収穫祭 【罠】
僕達は暗闇の中、学校までたどり着いた。
アマン先生が先頭立ち廊下を進む。
静かに歩いてもギィ…ギィギィと軋む廊下が不安と掻き立てていく。
教室に到着するとアマン先生の指示のもとに
本来なら今日はここで子供だけの夜更かしパーティーをする予定だったので、食料と防寒具はある。
僕達は窓から死角になるように教室の隅っこに固まって座り込む。
「私は助けを呼んで来ます。皆さんはここで隠れていてください、大丈夫絶対に助かります!」
教卓の前で
「ルーナ、バーガンあとは頼みましたよ、私が出て行ったら
そうして…先生が教室から出ていった。
それから30分経っただろうか…不安と恐怖で体感時間は何倍にも感じられる。
「お姉ちゃん…」「大丈夫だからね」
僕達4人は小さな子に寄り添って励まし続ける。
「先生まだかなぁ…」僕の隣の男の子が不安そうに震えている。
窓の方を見てみるが何も分からない…
音も何も聞こえない、聞こえるの時計の針がカチッカチッと動く音とみんなの呼吸音だけ…音…何も聞こえない…?
「静かすぎないか…?」ふと疑問が口から溢れた。
学校に来るまでは叫び声や巡回している盗賊の声のせいで心休まる暇がなかったのだが。
よく響く馬の
よく考えろ…ヤバい…あれっ…考える度に頭がボッーとする…
バタっと横から体重を乗せられ、正気を取り戻す。
横では涙を流して眠っている男の子の姿、疲れて眠ったのかな。
目を擦りながら視界を上げると、みんなが目を閉じている。
「バーガン!ルーナ!スピカ!」
強めの声を張り上げると3人だけが気づく、どうやら浅い眠りだったようだが、他の子達はゆすっても起きる気配がない。
「悪りぃ…なんか身体が」
「私も眠くなってきて…」
「私も…」
何かがおかしい…立ち上がり教室を見回しなから歩いていく、黒板の方に近づくと教卓の下に
恐る恐る覗くと何か小さい壺みたい物が置いてある。顔を近づけると甘い匂いがして力が抜けそうになる、これは…もしかして魔道具!?
「バーガン!窓とドアを開けろ!?」
「はぁ!?」
「いいから早く!」
切羽詰まった僕を見てかバーガンは素早く扉をを開ける。
「バーガン、ルーナ、スピカ!」
3人を廊下まで呼ぶ
「これが教卓の下あったんだ、たぶん眠らせる薬が入ってる」
「確かに変な匂いがするわね」
「俺もさっきまで変な感じだったけど、廊下に出てから治ったから本当かもな」
「そうですね…でもなんでこんな物が」
4人が同じことを考えただろう、こんなことをできる人物は一人しかいないと。
子供が沢山逃げたのに探しにこない盗賊。
助けを呼びに行くたって隣村までは馬で2時間以上かかる距離だ、明かりも馬もないのにどうやって。
そして僕達に教室から出るなと念押した…
ギーギィ…ギィ…
ギィギィギィギィ
音の鳴る方に顔を向ける
「やれやれ、バレるとは思ってもみなかったですよ、世の中うまくいかない物ですね」
薄笑いを浮かべるアマン先生がそこにいた。
「先生、なんで?」
スピカの糾弾に先生は顔色ひとつ変えずに
「なんで?ってお金儲けですよ!3年もかかりましたよ、村の皆さんの信頼を獲るのに」
「金儲けってなんだよ、俺達は先生を信じてたんだぞ」
「信じてたんなら、大人しく眠っててくださいよぉ、僕も教え子には乱暴したくないんですから、君達は大事な商品ですからねぇ」
異様な笑みを見せる先生
「どう言う意味よ!」
「文字通りですよ、子供の奴隷は高く売れるんですよねぇ。それに文字書きや勉強ができるほうが人気商品になるんで先生として鼻が高いですよ」
先生の狂った本性に
「殺されないだけありがたいと思ってくださいよ。今頃、大人達は皆殺し!この村は今日で終わりなんですから」
「ふざけるな!!」バーガンが先生に向かい殴りかかる。
「よいしょっと」腕を取り、いとも簡単にバーガンを投げる先生
「うわっっ」「「「バーガン」」」
「この時代、護身術ぐらいはできませんと商人としてやっていけないんでねぇ、さぁ大人してください、さもないともっと痛い目に会いますよ」
バーガンでさえあんなに軽々と僕には抗う術はない、それに足の震えが止まらない。
さらに追い討ちをかける様にギーギーギー音立て先生の後ろから3人の盗賊が現れた。
「アマンさん、馬車の準備ができましたぜ」
「ご苦労様です。少し予定が狂ってしまいましてね。この子達を捕まえてください、商品ですから優しく頼みますね」
「了解っス!ガキ共大人しくしろよ」
突進してくる3人の盗賊に
「みんな逃げるぞ!」バーガンの号令のもと教室に戻り窓からの脱出を試みるも
「キャアァ」
「やめてぇはなしてぇ」
ドレスの為にいつもと違う靴を履いていたのが仇となってしまい、スピカとルーナが捕まってしまった。
「おい、ガキども分かってんだろ?」
ルーナの首元に短剣を突きつける盗賊
「うっ」ルーナが苦悶の表情を浮かべるのを見て
「分かった…」バーガンと僕が観念した…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます