奴隷オークション 【珍客】

「では銀貨50枚からお願いいたします。」


……


……




ガヤガヤと談笑の音が聞こえるだけ


「ありませんでしょうか?」


壇上の奴隷は小柄で髪もボサボサ

労働力を買う客とはマッチしない


「それでは次行ってみましょう52番、此処ここへ」


当然買われない奴隷も現れてくる、彼で4人目だ


残念そうにとぼとぼと牢屋の方にあるいていく奴隷いや奴隷になれなかった者か



時間は夜9時を回った頃


客も上等な礼服や高そうなドレスを着た貴族が増えてきて、従業員も酒や料理の準備で大忙しだ。


「カイン!使い終わったグラス交換してこい」


ルッツからの指示で客が飲み終えたグラスをサービスカートに乗せ厨房に持っていく。






「これお願いします。」


洗い場に着くと見習い料理人が一心不乱に洗い物をしている。


グラスを置いて新品をカートに乗せてまた闘技場にとんぼがえりだ。


厨房は言わずもがな、戦場とかしていて、料理人のわきをすり抜けてカートを進める。




闘技場へ向かう廊下で


着飾った盗賊達と従業員、皆がお辞儀をしている。


どうやら偉い貴族が来場したみたいだ


「ピルドール伯爵はくしゃくようこそいらっしゃいました」

「いらっしゃいませ」


僕もカートを止めお辞儀をする


よく見るとこんなところに子供を連れてきて

4人家族でご来場だ、ピクニックじゃないんだぞ。

確かに段々、貴族が増えるたびに貴族の息子や娘も視界に入るようになってくる。





通り過ぎたあとにまた盗賊達が来場の声をあげる


「カモミール様ようこそいらっしゃいました!」

「「「らっしゃいませー!」」」


先程とは違いテンションが高い


「あんたら、失礼がないようにやってるかい?

今年はどんなもんだい?」


「はい姉さん、お客様の入りも上々です」


姉さん?

見ると際どいドレスの黒髪褐色の美人がそこにいた。


「オッケー♪じゃああたし達は中で楽しませてもらうよ、いくよリンダ、レイン」


「じゃあねー」「がんばってねー」


後ろの2人もかなり綺麗だ。


「「「いってらっしゃいませー」」」


盗賊が姉さんと呼ぶなら

この女性も幹部クラスか!?


顔に目をやると、向こうと目が合ってしまう…


「可愛いボウヤ、頑張ってね♪」


ニコッと笑いかけてくる


「あ…ありがとう…ございます」


優しい対応にびっくりと少しの安堵する





カモミールが闘技場の方へ行こうとすると


「ようこそいらっしゃいました!」

「「ましたー」」


またかよ、早くグラスを持っていかないとルッツに怒られるぞ


これで3回目のお辞儀




「バロウズ子爵ししゃくよくいらっしゃいました。」




ん?


「お招きいただきありがとう」


ん?



「今年もよろしくお願いしますよー」

盗賊がヨイショする


え?



「ああ」




この低い声は…







最初は嘘だと思った…


幻聴だと思った


でも


よく知っている


忘れるもんかよ


なんでここに?


貴方は紳士で


こんなとこになんて来るはずない


なんでここにいるんだよ!?








クラウス先生!?










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