秘密基地

秘密基地は20分と少し歩いた村外れの林の中にある。

誰も立ち入らない場所、ここらの地方では人を襲う狼とかも少なく、村の大人達も放任主義なので、僕たちは自由に秘密の場所を作ることができた。


「カイーン遅いぞ!」

近くまで行くと、上の方から声が聞こえる。

屋根の上でバーガンが作業をしている。


薄暗い林の中、木漏れ日に照らされている秘密基地はツリーハウス!

固まった4本の木の間に4人で小さな家を建てた。

そこから階段を作り着工から1年で秘密基地が完成した。

「ごめん遅くなった」

中に入るとスピカとルーナが羊の毛を縫い合わせて絨毯じゅうたんを仕立てている。

「カインは今日そこの壁の補強ね」

「ガッテン!親方!」

「誰が親方よ!」

そんなやりとりをしながら持ってきた木材と大工道具を準備する。


完成と思ったツリーハウス、夏の頃は隙間風がいい感じに入り込み最高だったのだが、秋に差し掛かかって気温が下がり、このままじゃ冬が越せないとなり、再改修が始まったのだ。

トントンと釘を打ちつける。余った木材なので出来上がりは歪だが、それがいいアクセントになってる!………と思う!


「ルーナここはどうやるの?」

「ん?あぁここはね…」


トントントントン


「カイン、釘持ってきてくれー」

「はいはーい」


黙々と4人が作業する、沈黙でも全く苦にならない。


1時間が経ち


「よし、今日はここまでにしましょう。」

ルーナが声を上げると

「じゃあ私はお茶を淹れて来ますね」

「僕も手伝うよ」とスピカと階段を降りて焚き火を起こす。


夕焼けの見えてくる時間なのでちょっと寒い。

カチッカチッと火打石で火を起こすがなかなか付かない、こんな時に魔法が使えればなと考えてしまう。

5回目で着火して枝を焚べ火を大きくしていく。

「はぁ〜あったかい」

スピカと2人で手を出して温まる。

「あっカイン、指っ怪我してるじゃないですか!」

「あぁさっき木で擦れただけだよ」

「ダメっ!血が出てるでしょ、バイ菌が入るじゃないですか、手を出して」


手を出す前にスピカに詰め寄られ手を取られ、

慣れた手つきで包帯を巻かれる。

「あ、ありがとう」

「怪我したらすぐに言って下さいね」

優しい笑顔のスピカと指の包帯を見て嬉しくなる。


お茶を入れてツリーハウスに戻ると、バーガンとルーナが2人で一緒に大きな毛布にくるまってテーブルの前に座っている。


寒い日はいつも男同士、女同士で包まるのに

「カーインー、なんかルーナがお前とスピカをいっしょっグハァ…」

毛布の中でボディブローが決まったのが表情で分かる。


「あれよ、あれ、男共は身体が大きくて毛布からハミでていつも寒そうだから、可哀そうだなぁっと思って、そういうことよ、分かった!」

めっちゃ早口でまくし立てるルーナに

「確かに頭良いな、さすが」

単純に納得してしまう。

僕とスピカと一緒に毛布に包まる、本当だスピカとだとサイズが丁度いいな。

「大丈夫スピカ?顔赤いよ」

「は、はい大丈夫です…」

外に出て冷えてしまったのだろうか、もっとくっついたほうがいいな。


「ルーナ何ニヤついてるんだ、気持ちわりぃなグファ」

向こうでまたいいパンチが入った。


スピカが淹れてくれたハーブティーを飲みながら、今後の改修計画、収穫祭のことなどを中心に雑談し、空が夕闇に包まれるころに僕達は秘密基地を後にした。





家に着くとみんなで美味しい晩御飯。


そして寝る前に学校で借りた冒険譚ぼうけんたんの続きを読もう。


これが僕

シルト村のカイン•ナーヴの幸せな一日だ。
















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