収穫祭 【慟哭】

「僕の勝ちだ!」


ラスティは下を向いたまま、反応しない


………


僕はツリーハウスに歩いて行く

これで逃げれる



「ラ、ラスティさん!?」

盗賊の二人は狼狽ろうばいしている。





僕がツリーハウスの階段に足をかけた時だった

!?

足元に魔法陣が出現する



「【風掌握ウィンドグラスプ】」


尋常じゃない風の圧力で取り押さえられる


「ゔっ…約束が…ちがうっ…」



「人が手加減してやってるのによぉ!

何調子に乗ってるんだよ!約束?そんなもの知るかよ?」


ラスティは血走った目で開き直る


「ひ、卑怯だぞ…」



「殺し合いに卑怯もなにもない!お前はゴミの癖にこのボクの腕を傷つけた!その意味分かってるよなぁ!?死ねぇぇぇぇぇ」




風に拘束されて大木に叩けられる


「ごふっ…あ゛あ゛ぁぁぁぁ」


肋骨ろっこつ、内臓をじわじわ握りつぶされて息が出来ない…意識が飛ぶ…



「まだ殺さねぇぞ」

そう言うと風の力が弱まる


「ごほっ…ごほっ…」



逃げないと…死ぬ

腕をモゾモゾ動かすが、風ですぐに戻される


「見せてやるよ、これが魔道士だ

魔法弾•拡散スプレット】!

小火球ファイアボール】!」


ダダダダダダダダダダダダダダ

ダダダダダダダダダダダダダダ


青と赤の2色の弾の雨が僕を襲う


「うっ…う…あっ…ぐわ…ぅぅ」


「ヒャッハッハッハー!どうだどうだ?

本当ならお前はもう死んでるけどな、

死なないようにうまくコントロールしてやってんだぞ感謝しろよ!」


痛い


熱い


苦しい


「ぅ………」


視界がボヤけている

口の中が血だらけで変な味がする

風に支えられてなければとっくに倒れているだろう



「あれ〜?反応がなくなったなぁ」

「ラスティさん殺したらマズいですぜ?」

「あぁ?…死にてえのか?」

「すいやせん…」



「出来損ないの魔法使い君、最後に良いものを見せてあげるよ

風刃ウィンドカッター】」


ビシュ


右腕が切り裂かれる


「あぁぁぁぁぁぁぁ」


「いい声で鳴くじゃないか

もう一回!」


ザシュ


「ぐぁぁぁぁっ」


「この風刃ウィンドカッター

は殺傷力はそれほどない下級魔法だ。でもね」



ゴォォォォォォォォォォォォ


ラスティの周り風が集まりだす



「ボクはね、魔法のコントロールに長けていてね、拡散、装束がこの通り自由自在だ」


風刃ウィンドカッターがどんどん大きくなっていく


「魔を祓う風よ…一つに束ね我に仇なすもの刈り取れ!!」







ねぇ神様?


僕はなんで魔法が使えないのかな?


守りたいものもできたのに…


こんなにも魔法を欲しているのに…





悔し涙が溢れ出す




「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!

突風大鎌ブラストサイス】ぅぅぅ!」


ギュォォォォォォォォォォォォ

けたたましい音と共に風の鎌が放たれる






死にたくない…


母様、姉様、おじさん、おばさん、バーガン、ルーナ、村のみんなの顔が見える…




スピカ…




スピカ…見える












風が血飛沫を飛ばし


雨のようにあたり一面を真っ赤に染める



「ス…ピカ…?」



血の海の中心でスピカが倒れている


「ス、スピカっ!!」


駆け寄り抱き起こす


「スピカ!スピカっ!」


血が止まらない


「カ…イン…」


「スピカ」




「よ…かっ…た…………………………」




「スピカ!?スピカ!スピカ……… ぁぁ…あっ…」


ゆすっても、スピカは目を開けない…






嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ




「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ」















ドン




「クソがっ!お前のせいだぞ!」


ラスティに蹴られた衝撃で吹っ飛ばされる


「………」


痛みなんてもう感じない…


全て失った…





「ダメだ…女の方は完全に死んでる…」



「なんで出てくるんだよ!

こんな奴のためなんかによ、絶対殺してやる!」


「ラスティさん、このガキまで死んじまったら、俺達、お頭に殺されちまうよ」


暴れるラスティを盗賊が羽交締めにしてなだめる。



「チッ…くそがぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあ」


八つ当たりに巨大な魔法弾マジックミサイルをツリーハウスに放つ


「戻るぞ…」



崩壊していく秘密基地



それに飲み込まれいくスピカ



盗賊に担がれながら




意識がなくなっていく





もう終わりだ…







そして僕の心は死んだ…









































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