収穫祭 【親友】

僕達は3人の盗賊に首根っこを掴まれて廊下を歩いていく。

僕とバーガンはマンツーマンで抑えてられて、犬の散歩みたいになっている。


「私は奴隷情報の書類を取ってきますので、先に皆さんを馬車に運んでてください」

そう言ってアマン先生は物置きに使っているもう1つの教室に向かった。



学校の前に着くと、そこには僕達を乗せるであろう、家畜を運ぶ用の大型の馬車が止まっていた。


「腕を後ろで組め!」

スピカから順番に縄で手を縛られる。

スピカが終わりルーナの番になると

「おぉ、お前ガキの癖して良い身体してるじゃねーか。流石はアマンさん、いいの見つけてくるなぁ」

「や、やめて…くださぃ…」

後ろで手を組んでいる為前に突き出したルーナの胸を触る盗賊

「アニキ、遊んでないで早くしてくださいよ、アマンさんに怒られますって」

「いいじゃねーかよ、仕事はほとんど終わったんだし」

「お願ぃ…します…もぅやめて…」

ルーナが恐怖で震えながら涙を流して訴える。

僕は何もできない…どうしてこんなことに…

泣くルーナを見てられず視線を外すと、歯を食いしばり鬼の様な形相でわなわなと震えているバーガンの姿が映った。

「へっへっへ…たまらねぇな」

盗賊がルーナの首元から服の中に手を突っ込んだ。

「いやぁぁ…やめてぇぇぇ」



その瞬間


ドスっと、バーガンを掴んでいる盗賊が股間を押さえながら倒れた。

と同時にバーガンが凄い速さで走り出す。



そしてルーナを虐めている盗賊にタックルした。



ドスンと横からの衝撃には耐えられず派手に吹っ飛ぶ盗賊。

そこからが速かった、落とした剣を拾い馬乗りなる

「うっ…おい!やめろ、落ち着けよっ、おい」

「許さないっ!」

怒りの目で見下ろし、剣を構えるバーガン




「アニキー」僕を掴んでいた盗賊もバーガンを捕まえようと動き出す。

今バーガンの所へ行かれたら、マズい。

「おい!」震えた大声を出して注意を引き付け、持っていた、魔道具を力一杯投げつける!

トンと盗賊に当たるだけだが、それで充分、僕のタックルの隙ができればいい。

「うわぁぁぁ」力を込めて盗賊腰を掴みを足止めする。

「クソガキ離しやがれ!殺すぞ」

「離さないっっ!」



「うぉぉぉぉぉぉぉ」

ドスっとバーガンが盗賊の胸に何度も何度も剣を突き出す。




血が飛び散るのを見た盗賊が

「チクショウ、ぶっ殺してやる!」

しまった!振り解かれた


「バーガン!後ろ!」

気づいたバーガンが立ち上がりと盗賊のつば迫り合いが起こる!

「アニキの仇だ!死ねぇぇぇ」

「くっ!うぅぅぅぅ」

ギチギチギチギチと少しずつバーガンが押し負けていく。



「カイン!これを」手を縛られてるスピカに呼ばれ彼女の足元を見ると、教室でルーナに突きつけたナイフが!そうか、さっき飛ばされたんだ。

そこからは無我夢中だった…ナイフを拾い、盗賊に背中にナイフごと全体重をかける。

「うがっっ…てめぇぇぇ」

「バーガンんんんん、今だっ」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

バーガンが盗賊を切り伏せ、盗賊は倒れた。




「「はぁはぁはぁはぁ…」」

息を整える、心臓がバクバクいってる。

「カイン、やったな!」

返り血で真っ赤に染まった腕でバーガンが親指を立て、僕もそれを返した。


「ルーナ大丈夫か?」

「あ、ありがとうバーガン」

「スピカ助かったよ」

「こちらこそです、それより早く逃げないと」

「一旦村を出るぞ、森を抜けて隣村まで行こう」

ルーナとスピカの背後に周り縄をほど

「4人ならきっと大丈夫です。」

あぁきっと大丈夫だ、脱出に一筋の光が見えた。











ドスッ






「ありがとうバーガン……えっ…」


腕の縄が解け、振り返るルーナ



「うぅ…ぅ」


ポタっ…ポタっ…ポタっ




と水滴が落ちる音がした。


「やだっ…」


返り血で真っ赤になった胸から、ドス黒い刃がバーガンを貫通していた…



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」








悲鳴で僕とスピカが目をやる…


は…?

嘘…だろ…



あいつだ…


バーガンに蹴られ倒れていた盗賊。





「ガキが!2人も殺っといて、タダで済むわねーだろうがよ」




「「バーガン」」


「来るなっ!!!げほっ…カイン逃げろ!お前はスピカを守るんだよ」

「でもっ…」

「うるせぇ!俺の…親友は何があっても約束は絶対守る奴だ…そうじゃねーのかよ!?」


バーガン助けたい…でもあの出血じゃ無理だと分かってしまってる自分がいる…

悔しくて…悲しくて涙が止まらない…




「カイン!走れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」



「くっ…」

スピカを手を引っ張って走り出す。

ごめんバーガン…ルーナ…

何で僕は魔力がないんだ…魔法使いじゃないんだ…僕はなんて無力なんだ……くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ










「おい、捕まえろ!」

騒ぎに気づいてアマンが出てくるが、その時に2人は暗闇の中に消えつつあった。



「げふっ…」

胸から剣を抜かれルーナに倒れ込むバーガン

「やだぁ…バーガンっバーガンっ」

「ル…ナだいじょぶか…?」

2人が抱きあう。

「うんっ…うんっ!」

「おま…えは…なにが…あっても…いきろ…よ…」

「うん…」

「へへっ…」


そしてバーガンが安らかな笑みを浮かべ眼を閉じた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「どうして殺した?」

激昂するアマン

「でも2人仲間をやられたんですぜ?」

「お前達みたいなゴミとは価値が違うんだ、クソっ、バーガンの価値は金貨25枚だぞ、下手すればもっと上がってた」

商品を台無しにされ、舌打ちをしながら命令する

「さっさと中央広場に行ってジャーメルさんに報告してきてください。絶対に逃すなと、スピカの価値は金貨100枚はくだらない」

「は、はい!」

急いで馬にまたがり走り出す盗賊。





「先生…お願いがあります。」

ギロリとルーナを睨みつける

「バーガンを…学校の中に連れていってもいいですか?」 

「立場をわきまえろよ!」

ドスの聞いた声に怯えながら

「もう逆らいませんからっ…言う通りにするから…お願いします…」

しおらしく頭を下げるルーナに少し考えて

「分かった…職員室に置いておけ」

美人のルーナの価値は金貨100枚、これ以上予定を狂わされたくない。


また舌打ちをしてルーナと職員室へ向かった。





























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