第583話 竜よ龍よ天よ地よ
◇竜よ龍よ天よ地よ◇
「皆様!後始末はよろしくお願いしますわ!流石に天地同時は骨が折れましてよ」
複数体の
俺も遅れまいと彼女達に続く。氷に塗れその重量により墜落したとはいえ、
「見てのとおり鱗はそこまで厚くない。簡単にとは言わないが十分に貫けるはずだ!風の防壁には注意してくれ!」
俺は指示を飛ばしながらも目の前に横たわる
叩っ斬るように打ち付けた俺の剣は容易に
首もとのの致命的な箇所を切り裂かれたことで
「むう…!今更怯えても遅いです…!…その翼じゃもう飛べないでしょう…」
タルテの雰囲気に畏怖する個体もいるが、吐いた唾は飲むことができない。ある意味では無慈悲に思えるタルテの拳が強かに打ちつけられる。俺の斬撃とは違い、彼女の拳の衝撃はたとえ硬い鱗を持っていたとしても防ぎきれるものではない。骨すら砕く衝撃は確実に彼らの命に到達した。
死が間近に迫っていることに恐怖してか、あるいは氷を溶かそうとする知恵があったのか、口から炎を吐き出す個体もいる。しかし、そんな個体の前にはナナが立ちふさがり、宙を仰ぐように
「気が利いている…って言うのは少し可哀想かな。でも、利用させてもらうよ」
俺が
そして、炎を纏った
「ああもう!避ける個体が出てきましたわ!…それに、向こうからも襲ってきそうです!」
「大丈夫です…!私が売った喧嘩です…!受けて立ちましょう…!」
メルルが落とした個体を片っ端から仕留めて回っていたが、とうとうメルルから限界の声が発せられた。群れの密度が下がり、更には攻撃による混乱も収まってきたことで、メルルの魔法が当たらなくなってきたのだ。
そして吼えて挑発する竜鎧を纏っているからか、最初の標的に選ばれたのはタルテだ。彼女はそれを感じ取り、まるでレスラーのように堂々と迎え撃つために仁王立ちしてみせた。
上空から体当たりをするように飛来した
誰もが見て分るほどの体重差があるために、タルテの両足は石舞台の床を割りながらゴリゴリと後退してゆく。しかし石の床が容易く破砕したのは、何も
「…掴まえましたよ…。…今度は…!私の…!番です…!」
再び空に飛び上がって逃げようとしてももう遅い。彼女の足は大地に確りと固定されているし、なにより彼女の万力のような手が
「アリウープダンク…。まさか…あの身長で、バスケの才能もあるのか…」
前々からタルテに野球の才能があると感じていた俺は、その動きについ言葉を漏らしてしまった。スポーティーにすら感じるタルテの洗練された動きは、龍としての格の違いを俺らや宙に舞う
タルテの武威を感じて、俺は空を飛ぶ
「ハルトさん…!まだまだですよ…!脅威が分らないお馬鹿さんとは言いましたが…、逆に言えば…それが僅かに残った竜の意地なのかもしれません…!程度の差はあれど…竜はみんな戦いに酔うんです…!」
タルテを恐れて逃げ帰ったり、あるいは標的を街に変更するのではないかと思ったのだが、どうやら俺の考えすぎであったらしい。タルテの言葉に同意を示すように、空では多重に重なった
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