第11話 巨眼
大山信彦、死の間際タチアナが呟いた人物の名前。
そして液体金属を横流ししているという情報を手に入れたカツミ達は早速行動に出ていた。
「あれだ、大山鉄工所!かつては兵器の新型装甲や、サイボーグ用の複合カーボン装甲の基礎設計とかもやってたらしい」
「そんな大企業もビッグコンツェルンみたいな犯罪組織に加担してるとは世も末だぜ」
彼らは早速、真夏だというのに車のエアコンを全開にして車内から大山が出てくるまで張り込みを続けていた。
何でもこの大山という男、過去の経歴を上手く隠しているがその正体はビッグコンツェルンが送り出したスパイだというのだから驚きだ。
「おっ、来たぞ…!」
早速、社用車らしき車に運転手と共に大山が乗り込むのをカツミ達は確認すると、早速彼らも行動に出た。
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「一体どうしたのかね…」
「す、すいません!エンジン壊れたのかなぁ…」
カツミ達が動き出した直後、大山が乗り込んだ車が突然故障していた。
と言っても、事前に光明寺が車に細工をして故障するように仕向けたのだが…
「バッテリーがイカレたのかな…」
と何処が故障しているのかを運転手の男が調べていると、彼は突然背後から誰かに掴まれ、そのまま何処かへと引き摺り込まれた。
その間物音一つ無かった事や、大山は後部座席で待っている間スマホ片手にスケジュール確認かメッセージのやり取りでもしてたのかは分からないが異変には気付く事がなかった。
「…エンジン直りました。すいません暑い中…」
「全く、私も降りようか悩んだが今日だけは大事な商談があるからね。早く出してくれ」
「分かりました、それでは発進します…」
と運転手は軽くやり取りをするが、大山は気付いていなかった。
この運転手が光明寺である事を…
そして、運転手に変装した光明寺は柱の陰から見守るカツミを見てあとは任せろと言わんばかりにサムズアップし、エンジンを掛け大山を乗せ何処かへと走り出した。
「さて、俺は俺で始めるか…」
光明寺の運転する車を眺めながらカツミは呟き、彼もまた大山鉄工所の中へと足を踏み入れたのだった…
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しばらくして、光明寺は大山の指定した場所とは違う場所へとひたすら車を走らせていた。
運転手が入れ替わってた事すら気が付かなかった大山も、流石に違和感に気付き、声を荒げる。
「お、おい君!一体どこに向かってるんだ!このままだと商談が…」
「残念だが商談はないですよ。貴方が向かうのはビルではない…刑務所です」
「…!!誰だ君は…!?」
ようやく運転手が別人だと分かった大山は強張った表情と震えた声で問い詰めるが、光明寺は何も言わない。
彼はとりあえず警視庁へと車を走らせていた。
「先日ある情報が入りましてね…貴方が新型の液体金属を犯罪組織に横流ししていると聞いた我々公安総出で貴方の会社を調べている訳なんですよ」
「な、何だと…!クソッ、なんということだ」
「私としては取り調べに素直に応じてくれると有り難いんですけども…」
と軽口を叩く光明寺をよそに、大山は静かに笑い始めた。
「ふっ、ふふふ…だがそれは無事にたどり着いた上で、証拠も何事もなく確保できたらの話だろう?」
「…まさか!」
「もう既にコンツェルンは動いているのだ、そして、この私も例外では───」
大山は何か意味深な言葉を言い切る前の事だった。
突如、車の左タイヤ付近から激しい光が発生したのだ。
まるで爆弾が爆発したような衝撃により、車は大きく跳ね上がってひっくり返る。
しかし、光明寺はすぐさま義手の武器を展開し、車のルーフを切り裂いて脱出する。
「クソッ、まさかな…」
辛うじて大破した車から脱出した光明寺の視線の先には、巨眼の異形が立っているのだった…
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