10話

「よいしょ……っと、よし、片付け完了」


 掃除道具なんかも片付けて出かける準備をする、別にお店なんかに行こうとしているわけではないから一応携帯だけを持って外に出た。

 一月になってからはちょっと外に出るだけでも寒すぎてやっていられない、できれば相手や学校の方がこちらのところにやってきてほしいぐらいだ。


「たーいーじー君、遊びましょー」

「なあ、目の前にいるんだから言わなくてよくないか?」

「友達がいなかったからこういうのを言ってみたかったんだよ」

「まあ、その点については俺もあんまり変わりはなかったがな。とりあえず変な笑みを浮かべていないで上がってくれ」


 さらに残念な点を言うと今日は彼しかいないということだった、お母さんがいてくれれば彼の昔話なんかを話してもらって楽しむというのにそれもできない。


「今日呼んだ理由はこれだ、鳴海なら分かるだろ?」

「分かるけど、まだ終わっていなかったことが気になるよ」

「鳴海に合わせてなるべくやっていたがテストのときみたいに集中できなくてさ」

「ま、いいや、終わらせたらご褒美をあげる」

「そ、それって……?」


 うわーお、なんかめっさ欲望丸出しの顔をするじゃん。

 簡単にこんなことを言ってしまったことを後悔しているかもしれない、でも、もう遅いというやつだ。

 ま、さっさと終わらせよう、多分その方が彼の脳や精神的にもいい。


「よ、よしっ、これで終わりだっ。さて」

「もう好きにしなよ、ご褒美をあげるって言ったのは私なんだからね」


 どうせ彼のことだからできてもキスぐらいなんだろうけどね、ま、少しだけでも雰囲気がよくなったらまた頑張ってあげてもいいけどさ。

 それに彼は欲望全開だったとはいえ実際に頑張った、人間はなにもなしに頑張ることなんてできない、そして期待をしていたからこそのやる気だったのにやっぱりなしなんてことになったら爆発する。


「じゃあいまからデートをしよう!」

「え、あーそういうのなんだ、なんか意外」


 そういえば一回も外で遊んだりとかしていないな、都子ちゃんに頼まれた日も寒くてすぐに家に戻ったから、うん。


「健全な付き合いってやつがしたいんだよ! その点、俺らの恋はまだ全然駄目だ!」

「あいよ、じゃあ行こうか」

「それも待ったっ、母さんに会ったときの服装に変えてきてくれ」

「一旦家に帰るともう出なくなるよ?」

「ぐぐぐ……それは困るな、仕方がない、今回は我慢をすることにしよう」


 折れてくれてよかった。


「はい、じゃあ手を繋いで行こう」

「ま、まじ……?」

「当たり前だよ、デートなんだよ? あー手が温かったら長く付き合えるのになぁ」

「わ、分かった! 手を繋ごう!」

「うん、行こう」


 しゃあない、こうなったら彼が満足をするまで付き合うことにしよう。

 ま、家に引きこもっているよりは彼の言うように健全な時間となったのだった。

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