第34話 没落令嬢の従者の一日(2)
「セータイカンチって、リュリ姉ちゃんのこともずっと監視してるってこと?」
最年長六歳のフレドの疑問に、コウは残念そうに首を振る。
「いえ、感知機能は視力の届く範囲までです。ただ、リュリディア様とコウは血の契約で繋がっていますから、リュリディア様に何かあればコウにも伝わります」
「伝わるって、例えば?」
「リュリディア様が死んだ瞬間、コウも死にます」
「なにそれ、
子ども達もドン引きだった。
「そのような事態にならないために、コウはいつでもリュリディア様のお傍にいたいのですが、あまり構いすぎるのもリュリディア様の独立心を傷つけてしまうようで……」
「わかる! 親離れ、子離れって難しいよな」
「オレも。ありがたいけど、時々かーちゃんがうっとうしくなるもんなぁ」
外見二十代の従者の悩みに、フレドと五歳のコリンが同意する。二歳のバーバラもにこにこ頷いている。
「でも、そういうのって時が経てば慣れるものよ。あたしもちょっと前まではパパがお仕事行くとき泣いちゃったけど、今はちゃんとお迎えに来るまで待ってられるもん」
自らの経験を元にアドバイスをくれるミキは、四歳ながらしっかりしている。
「そうですね、待つのも信頼のうちですね。皆様、ありがとうございます」
合成魔獣は人の言葉を真摯に受け止め、深々と頭を下げた。リュリディアと同じく、『アレスマイヤー』という常識の中で育ってきたコウにとって、長屋での生活は刺激的で学びが多い。
「で、何して遊ぶ?」
三歳のベンが再度尋ねると、
「あたし、字を書きたい!」
ミキちゃんと同じ年のマーガレットが手を挙げる。
「この前、コウくんがあたしの名前の文字教えてくれたでしょ? 今度はあたしのお母さんの名前を教えてほしいの。そうしたら、お母さんに『いつもありがとう』って手紙を書くの」
「それは素敵ですね。マーガレット様のお母様の名前はポピー様ですね、書き順は縦線から……」
コウが地面に指で書き記す文字を、子ども達が熱心に眺める。
識字率が低いこの下町の一角で、やたらと読み書きが得意な子ども達が成長しつつあることを、まだ大人達は知らない。
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