再び

 「みさき!」

友里が駆け寄った。


「あ、大丈夫。ちょっと低血圧的な感じになっただけだから。」


立ち上がったみさきは、黒髪、黒い瞳のいつもの姿だった。


友里がみさきに軽く抱き着いた。

「驚いたわよ。阿久津さんは軽くキレた感じだったけど、みさきは完璧にキレた、というより覚醒したって感じ? 大丈夫なの?みさき?」


「うん、ありがとう。大丈夫。なんだか体の芯が熱くなった感じがしてたの。私ってキレ体質だったのかしら。まぁ、何とかなったのだから良かったってことよね。それよりみんな、お疲れ様。少し休憩しましょう。」


「敵艦隊全滅させといて、キレ体質って軽いものじゃないでしょう。絶対、これがみさき会長の本質なんですよ、めっちゃ怖かったですもん。だから彼氏もビビッて逃げたんじゃないですか?」

拓海が軽くからかった。


「逃げてません! ちょっと冷却期間をおいてるだけですっ!」

みさきが右足で床を蹴った。


「それよりみなさん、お腹がすきませんか? 大和、軽食って出来るのかしら?」

みさきは話を逸らそうとしたのか、本当にお腹が空いたのかわからない、得意の天然系の発言をキメてきた。


「報告です。緊急発進だったため、生鮮品は積み込んでませんが、非常食が備蓄されてます。缶詰のクッキーと温かくした缶コーヒーでは如何でしょうか。」


「大和、それ良いわ、それお願い。」


艦橋のエレベーターが開くと、配ぜん用のロボットが缶詰のクッキーと熱い缶コーヒーを乗せたトレーを持って出てきた。


全員クッキーとコーヒーを持って床に車座に座った。

戦闘の話を避けるかのように、おとなしいキャラに戻りつつある阿久津を恋バナでからかっている。

阿久津も陰キャなりに応戦していたが、阿吽の呼吸の生徒会チームには全く歯が立たなかった。


 約2時間後、AIの報告が声が響いた。


「報告です。レーダーに連邦本部を捕らえました。」


「着いたわね。大和、連邦本部のズームした光学映像を映してもらえる?」

みさきが指示した。


まだ遠いために、かなりボヤけた映像だが、陸上は黒い霧に覆われていた。


「あぁ、やはり黒い霧に覆われてる。学園島が暗闇になった時と同じだ。これが通信障害の原因ね。でも、辿り着いたわ。」


「警告です。本部周辺海域にグロワース艦の艦影25。グロワース艦隊は輪形陣。」


「まだ、終わってないってことね。ここからが最後の仕上げね。」

みさきが言い終わると同時に両目をぎゅっと閉じた。


大きな深呼吸をし終わると、大きく目を見開いた。

みさきの髪色が金に、瞳が燃えるような紅色に変わっている。


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