ベイリーク修道院
馬車が止まってしばらくすると
「降りろ、2列に並んでついてこい」
言われる通りに馬車を降りる、4日ぶりの地面だ
森囲まれた中、その立派な建物はポツンと立っていた。
盗賊や僕達とは場違いな場所だ
「こっちだ」
列に従い中へ入る
内観も外観に負けず劣らずで、掃除も綺麗に行き届いており、神に使える者の理想の場所だ。
そして僕達は大聖堂に通された。
巨大なステンドグラスにあれはオルガンだろうか、ここまで立派な物は見たことがない。
前から順番に椅子に座って行く。
どうやらシルト村から連れて来られたのはここにいる50人のようだ…
前の椅子にはルーナらしき人物が見える…
「これで全員です」
仕切っていた盗賊がシスターに報告する
「皆さんこんにちは
私はこのベイリーク修道院の院長の
マザーヒルダです。
皆さんの境遇は聞いております…さぞ大変でしょうが、神様は見ておられますよ」
これがマザー?お世辞にも綺麗とは言えない、二重顎の太ったおばさんだ。
周りにいる年配のシスターも何か怪しい…
昔…神官だったイザベラ母様が席を置いていた教会に連れていってもらったことがあるが、皆暖かく上品だった。
それに比べこいつらは僕達を金としか思っていない下品な目をしている
「ここでは皆さん素晴らしいご主人様に買われるように
再出発ができるように、さぁ!皆さん神に祈りを捧げましょう!」
皆、目を閉じて祈る
神様か…
お前は何も叶えてくれない…
魔力もくれない…
どうでも良くなった僕を殺してもくれない…
村の皆も助けてくれない…
スピカを……
そう考えると、壊れた心に怒りが湧いた…
何もしてくれない神にか?
何もできなかった自分にか?
でもすぐに怒りは諦めに代わり
無力な自分の殻に籠る
神なんていないし…
自分じゃどうしょうもない…
目を開く
周りは必死に祈っていた…いないもしない神に
「では女性はアメリアに男性はマリーについて来てください」
大聖堂から出て行く時にマザー達と盗賊が笑顔で会話しているのが視界に入った
何の話かは分からないがきっと金儲けの算段だろう…
マリーに案内され、やって来たのは修道院奥の大部屋
扉を開けた中には20人程の同年代の男子の先客がいた。
目が合うとお互い同じ境遇であることを悟る
「はい、あんた達はここでしばらく待機ね
入浴の時間になったら呼びにくるんでそれまで自由にしてていいわよ」
シスターとは思えない言葉使いだ
大聖堂で前にいたシスター達と違って若い
20歳もいっていないだろう、ロビンと同じぐらい年齢だ。
「それと、そこの赤いマフラーの包帯してる君!
手当してあげるからついて来て」
「………」
言われるままついて行くことにする。
マリーの後ろを歩く、お互いに無言だ
「これは命令だからやるんだけど
あたし正直、君みたいなの大っ嫌いなのよね」
2階に続く階段を登ったあと振り返って
あっけらかんとそんなことを言いだした
「………」
「あ〜ヤダヤダ、自分が世界で1番不幸って感じの目」
カチンときた
「貴方に何が分かるんですか…」
「分からないわよ、ねぇ辞めないそんな卑屈になるの?」
「貴方はいいでしょうね…こんな立派な修道院で働けて、これから奴隷になる人間をバカにできて」
「ん〜そんないいもんじゃないわよ〜」
楽観的に答えられて、僕もヒートアップする
「そもそもシスターが盗賊とグルになってることがおかしいんじゃないんですか?」
「そうね、あたしも間違ってると思うわよ」
「じゃあ…なんで!?」
「あたしが生きるためかなぁ〜もしあたしが間違ってます、やめましょうよって言ったら
ここに居られない、下手したら殺されるかもね」
「………」
「実はさ…あたしも家族はいないんだ…目の前で殺された。
父さん母さんが最後に
マリーあなたは生きてって言われたの…
じゃあ生きるしかないじゃない、そんだけよ」
とでも悲しい出来事なのに
マリーは自分自身を鼓舞するように平然と話す
「…それが生きる理由なの?」
彼女の決意に驚かされて
素直に聞いてしまった…
すると胸を張り
「そうよ!だから今あたしは生きてるの!
どう?少しは元気になった?」
イタズラっぽい笑みを浮かべる
「……わからない…」
少しだけ心に火を灯されたような…
でも頭の中が整理できない…
僕はどうしたいんだ…
「そっかぁ、じゃあ考えな少年!」
そしてマリーは歩きだした。
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