第7話 絶体絶命
秘密結社ビッグコンツェルン。
悪徳政治家、大倉の遺産の後継者にして殺し合いや一方的な拷問を動画にし、金を稼ぐ異常者集団。
既に過去の戦いが彼等に観られている事を知ったカツミは震え上がっていた。
しかし三又のような犠牲者を出したくないと考えたカツミは新たに、ビッグコンツェルン撃滅という目的を掲げ、警視庁を離れ立川に来ていた。
その理由は一つ、ここでビッグコンツェルンの計画が動いているというのだ。
時はおよそ一時間前に遡る─────
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「隊長、たった今取調べで得た情報ですが…どうやらビッグコンツェルンの裏取引がここ立川で行われるそうです」
シブダスの取調べは順調に進み、新たな計画を知る事に成功する。
その事を光明寺はカツミやシャオロンに言うと、二人は今一度気合いを入れ直す。
「よっしゃ、じゃあ早速立川に行こうじゃないか」
カツミは早速部屋から飛び出そうと駆け出そうとする。
しかし、シャオロンはそんな彼に気の抜けた口調で制止した。
「まぁまぁ待ちなさいカツミくん、もしかしたら罠かも知れませんしここは一つ私の提案を聞いてくれませんカ?」
「? 何です?」
「貴方一人では限界があると思いまして…なのでそこにいる光明寺とバディ、組みません?」
何とシャオロンはニコニコとしながらカツミと光明寺で組まないかと提案をして来たのだ。
とんでもない提案に、二人は口を開け、しばらく呆然としていると…
「…え? 」
とお互い間抜けな声を上げ、互いの顔を見合わせるのだった。
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「それにしても何だってこんな単純バカと組まなきゃならねぇんだ、あの
とカツミは悪態を付くと、脇腹を肘で突かれる。
「痛てっ」と小さく声を漏らしつつ、横を見ると光明寺が渋い顔をしながらカツミを睨みつけていた。
「それはこっちのセリフだ! 全く…任務でもなければこの場で帰ってもいいんだからな」
互いに険悪な雰囲気のまま、彼らは立川駅を歩き出す。
ここ立川は混沌窮まる東京の中では比較的マシな方で、まだここに来る人間もまともな部類だ。
それでもここにも裏の人間が出入りしている事実は揺るがないのだが…
そんな立川で、何が行われるというのか?
「確か、七星商店街の何処かにこいつの雇い主がいるんだよな?」
「あぁ、氏名はタチアナ・
カツミの質問に対し、光明寺は細かく説明を返す。
タチアナ・鳥羽、シブダスが言うには正に半グレという感じの男との事で脅迫、監禁、暴力は当たり前なのだという。
何故そんな男と知り合ったのか、それはSNSで動画クリエイターをしているという彼に多額の報酬を支払うと言われ、釣られてしまったとの事だ。
そこまで聞いたカツミは呆れた表情で光明寺に、
「アホか?」
と言ったが、光明寺は何も言わなかったもののその顔は何処と無く呆れ顔だった。
そんなこんなで、二人は七星商店街に到着する。
そこは都内だと言うのに閑散とした商店街で、まだやっている店はあるもののシャッターが閉まった店の方が圧倒的に多いその街に目的の人間はいる。
「ちょくちょく店はやってるが…薬局、ジャンク屋、後は…なんだこりゃ、店の名前すら分かんねぇな」
「まさに隠れるのには打って付け、と言った所か…」
と、二人は怪しげな商店街を見回す。
確かに雰囲気は怪しく、如何にも何か隠れてそうな雰囲気はしているが…
「おい、いくら何でも人の気配無さすぎじゃないか?」
カツミは人の気配の少なさを指摘する。
どうやら光明寺もその事が気になっていたらしい。
すると二人は何か嫌な予感を感じ、すぐさまスマホを取り出すと案の定、彼らの嫌な予感は的中してしまう。
『どうもー! シブダスです!! 今回はここ、七星商店街にやって来ました〜!』
何と、逮捕され取調べを受けてるハズのシブダスが自分達と同じ街にいるではないか。
あまりにも不可解な状況に二人は驚くばかりだが、真に恐ろしいのはここからだった。
『えー、この七星商店街に来た理由はですねぇ…なんと!今回は特別編!ここにとんでもな〜い犯罪者が二名も隠れているらしいです! あっ! あれですかね?』
と、シブダスを名乗る謎の男は突然あらぬ方へスマホを向ける。
そのカメラの先には、動画を見る為に画面を覗き込むカツミと光明寺の姿がバッチリと見えていた。
『さて、今回の特別企画! この二人の犯罪者はこの商店街に潜むハンターから逃げ切れるかショー! さぁ、皆さん張り切ってください! もし捕まえられたら…一千万円支払っちゃいマース!!』
彼がそう高らかに動画内で宣言した瞬間、商店街の至る所からゾロゾロと明らかに普通でないヤツらが続々とカツミ達の元へと集まり始めていた。
更には…
「クソッ! 急に霧が濃くなって来やがった、こいつはまさか…」
「強化兵士だ!!」
霧を掻っ切って、中からトカゲのような化け物達までもが現れ、遂に逃げ道が無くなってしまった。
恐らく、これらの罠を仕掛けたのもタチアナの仕業だろうとカツミ達は予測した。
「なぁ、お前これどうする?」
「決まっている! 全員倒して偽シブダスを捕まえる!!」
どこを見ても敵だらけ、最悪の乱戦が始まろうとしていた…!
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