収穫祭前日2

中庭に入ると広場同様に皆忙しそうに準備している。

真ん中の大きな噴水を中心に長いテーブルが並べられている。


こちらは広場とは違いちょっと高級な感じで、ご丁寧にテーブルクロスなんかも敷かれている。

ハンスが言うにはたしか男爵が来るんだっけ。


バーガンの案内で大工仲間の所へ行き指示を仰いでいると

「カインーー!!バーガンー!」

屋敷の上の方から声が聞こえる。顔を上げると

「カインー!」

スピカが窓からぴょんぴょんと飛び跳ね手を振っている。

「スピカー!」っと手を振り返すと、窓から顔を引っ込め、駆け足でこちらにやってくる。


「はぁはぁ…来るなら言ってくださいよ。」

「本当は広場だったんだけどよ、親父にこっちに行けって言われてさ」

「そうなんですか!じゃあ私も手伝います!」


ノリノリなスピカだが

「秘密基地じゃないんだし、流石にここでは手伝わせれないよ」

「そうそう村長の娘をこき使ってバレたら親父からのゲンコツじゃすまねーよ」

「そうですよね…」

落ち込むスピカにバーガンが

「まぁ、話し相手にはなってられるさ、カインが!悪りぃな、向こうで問題があったらしいから行ってくる、じゃあな2人とも」


どうやら大工として頼られたのが嬉しかったのだろう、ニコニコしながらバーガンが走っていく。


とりあえず何もしないわけにはいかないので、屋敷の人に聞いて、飾り付けのリースを作る仕事があるらしく手伝うことになった。


中庭の小さな丸テーブルに向かい合って腰掛ける。

もちろん僕だけがリースを作っていく。



するとすぐに

「おぉカイン来ていたのか」

バロックさんがこちらにやってくる。

いつもはぶかぶかなズボンにタントップと農作業優先の服装をしてるのに、今日はシャキッと礼服姿だ。


「バロックさん、こんにちは」

「よかったなぁスピカ、カインがこっちに来てくれて」

「は、はい…」


ともじもじしながら答えるスピカ

「なんだ?いつも嬉しそうにカインのこと話すじゃないか?」

「もう!お父様ったらっ…確かに話してますけど」

顔を赤くする。

「ハッハッハッ、照れるな照れるな」

豪快に笑うバロックさん。

フランクでみんなから好かれている村長、タリックおじさんと飲み友達の為、僕のことも可愛がってくれている。


「すまんな、いつもなら準備も手伝えたんだかな。今日は客人がなぁ」

「いやいや、仕方がないですよ。その服似合ってますよ。」

「ハッハッハッお前も冗談言う歳になったかぁ。本当は客人なんて来なくていいんだかなぁ、男爵の頼みじゃ断りきれん、あっ、この事は内緒でな。ではあとは若いお二人でごゆっくりなぁ」


笑いながら去っていくバロックさんに

「もうっ!」っと照れながら怒るスピカだがこの2人のこんなやりとりは日常茶飯事にちじょうさはんじである。


それから2人で雑談しながらリース作りに励んでいたが、僕はあまり器用ではない為、上手く結べなかったりするとそれだけに集中してしまい、会話が途切れてしまう。


「よしできた。あっ、スピカごめんなんだっけ?」

「いいんですよ、見てるだけで楽しいですから」

テーブルに頬杖をつきながら上目遣いで見守るスピカに甘えさせて貰い、僕は難しい部分をこなした。


しばらくして屋敷のメイドがスピカを呼びにきた。

「カイン行ってきますね」スピカの顔付きが変わる、どうやら男爵が到着したみたいだ。



それから30分経っただろうか、ノルマをこなして作ったリースを飾り付け班に持って行く頃には中庭のほとんどの準備が終わっていた。



中庭が明るい夕日を照らされだした頃



屋敷の奥からゾロゾロと貴族様御一行が現れた。


















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