収穫祭 【襲撃】

5分程だっただろうか…花火が夜空に消えていく

村人達は名残惜しいそうにパチパチパチパチ…と小さな拍手をする。


皆は初めて見た花火に感無量になっていた…










ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!


なんだ?地響き?





向こうで松明たいまつの光が見える…1つ2つではない5、6…いやもっとだ…


馬が数十頭こちらにやってくる


何がなんだか分からなかった…ある人は幽霊に、ある人は何かの余興、ある人は花火を見て違う会場から急いで来た村人だと思っただろう


皆が立ちすくんでいる中

1人、村の自警団のおっちゃんが気付いたようで正面に立ち、声を荒げる。

「な、なんだ!?お前たち止まれいぃぃ!」


そう叫んだ瞬間…




首が宙を舞った




ポトン…と地面に落ちたと同時に



「「「きゃあああああああああああ」」」


止まっていた時間が動き出す。


「ハッハハハオラオラ逃げろ逃げろ!」

「ヒャッホーウ!!」

馬上の男達から次々と斬られていく村人

「やめてぇぇぇ」「ぐはぁぁぁ」「助けてぇぇ」

「逃げろぉぉぉ」「あぁぁぁ」


阿鼻叫喚な地獄の光景に僕は動くことができなかった…


「若い女と子供は殺すなよ!あとは逃すんじゃねーぞ!」

先頭の長剣をもった無精髭ぶしょうひげの男が吠える


「お父さーん!お母さーん!」「わぁぁぁぁぁ」

僕達の周りの子も泣きだしたりパニックになる。


バーガンもルーナもスピカも目の前の光景に青ざめている。

「しっかりしてください皆さん!逃げますよ、着いてきてください!」

アマン先生の一言で固まった身体が動き出す。


幸い今居る席が広場の端の方だったため、まだ敵は気づいてない。


「足元に気をつけて、学校の方に逃げましょう」

光とは真逆の闇の方へ腰を落として進む。

小さい子は先生とバーガンが抱き抱えて、ルーナが平静を装い、手を繋ぎながら学校へ向かう。

見つからないよう音を殺している分、周りの悲鳴が耳に入ってくる…怖い……どうやら他の会場でも同じようなことが起きているようだ…


「止まれっ!」

先頭バーガンが息漏れ声で指示する

みんながビクッとなり更に姿勢を低くする。



「まったく今回は楽な仕事だよな、依頼主も太っ腹だしよ」

「ちげぇねえ!早く終わってご馳走にあり付きたいもんだぜ、予定通りならあと30分ぐらいだな」

馬に乗って巡回している2人組が通り過ぎた。

予定通り?この襲撃は前々から計画されていたのか…


「よし、行こう」バーガンの合図で再びボロボロの学校へと進路を取った。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


中央広場では盗賊による虐殺が行われていた。


抵抗する男達もいるがこの場所では武器もなく、酒も回っていては手も足も出ず、一人また一人倒れていく。

これが祭りの襲撃でなければ結末は変わったのかもしれない…



「やめてくれぇぇ!金ならある!だから皆の命だけは…頼む」

バロックがステージから懇願する。


「そいつはできない相談だ、俺達【あぎと】は依頼主からの仕事はキチっとこなすんでな」

ニヤニヤしながら無精髭の男がステージまで上がってくる。



「全くこんな不始末をしでかしおって!どう責任をとるんだバロック村長!」

護衛に囲まれている男爵が怒りをあらわにする。

「どうか…ワシの命で勘弁してくれ…皆には手を出さんでくれ…」

土下座をして懇願こんがんするバロックに対して


「アッハッハッハハッハッハハッハッハ」

突然、男爵の息子ロディが爆笑する。

「ハッハッハ…凄いね、村長の土下座なんて初めてみたよ!おいジャーメル許してあげなよー♪」


「軽口を叩きよって、黙っておけと言っただろうに」

「でも父様〜、嘘はもういいじゃない、これでこの村は僕達のモノなんだし!」


その言葉にこれが仕組まれた事だと理解したバロックが涙を流しながら男爵に問い詰める。

「なぜだ!?なぜこんなむごいことを…」

「バロック村長、貴方が悪いんですよ。ここの作物、家畜はもっと利用価値があるのに、独り占めしよって、今後はワシが有効活用してやるから、貴公は安心して天国に行くがよい」


男爵の言葉にバロックが激昂し飛びかかる

「貴様ぁぁそんな事の為に人の命を!!」


「ひぃぃ!!」

バロックの剣幕に押されて男爵が震えおののいた瞬間



グシャッ

ジャーメルの刃がバロックを斬り伏せていた。


倒れながら

「あぁ…みん…な…ス…ぴ……か…」

そう呟き…偉大な村長は呆気あっけなく事切れた


「さっすが長剣のジャーメル、一撃じゃん!」

「からかわないでくださいよ坊ちゃん、さぁ貴方達は村長宅で待機を、終わったら呼びに行きますんで」


護衛ともに男爵が移動するのを見届けるジャーメル


ステージ上から見下ろすと中央広場は死体の山になっていた。

「おかしらぁ!こっちは大体終わりましたぜ、何人か逃げた村人がいるんで半分は捜索に当たってます」

「上出来だ!他の広場の連中にも伝えろ!奴隷になりそうな奴が入れば中央に集めろ、あと死体は後で燃やすから一箇所に固めておけ」


部下に命令し、バロックの服のポケットを漁る

「村長の癖になんもねぇな…こいつ。

おいラスティお前も手伝えや」

椅子に座って酒を飲んでいるラスティに小言をいう。

「やだよ、こっからは血の顎の管轄かんかつ。僕の今日の役目は信号弾を上げるだけ」

「相変わらずだなお前は…」

死体を担ぎステージから放り投げるジャーメル


「お頭ぁぁ、大変です」部下達が慌てて来る

「ん?なんだぁ?…………

おいラスティもう一個やって貰うことが増えたぜ。」



面倒な事が増えてラスティはしかめっ面を浮かべた。


































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