第14話 見えてきた悪

都内某所、カツミと光明寺はある場所へとやって来ていた。

彼等がやって来た場所、それは様々な犯罪者を収監する巨大な刑務所だった。


「手続きの方は以上です、面会時間は無制限ですがまぁ程々に…」


二人は刑務官の男に会釈をし、程なくして入って来た囚人に視線が動く。

男は白髪で、顔もかなり皺だらけの普通の老人がやって来た。

男はカツミ達に目線を合わせると静かにお辞儀をして自身の名前を名乗った。


「…どうも、大久保です。見ての通り爺なんでね、あんまり話せないと思いますけど…」


白髪の老人はニヤけながらふがふがと喋り、一見大人しそうな人間に見えるが二人の目は厳しい。


大久保剛おおくぼたかし…こんなんでも人身売買で捕まったと聞くが)


見てくれはただの老人だが、彼は今この世にある程度現れ始めた遺伝子を改造された人間を増やす遠因となった人物の一人なのである。

彼の罪状、それはこの混沌の世で行き場を無くした人間を言葉巧みに誘い自身の研究の生贄としていたのである。


「それで、話とは…?」


彼は不思議そうな顔で尋ねると、早速光明寺は本題を切り出す。


「貴方、近年まで研究データを何も関係もなさそうな鉄鋼所に提供していましたが…何か知りませんか?」


神妙な面持ちで聞いてみると、彼は何かを思い出したのかぱあっと表情が明るくなり、饒舌に語り始める。


「あぁそれね…二年前かな?知り合いの政治家が殺し屋を怒らせて自滅しちゃって計画が頓挫しちゃった奴だったな…」


そのまま大久保は昔を思い出した懐かしさからか、楽しそうにどのような計画なのかを語り続ける。

その様子は何処か純真さのある、子供のような雰囲気があった。

それが何処となく、二人には不気味に映った。


「遺伝子改造しただけでも凄い強いんだけど、それでも国外の戦場とかに持ってくのはまだ技術が足りなかったのと、さっき話した通り出資者が殺されちゃって困ってたら、自分が出資者になるって言ってくれた上に新型の液体金属を研究している場所があるから紹介するって言ってくれた人がいたんだよね!まぁ、途中で捕まっちゃったけどね」

「だが檻の中にいるアンタ抜きで独自に研究を続けてる奴がいる、それは誰だ?」

「えー?大丈夫かな言っちゃって…まぁいいか、言っちゃお!」


高いテンションのまま、大久保はついにパトロンの名を口にした。

その男の名とは…


「葛城譲二、軍事産業大幡重工の部長さ。彼は僕の研究を勝手に持ち出した後配信とかで製品のPRを兼ねて色んなシチュエーションでの殺し合いとかを楽しんでたみたい。まさか警察の捜査が始まるとは思ってなかっただろうね」


大幡重工という手がかりを得た二人は、顔を見合わせてお互いに頷き合う。

鵜呑みにしていい情報ではないとは思いつつも、ようやく暗雲が晴れそうになって来ている今、すべてを終わらせるチャンスが来たと考えたのだ。

しかし、もう一つ疑問も生まれる。


「大幡重工か…しかし、何故そんな企業の人間がそこまでして…」


不意にカツミは言葉を漏らすと、大久保は返答するように一言だけ呟いた。


「また戦争がしたいんだって、彼」







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