白い少女

マリーの後に続き2階の廊下を歩く。

1階とは違いこちらはシスターの居住区のようで、子供のシスターが物珍しいそうにこっちを見ている。


「とうちゃ〜く、ここが救護室ね」


扉をバターンとシスターらしからぬ豪快な入室をかますマリー。

 

こぢんまりとした部屋に小さな机、薬品を置いてある棚そしてベッドが2台


「はいそこ座って!」


言われるままに着席する。


「えーと包帯と消毒薬と…あと包帯どこだったっけなぁ…」


バタバタと棚を漁るマリー、薬を探すだけでもてんやわんやだ!


その物音に気付いたのか


シャーーーッ


とベッドのカーテンが開いた。



音の方を見ると小さなシスターが立っていた。


「あっ!スフィリア居たの!?アンタまた寝てたんだ」


「うん……ねえねえは何でここにいるの?」


眠い目を擦りながらスフィリアが尋ねると


「そこの子の治療のためよ

暇ならアンタも薬探すの手伝んなさい!

え〜とあとは…ねぇ火傷の薬ってどこだったか知ってる?」


じっーーーっ!


スフィリアがこちらを見つめてくる。

白い髪に白い肌

肌に至っては青白く不気味さも感じる

それに真っ赤瞳

見ていると吸い込まれそうだ


じっーーーっ!


どんどん顔が近づいてくる!


じっーーーっ!


「……」


目と鼻先まできた!





「臭さい…」


鼻を摘まんでそう言われた…




「5日も身体を洗ってないから…」



他の奴隷の皆は水汲みの時に身体を洗ったらしいけど、僕は寝たきりだったし…


「確かに匂うわね、じゃあ先にお風呂かしら

バイ菌も洗い流しましょう!」


「綺麗に…する」


2人に押され部屋を出る


「ど、どこに!?」


「すぐ隣よ、あたし達が使ってる小さなお風呂」


隣の部屋に入ると

1人用の小さなバスタブと珍しい物が


「シャワーあるんですね…」


「珍しいでしょ!

まぁ…全部裏金で設備整えたんだけどね。

マザー達の部屋はもっと凄いらしいけど」


シャワー、炎と水の魔道具

水源に繋ぐ必要があるが自由にお湯がだせる

一般家庭では買えない高級品だ。

昔住んでいたサンファーナルの屋敷とスピカの家でしか見たことがない



「じゃあ早く脱いで!」

「えっ!?」

「早く脱ぎなさいよ、洗ってあげるから」

「いや…でも…」


女性が2人いる前で脱げって言われてもなぁ


「あぁ面倒くさい!」


強引に服を剥ぎ取られる


「ちょっと!やめてっ…」


赤いマフラー

穴が空いてボロボロになったおばさんに作って貰ったローブ

中に着込んでいたシャツ

ズボン

パンツ

丸裸にされ

そして身体中の包帯…を


「えっ!?何よこの怪我!」


マリーの声色が変わる


「こんな酷い傷…何があったのよ!?」


「…………」



身体の至る所に火球ファイアボールによる火傷の水脹みずぶく

潰れたのもあり汁が出ている

それに魔法弾マジックミサイルによる青タン

特に酷いのが風刃ウィンドカッターで深く切られた両腕

血が固まってはいるが周りは膿んでしまっていて赤青黄色が混ざり、おかしな色になっている。



「ねえねえ…私」


「そうね…」

2人が顔を見合わせる



「はいそこに立って、まずは汚れを流すわよ!」



「……痛っ!!」


お湯が当たり尋常じゃない痛みが走る


「今までよくこれで動けたわね、もうちょっとよ我慢しなさい!」


「うっ…ぁぁ…」


突き刺さる痛みが今の惨めな自分を思い知らされる

もう苦しむのは嫌だ…なんでこんな痛い目に…

涙が流れる……でもシャワーのお湯で気づかれることはないだろう…


シャワーが止まり髪の毛がポタポタと水滴が落ちる







「癒しを与えたまえ【治癒ヒール】」




「え?」



暖かな光が腕を包む


振り返るとそこにはスフィリアがいた


「魔力持ち…」


「そうよ、この子は特別でね。

いつもだったら自分から治癒ヒールなんて使わないんだけど、君気に入られたね」


回復呪文の使い手は滅多にいない

魔法使いが1000人に1人なら

10万人に1人とさえも言われる


「次はこっち向いてっ」

向き直るのは裸で恥ずかしい気持ちもあったが

彼女の真剣な表情には勝てなかった



母様の治癒ヒールの様に優しく、あったかい光が身体を巡る


「スフィリア、顔は治しちゃダメよ!

ごめんね…バレたら怒られるからっ」


痛みが消えていく


「おわった」


「…あ…りがとう」


顔の傷以外は完全回復した。



「お礼ちょうだい」


「お礼…?でも何も」


「それちょうだい」


スフィリアが指刺したのは僕の胸についていた

母様がくれたロケットペンダント



「ごめん、これはあげれない」


「欲しい、ちょうだい」

「それくらい別にいいじゃないの〜スフィリア頑張ったんだし」


「これだけはダメだ…」


「欲しいの…」



彼女の目は真剣だ

僕もお礼をしたい気持ちはあるけど…




「ごめんなさい…

他に出来ることがあればなんでもします。

これだけは…このペンダントは母様から貰った唯一の物なんです…

だからあげることはできません」



頭を下げる、涙を流していたかもしれない

本当僕は泣き虫だ。




………



「いい子…いい子…」


僕の頭を抱きしめてスフィリアがそう言った


あたたかい


「…っぅぅぅ……」


「いい子…いい子…」


「…ありが…とう…」




僕は心の底からお礼を言った


















































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