収穫祭 【奴隷堕ち】

「どうして殺した!?言ったよなぁ金貨100枚はくだらないって!」


中央広場、アマンがラスティの胸ぐらを掴み怒鳴りつける。


「……………」


「おい!なんとか言えよこの三流魔道士!」




「…っ…すまなかった…」

バツが悪そうに小声で謝罪するラスティ


「アマン、そこまでにしたんな。

いいじゃねーか子供の1人や2人」

ワインをラッパ飲みしながらジャーメルが仲裁に入る



「いや…でも…」

「こいつも反省してるって、謝罪の言葉なんて初めて聞いたしよ

それに今回の仕事は大成功だ!それでいいだろ?」


渋々掴んでいた腕を離すと


「ボクはもう寝る…死体は固めておけ、ボクが明日魔法で焼く」


「そうか、助かるぜ!飯と酒はいいのか?」

「いらない…」


ヘソを曲げて出ていくラスティ





「アイツ、プライドだけは高いからな、ガキに腕やられたの相当きてるな」

「自業自得だ…」

「ハッハッハ、まぁいい薬なったんじゃねーか。それより飲もうや!

野郎ども勝利の美酒はどうだー!?」


「うぉぉぉ!」「最高!」「うめぇぇ!」


「酒も飯も女も好きなだけ楽しんでいいぞ!」


「お頭サイコー!」「やったぜー!」 


収穫祭の酒と料理を手に騒ぐ、血のあぎと

宴は当分終わりそうにない…



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





…………



…イ…ン…





「…カイン…起きたか…死んだのかと思ったよ」


目を覚ますとそこにはロビンがいた…


どうやら馬車の中のようだ…



「…っ!」

「酷い怪我だ、無理して動くな」

身体中が痛い、全身に鉛を撒かれたように起き上がることが出来なかった…


「お前だけでも無事で良かった…」


泣き出すロビンを見ても何も感じなかった…


周りを見回すと男子クラスメイトのほか数十名の10代の男子がいる。

若いロビンも殺されずに捕まったのだろう


「俺たちは奴隷として売られるんだってよ…」


馬車の中では、僕と同じ全てを諦めている者…身を寄せ合いすすり泣いている者…重々しい空気で満ちている


「カイン…俺たちは皆の分まで生きないとな…」

涙目で必死に励ましてくれるロビンだが


僕には全く響かない


もう生きてる意味なんてない…


話を聞くのが面倒になって目を閉じる


外からは盗賊の笑い声や若い女の悲鳴にも似た嬌声が、僕の眠りの妨げる…


落ちていく意識の中でスピカの最後の顔がフラッシュバックする…


………


涙がスッーとこめかみの方へ流れた。








馬車のほろの僅かな隙間から朝日が射す。


バサっとほろが開かれ光に目が眩む


そこにはアマンがいた…


「「「アマン先生!!」」」

クラスメイトの小さい子達が側にいくと…


「大丈夫です…皆さんはこれから辛いことが沢山あると思いますが…頑張って行き抜いてください…皆さんと出会えてとても幸運でした…」


涙を流しながら、みんなと抱き合う…

よくもまぁ言えたもんだ


「うわぁぁぁん」「せんせぃぃぃぃ」

 

ロビン達も

「先生は命の恩人です」「なんとお礼を言ったらいいか」


見事に全員を丸め込んでいた…


みんなの目に精気が戻る

それもアマンの作戦なのだろう



「カイン〜!」

最後に呼ばれた

「……」


「頑張ってくださいね〜!」


僕だけに向ける、勝ち誇ったようなドス黒い笑み


怒りも湧いてこなかった…

もう僕は死んでいるのだ…





馬車が動き出す…


盗賊達が逃げることが出来ないように馬で並走する。

隙間から覗くと3台の家畜を運ぶ大型馬車と20名ほどの盗賊の大所帯だ


血で染まった村を進む…

あの暖かった村が見る影もない


死体がゴロゴロ転がっている道を進んでいく



ロビンが目を閉じて下を向いて震えている


あれは…僕の家だ


家の扉の前に折り重なって倒れている人…



血が固まり、周りが赤黒に変色している




おじさんとおばさんの死体がそこにはあった…


感情は湧いてこなかった…ただ涙が頬を伝う


僕はどうすることもできない…



早く僕も殺してくれよ、神様




馬車は進む…



そうして僕は現実逃避をするかのように


夢の中へ堕ちていくのだった…































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る