収穫祭 【逃亡】

走る…走る…闇雲に走り続ける

まだ追っ手が来るかもしれない

バーガンに守れって言われたんだ

悲しみ、怒り、恐怖、疲労、頭の中がパンクしそうだ


「「はぁ…はぁ」」と2人、肩で息をする。


何とか村外れまでやってきた。

前を向くと永遠と闇が続いている道



「よし、スピカ行こう。」

「はぃ……痛っ」

スピカが苦悶の表情を浮かべながら足を引きずっていた。

「大丈夫?」

よく見るて左足が真っ赤に腫れている。

盗賊に捕まった時に挫いたようだ…

「ごめん…気づかなくて」

「大丈夫です、はやく行きましょう…きゃっ!」

バランスを崩すとこを受け止める。

スピカの体力も限界に来ていた。

これ以上は進めないな、何処か休める場所を探さないと…そうだっ!


「スピカ、秘密基地に行こう!あそこなら包帯もあるし、見つからない」

スピカに肩を貸し、真っ暗な林の中を突き進んでいく。


光が無いだけでいつも通っている林が不気味に感じる。






闇で方向感覚を狂わされながらも



なんとか秘密基地に到着することができた。



ツリーハウスの中に入りスピカを座らせ包帯を巻く。

「ありがとうカイン、だいぶ楽になりました。」

身体も冷え切ってしまっている、急いで毛布を出して一緒にくるまる。


「あぁ…暖かいっ」


人肌の優しさに触れて、緊張感が少しほどける。



「ルーナは…」

「きっと生きてるよ…バーガンが守ったんだから…」


お互い冷静さを取り戻すとバーガンの死が重くのしかかってくる。



「スピカ、少し眠りなよ?僕が見張りをしとくからさ」

「でも…」

「無理しないで、夜が明ける前には出発したいからあまり時間はないけど」

「じゃあ…ごめんなさい…」

「そういうときはありがとうでしょ?」

「ふふっ…ありがとう…そうだカイン!」



スピカが足を庇いながらゆっくり立ち上がり

女性陣の裁縫道具が仕舞ってある引き出しを開けると


「少し早いけど誕生日プレゼントです。」


真っ赤なマフラーを首に掛けられた。


「頑張って編んだんですよ、ちょっと歪なとこもありますけど」


「とってもあったかい…ありがとうスピカ!」

「よかった」


その愛おしい笑顔を見てやっと分かった、僕はスピカの事が好きなんだ。


彼女を守るためなら何だってしよう!



そう誓った。










スピカが横になり寝息を立てている。



僕は出発の準備をしていた。

大工道具から使えそうなものを拝借する。

武器になりそうな小型ナイフは勿論

バーガンが使っていた大きめの木槌

ノコギリは…う〜ん邪魔かな、武器としては使いにくい

メリダおばさんが作ってくれた魔法使いのローブ、ポケットが沢山あって助かる。


おばさん…おじさん…考えないようにしていたが無事なんだろうか…きっと、いや絶対無事だ






そんなことを考えいると


バサバサバサバサバサッ


静かだった林に鳥の群れが羽ばたく音が響く!


突然の音に心臓の鼓動が速くなる


おい!なんでだよ?


なんでこっちに来てるんだよ!


鳥が飛んだ方向に目を向けると


黄色い光…魔法の光近づいてくる。


灯火トーチ】の魔法だ


ゴクリと唾を飲む


そこにはローブにつつまれた


魔法使いがいた。























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