シルト村での生活2

お昼までの授業が終わり、帰宅の準備をしているとルーナが

「2人は来週の収穫祭、なんの仮装するのよ?」

「言うわけねぇーだろ、当日の秘密だよ、秘密」相当自信があるんだろうバーガンが偉そう答える

「なんだろ、おばさんからまだ聞されてないや」


収穫祭、村全体が立食パーティーのようになり、作物に感謝し食べてや騒ぎ、女性は着飾り、男は仮装をする。

僕の仮装はおばさんが仕立てくれている。

「今年もカインには期待してるわよ」

去年は豚の着ぐるみを着て皆に笑われたっけ。

「おばさんに動物の仮装は嫌だっていってあるよ」

「ブタさん可愛かったのにもったいないです」

スピカが残念そうだ。


「じゃあ、3時に秘密基地に集合ね、男共はちゃんと資材持ってくる事!」

ルーナが仕切り、解散となる。



自宅に帰ると、ちょうどメリダおばさんのお昼ご飯のいい匂いがする。

今日の献立は野菜スープと焼きたてのパン、屋敷の頃に比べればかなり質素だが、お世辞抜きに味はメリダおばさんの料理は美味しい。

野菜なんて大っ嫌いだったけど、シルト村の野菜は美味しさが違う。おかげでこの村の子供に野菜嫌いはいない。

人がいいタリックおじさん、メリダおばさんに惹かれてか、雇われの従業員の5人もとても優しくしてくれている。

8人で食卓を囲むと、学校のこと、果樹園のこと、収穫祭のことと話題が尽きない。


昼食を済ませると、僕は果樹園の隅の作業場に向かう。

僕と従業員の下っ端のハンスとロビンでワインの樽作りだ。


「今年の収穫祭はウェニアス男爵が来るらしいな」

おしゃべりなハンスが手を動かすよりも早く口を動かす。

「客人とは珍しいな、村長が呼んだのか?」

ロビンが聞き返すと

「そんな訳あるかよ、どうやら村の作物をもっと流せと催促しに来られるんだとよ、男爵様だから無下にはできねぇだろ」


シルト村の村長つまりスピカのお父さん、バロック•シルト村長はとても優しくて優秀な人だ。作物を大量に作らないのも、連作障害で土が痩せてしまうかららしい、アマン先生から習った。村の皆が困らない分の食料とお金があればそれでいい、が口癖の立派な村長。


「でもバロックさんなら断りそうだけど」


「だといいんだけどな、特に村のワインとシードルがお気に入りなんだとよ、俺は他ん所のワインなんか飲んだことないけど、それに関しては作ってる身としてちょっと嬉しいよな」


ハンスがニヤつきながら樽を組み立てる。

僕も何個か組み終わると、荷車に乗せて、醸造場じょうぞうじょに運ぶ。


醸造所ではおじさん達が樽の大移動をしている、どうやら収穫祭で飲むワインを準備しているようだ。


「おう、カインか、そこに樽を並べるから手伝ってくれ」

指示通りに荷車を引き、皆で樽を持ち上げる。

「だいぶ上手く作れるようになったな」

とおじさんが嬉しいそうにチェックする。

「えへへ」と思わず笑みが溢れてしまう。

初めの頃はガタガタでワインが漏れまくってたんだよなぁ。

「収穫祭が終わったらワシの醸造の全てを教えるからな、頼むぞ!」


それを聞いて嬉しさで満面の笑みになる、要するに今までの雑用から次のステップに移れるってこと。

「よかったなカイン!」と従業員も褒めてくれている。


ご機嫌のまま午後の手伝いが終わり、使わない木材と大工道具を持って僕は秘密基地へと向かった!














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