第504話 紛い物の神に挑むには
◇紛い物の神に挑むには◇
「見捨てられたようだな!双剣使い!私が手伝ってやろうか!?」
少なくとも俺の返事を待つことなく弓を煎っているため、その言葉は戦場でのちょっとした挨拶の言葉なのだろう。その速射は同じように弓を構えた騎士の倍以上の速度であり、中々のキルレートを稼いでいる。
俺も負けじと迫る
「手前の雑魚より、奥の化け物をどうにかできないのかよ!あの
「わめくな。あそこまで育てたのは平地人達だろう!もはや私の知っている
俺は言い返すように弓使いに訪ねるが、奴も忌々しい物を見るような顔を浮かべて
俺の言葉に触発されたのか、弓使いが以前俺に向けた風を纏った強射を
「見たか?巨躯故の防御力に回復力。竜の目玉さえ射抜く私の弓も狙う場所がなければ意味を成さない」
「何を得意気に…。…要するにお前も手が出せないのかよ…」
「なっ…!?だったら貴様はどうなのだ!さっきから近付けもしないではないか!」
怒声と共に俺を掠めるように射られた矢をかわしながら、
火矢を見る限り延焼する可能性は低いだろうが、やはりナナの火魔法が効果的だろうか…。全てを焼き尽くすのは不可能でも、奴の回復能力と拮抗することは可能だろう。だが、そうなってしまえば奴の回復能力が限界を迎えるかナナの魔力が尽きるかのチキンレースに陥ってしまう。つまり、失敗してしまえば容易く餌食になってしまうことだろう。
「あの…もしかしたら…どうにかできるかもしれません…。わ…私とメルルさんなら…!」
「へ?私もですか…!?タルテ、何か気が付きましたの?」
俺が悩んでいると、同じように悩ましげな表情を浮かべていたタルテがそう呟いた。俺らに声を掛けているものの、タルテの双眸はしっかりと
「弓のエルフさんの攻撃を見てわかりました…!あの回復力は…取り込まれた人の魂が使われています…!」
「…そういうことですか。あの忌まわしい人形の瘤はまだ囚われた者達が残っているのですね…」
「ちょ、ちょっと…!どういうこと?まだ生きてる人が居るってこと!?」
二人の言葉にナナが慌てたように食って掛かる。しかし、ナナの問いに対してメルルは悲しい表情を浮かべて首を横に振った。
「生きるということの定義によりますが、少なくとも私はアレを生きているとは思いませんわ」
「そうですね…。あれは…死に切れていないと言ったほうが…正しいと思います…」
「つまり、一種のアンデットってことか?…確かに
俺とナナの理解が追いついたところで、タルテは何をしたいかを説明した。
だが問題はあの大樹の大蛇のお膝元まで近付き、なおかつ無防備になる二人を守る必要があるということだろう。俺はナナに目配せすると、彼女は自身ありげに頷いてみせた。
「蔦や花なら私が何とかできると思うよ。…問題はあの大蛇かな。あの質量だと燃やしきる前に潰されちゃう」
「…そっちは俺が気を引こう。最悪は二人を抱えて飛び回ることになるかも知れないが…」
二人が目的を果たせるように俺らは作戦を組み立てる。上手く大蛇が俺を狙ってくれればよいのだが、もしかしたら豊穣の力を持つタルテに惹きつけられるかもしれない。そのために少しばかり強力な風魔法を準備しておく必要もあるか…。
「あのあの…できれば…弓のエルフさんにも協力して欲しいです…!」
「は?私に何をさせるつもりだ…?そりゃ援護射撃くらいはするが…」
俺らが悩む傍らで、タルテがエルフにも何やら協力を取り付けている。あの巨躯に弓が何処まで役に立つかは解らないが、まぁ無いよりはマシだろう。タルテは弓使いから一本の矢を借りると、なにやら手元で観察した後、弓使いに差し戻した。
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