一章
シルト村での生活1
「おじさん、おばさん行ってきまーす!」
僕が元気よく家出ると
「おう、いってらっしゃい」
「いってらっしゃーい」
初老の夫婦もそれに負けずに送ってくれる。
あれから2年が経った
僕ことカインはサンファーナル領、最北のシルト村のナーヴ家に引き取られた。
没落貴族の4男を引き取った事になってるらしく、タリックおじさん、メリダおばさんには僕が領主の息子だとは知らない。
2人ともとても優しくしてくれていて、こうやって学校にも行かしてくれる。
学校といっても生徒は十数人しかいなく、屋敷の時の家庭教師と違い、簡単な読み書き、計算と歴史が少しと大量の農業知識が主だ。
なんで農業知識かって?そう!このシルト村を支えているものそれは農業。
様々が農作物が作られている畑、牧場が主な村だ。
ナーヴ家も大きな果樹園がありお酒になるブドウ、リンゴを育てている。
僕も昼までの2時間勉強して午後からはナーヴ家で雇われている従業員とともに果樹園の手伝いするのが日常だ。
不思議なもので屋敷の頃の泣き虫だった僕が嘘のように、身体面でも精神面でも成長したと思う。
もうすぐ収穫の時期だなぁ、とそんなことを考えてると学校に着いた。
お世辞にも綺麗とは言えない学校だ、廊下はギーギーなるし、机もガタガタ、教室も2つしかなく、1つは先生の住居になってる。
「おはよう!」
「あっおはよう」「カイン兄ちゃんおはよー」
などと
教室に入ると8歳から13歳のクラスメイトが迎え入れてくれる。
僕は後ろの自分の席に着こうとすると、スッと足を掛けられる。
「おっとっとっ…」バランスを崩すものの足を踏ん張る
「何やってんだよバーガン」
「なんだよぉ派手に転べばウケたのによぉ」
悪りぃ悪りぃって感じで笑っているのは僕と同い年の親友のバーガン、最初はグイグイこられて距離を取ってしまったがこれが彼なりのコミュニケーションの方法で、僕もこの厚かましさの犠牲になった一人である。
「アンタたち…いつも楽しそうね。もう先生来るわよ!準備しなさいよ」
2人間に入ってきたのはルーナ、最年長の13歳でこのクラスのリーダー
僕が慌てて席に着くと「おはようございますカイン」と可愛い声で挨拶してくれるのが隣の席のスピカ。
12歳でシルト村の村長の娘だ。
「あぁおはようスピカ!」と返すと彼女はにっこり微笑む。
この3人は初めての友人でもあり、歳も近いこともからいつも4人で一緒にいる。
そこへギーギーと廊下が軋む音が聞こえその合図と共に皆が静かになり同時に先生が入ってくる。
髪がボサボサのアマン先生。
もとは行商人だったらしいのだが、シルト村の魅力にやられ居着いてしまったらしい、歳はピチピチの35歳だそう(本人談)
「みんなおはよう、そろそろ秋の収穫時期だねー、しばらく学校は秋休みになるけど、いつでも会いにきていいよーん」
「えー」「やだよー」「先生も手伝え」などの笑い声で教室が満たされる。
「はい!今日は前やった王国の歴史の続きね」
先生が黒板に文字を書いていく、教科書も紙もなく、ただ聞くだけの授業だ。
でもこの日常がとてもかけがえのない物だ。
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