずっと立ち話してたんですか主婦の人ら。どうかしてますね。


まあ、とにかくこれで密室殺人に決まりです」


警部「そうだね。人間のものではない、小さな足跡くらいしかなかったからね」

探偵「ああっ!」


探偵は頭を抱える。


探偵「…竹馬だ」

警部「竹馬!???」


探偵「竹馬使って、出入りしたんですよ」


警部「そこまでする!?」


探偵「しますよ。殺人犯、何でもしますよ」


警部「でも、玄関には監視カメラがあって、誰も映ってなかったけどね。猫くらいしか映ってなかった」

探偵「先に言ってくださいよ!!!!密室殺人じゃないですか!!


もう、猫が犯人なんじゃないですか?

それはないか!

とにかく、密室殺人に決まりですね」


警部「うーん、でも…」

探偵「密室殺人ですって!!」


警部「その家、

探偵「どんな家ですか!!もうええわ!!!!」


【終】

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