追放

暖かな光を感じる

意識が朦朧もうろうとしている中、うっすらと母様の泣き顔が見える。

大神官であった母様の治癒ヒールで身体の痛みが楽になって行くのが分かる

ただ頭がぼーっとして、母様の何を言っているのか分からない、だけれど僕を心配していることぐらいは分かる



そして、これでお別れなのだと…

最後に母様は僕を抱きしめ、頬にキスをする


あったかい

安心する

そしてまた僕は眠りについた






それからと言うもの

僕は2日部屋に軟禁された。

どうやら約束通り家族との縁は完全に切れてしまったらしい。


2日目の夜に父様とクラウス先生が訪れて


「お前の次の家が決まった、出発は明朝、遅れるな」

とだけ告げて出て行った。

まるで他人と話すような父様の口ぶり、まぁ他人になったんだけど、愛情のあ、の字も感じらない


ベットに入って眠りに着こうとすると同時に10年間のこの屋敷で暮らしたことを思い出す

嫌なことが沢山あった、でもいいこともあった

な。整理できないグチャグチャな頭の中で、最後の夜は明けた。





朝、着替えて使用人が持ってきた朝食を済ませる。

8時に屋敷の玄関に来いと言付けを貰ったので、時間5分前に部屋を出る


「ん?」

とドアノブに引っかかっている物がある

母様のロケットペンダント

小さい頃に母様にねだった覚えがある、その度に「これは母様のおまもりなの、そうねカインが大きくなったらあげる」と言われていた。


僕はそのペンダントを手に取り、首に付け、服の中にしまい込む。



進もう!気持ちの整理がついた。目付きが変わる、ゆっくりと堂々と歩みを進める。


屋敷のエントランスに家族と使用人が並んでいる。


皆表情を変えずに僕のことを見ている。母様もレイネ姉様もだ。どうせ父様、いやもう父様ではないなオーガス•サンファーナルにでも言われたんだろう。リベルだけはニヤニヤしてるが。

使用人が扉を開けてくれると、小さな馬車が見えた、普段の移動には利用しない庶民の馬車


僕は馬車の前まで進むと振り返り

「今までありがとうございました。」と一礼


誰も反応しない。でもこれが気持ち、家族と使用人への感謝の気持ち

また振り返える瞬間に母様が口元を抑えているのが見えた。


泣くな僕、絶対に泣くな!目をカッと見開き馬車に乗る。

御者ぎょしゃが馬に合図をし、ゆっくりと動き出す。

振り返らない絶対に、弱い僕は出てくるなと心の中で押さえつける。

それは屋敷が見えなくなるまで続いた。

誰も言葉を発しない、静かな静かな旅だち

ただ馬の蹄の音だけが響くのであった



10歳の誕生日から4日後

僕はサンファーナル家から追放された















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