二章

黒の森を抜けて

馬車に揺られること2日


なんとか座ることが出来るようになったが

顔の腫れと身体中の切り傷や火傷で思うようには動けない。


幸いに包帯と安物の傷薬は支給された。

僕をまだ商品として扱ってくれているらしい。


ロビンに包帯を取り替えてもらい、また横になる。



1日に2回馬車が止まり食事の時間がある。

乾いたパンと小さなチーズだ…

水は大きな樽が2つあり水場で随時補充する


昨日小さな川辺で水汲みがあった時に外に出たロビンによると、前を行く他の馬車には女子達が乗っているらしい。

みんな無事だといいが…



3日目の朝、盗賊がほろ開けて食料を持ってくる。


「ほらよ1日分の飯だ、それと今日は止まらずに進むからな。最後にお前ら、命が欲しかったら、何があっても騒ぐんじゃねーぞ!」


そう忠告してきたが、しばらく進むと

僕達その意味を理解する。


朝なのに、真っ暗な森を進んでいる


それに今までの街道とは違い、悪路だ。

ガタガタと振動が伝わり背中が痛い

遠くからは聞いたことない獣の遠吠えが聞こえる。


異様な雰囲気に皆息を殺している。


「来たぞ、ウルフだ!」「馬を守れ!」

ワゥヴー ガウゥゥー バゥゥ


凄い数のウルフの声が聞こえてくる


「うぉぉぉ」「この野郎」「くらえ!」

外で盗賊達が戦っている…


盗賊達が負ければ僕達は逃げることができるか

いやどのみちウルフの餌になるだろうな…



キャィィ クゥー


断末魔で盗賊達はウルフを仕留めているのが分かる


ガゥゥワァァ


ドン!

と馬車に体当たりされると


「ひぃ…」「わぁぁ…ぁぁ…」

皆が声にならない悲鳴をあげる

自分口を手で隠して我慢している子もいた




しばらくするとウルフの声が止まった


「よし片付いた、速度を落とせ!馬を休めるぞ」


盗賊の掛け声と共に速度が落ち、皆が安堵する


「もしかして……ここって黒の森じゃないのか?」

「黒の森って…嘘だろ…」

「なんだよ…黒の森って?」

トーマス達の話し声が聞こえる


「黒の森…国境を越えた先にある未開の地だよ…凶暴な獣や魔物なんかもいて、足を踏み入れた者は2度と戻れないって」


「国境越えたって…俺たち何処へ連れてかれるんだよ…」


「王国の外なんて死にに行くようなものじゃねーか…」


重苦しい空気が立ち込める…



それからも獣に襲われながら、馬車は1日止まらずに進んだ…


夜になると寒さも増してくる、不気味な風の音、獣の声、揺れる馬車も相まって皆限界が来ていた。








朝日が差し込んでくるとともに

周りの景色が変わった…


馬車の揺れも収まった、どうやら森を抜けたのだろう。





そして4日目の朝


馬が止まったそこは


山の中にポツンと佇む



大きな修道院だった。
















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