第12話 光よりも速く
「何だあれは…」
光明寺は大山を警視庁へ連行する途中、恐らくコンツェルンの刺客から襲撃を受けてしまう。
横転する車から咄嗟に脱出した彼の目の前に現れたのは、一つ目の異形だった。
「お、おぉ!!田嶋くん!!助けに来てくれたのか!!」
光明寺は後ろから聞こえる声に反応し、後ろを向くと横転した車から這いずりながら脱出する大山の姿があった。
そして、田嶋と呼ばれた異形の一つ目はそんな喜びの声を上げる大山の方へ首をゆっくりと動かし…
その目を光らせた。
文字通り、彼の目が光ったのだ。
「何ッ!?」
光明寺は驚きの声を上げるよりも早く、大山は車ごと爆発し、跡形もなく消えた。
そして、田嶋は大山のいた位置から、今度は光明寺のいる位置まで視線を動かし、
「…さてさて、それじゃあ遊ぼうか!!サイバネアーム君!!」
と叫んだ。
まさか喋れるとは思わず、光明寺は二度驚いた。
「おっと、なんだこいつって顔してるけど一応名乗るか。俺は田嶋、そして機械と生体改造のハイブリッドの試作モデル、ビッグアイとでも名乗ろうか」
「試作モデルだと…!」
田嶋の自己紹介の機械と生体改造のハイブリッドという言葉に強く反応する光明寺。
しかし、反応するのはいいがその事を聞き出すのを田嶋は許さない。
「ホラホラ、とっとと殺し合おうぜ!!ヒャハハハッ!!」
巨大な眼を再び光らせて、田嶋は笑った。
そして光明寺はその光に反応し、横へと飛ぶと次の瞬間。
彼の立っていた場所が爆発した。
(何なんだ!?ヤツの眼が光った瞬間俺の立ってた爆破された…!地雷や爆弾の類ではない!なにか撃たれてる!!)
光明寺は田嶋の攻撃がただの攻撃ではない事は把握するものの、具体的に何を撃たれているのか分からないでいた。
そして、攻撃が何かを掴もうとするとその度に彼の眼が光ってそれどころでは無かった。
「ヒャハハハ!俺の眼からは逃げられねぇぞぉ!!」
ゲス笑いを浮かべながら彼は何かしらの射撃を光明寺へ打ち続ける。
その眼が光る限り、光明寺に反撃のチャンスはやって来ないだろう。
「撃つまでが速すぎる…ッ!」
「クソが!!とっとと当たれよ!!逃げんな!!」
と田嶋が声を荒げて挑発をしたその時だった。
彼の肩が突然せり上がり、まるで排気口のような物が出現したのである。
「なっ、しまった…!」
先程のゲスな声は鳴りを潜め、田嶋の声は何処か怯えるような声に変わり始める。
そして、その肩からは熱気を伴った煙が放出し始めた。
すぐにそれが何か、光明寺はすぐに察知する。
「排気口…!」
田嶋は恐らく、あの巨大な目から凄まじい速さの射撃を行っている。
しかし連射すると強制的に肩から排熱をしなければならないと光明寺は察知した。
彼も早く当たれと焦っていたのは恐らく光明寺のように射撃攻撃を避け続けた者がおらず、強制排熱を行ったことが無い為なのだろう。
(強制的排熱も一瞬で終わる…だが、それが最大の隙ッ!)
光明寺は今がチャンスだと義手に仕込んだ刃の出力を上げる。
刃は電撃を帯びて切れ味を増すが、それと同時に田嶋も排熱が完了したようだ。
「フフフ…まさか俺の攻撃を全部避ける奴が出るとは思わなかった、が!今度は当ててやるぞ!!」
そう言いながら田嶋の眼が再び輝く。
しかし、光明寺は彼の攻撃を避けれるのには理由があった。
それは彼の視線が向いている場所に着弾している為、避けるのはかなり簡単だという事だ。
「ちくしょおおおおお!!何で当たらねぇんだ!!レーザーなのに!!」
「少しはその頭で考えて…みろッ!!」
光明寺は悔しがる田嶋の懐へと射撃を避けつつスライディングで潜り込むと、すぐに見上げる。
そしてニヤリと笑った。
「う、うおおおッ!!!」
「…何も排熱の瞬間を狙わなくてもいい。何故ならば…」
懐へ潜り込まれ、焦った田嶋をよそに光明寺は冷静に義手の刃を肩目掛けて振り上げる。
彼が狙ったのは、田嶋の排熱機構だったのだ。
「その排熱機構さえ機能しなければ良いのだ!!」
そして彼は肩を両断し、肩の排熱機構を破壊した後すぐに田嶋の腹部を思いっきり蹴った。
凄い勢いで腹を蹴られ、光明寺との距離を開ける田嶋。
彼は尻もちを付きながらその視線を光明寺へと向けた。
「こ、このやろぉおおおおッ!!」
手玉に取られ、頭に来た彼は肩の排熱機構が破壊されているというのにその眼を光らせた。
この冷静さを欠いた行動が彼の運命を決めた。
先程から撃ち続けた結果、彼はオーバーヒートを起こしたのだ。
そして肩を斬られ、熱が溜まったというのに眼からの射撃を行ってしまった彼は断末魔を上げることもなく爆散した。
「フン、組織の刺客もこの程度か」
光明寺はあっさりとコンツェルンの刺客を倒したのだった。
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