第498話 蟻の甘さを突くが如し
◇蟻の甘さを突くが如し◇
「押しとめるぞ!このままじゃ戦線が破られる!」
俺はそう声を掛けると同時に剣を巨頭の
俺は突き刺さった剣に掴まって
「あの弓野郎!本当に狙いやがった!」
迫ってきたのは一本の矢だ。まるで俺を狙ったかのような軌道ではあったが、射抜いた箇所を見てみれば、俺を狙ったのではなく
俺はその反動を利用して、そのまま
首を支える部位が破損したからか、
そのため、
「もしかして、あんな距離からこのちっちゃな目を狙ったの?」
「イブキだってこれくらいできるはずだぞ。…必要も無いのに、わざわざ俺に見せ付けるために打ち抜きやがったんだ」
地面に倒れ付した
「二人とも!可笑しな個体が次々出てきていますわ!あまり話している余裕はありませんわよ!」
死骸を検分している俺とナナに向かってメルルの声が掛かる。彼女が叫ぶのも理由があり、巨大な盾状の頭を持った個体は今倒した一体だけではないのだ。巨大な平たい頭の個体に、鋭利な角を供えた個体、顎に巨大な鋏を備えた個体など、随分と個性的な個体が姿を現し始めたのだ。
ガチンと弾けるような音を立てながらメルルに向かって巨大な鋏を持った
「随分熱烈な接吻ですこと。生憎と私の好みではありませんわ」
その鋏に挟まれようものなら人体など簡単にせん断されてしまうのだろうが、メルルは慌てずに後ろ手に円盾を構える。血で縁取られた円盾は容易く
「少々真似事になってしまうのが不愉快ですが、固い頭には効果的でしょう?」
今度は血を纏った片手剣がメルルの手元で高速回転し始める。その血には
無慈悲で鋭い回転音に危険を感じたのか、
「角は…刺さらなければ丁度いい取っ手です…!」
メルルがドリルで
突進を受け止めた一瞬の静寂の後、
宙に持ち上がった
「これが…!一石二鳥という奴ですね…!」
「…一つの投石で二羽を仕留めてるんじゃなくて、一羽を投石代わりにしてるんだが…」
ことわざの使い方に一石を投じるタルテを眺めながら、俺は小さくそう呟いた。しかし、使い方の正しさは別にして、俺らが戦闘に加わったことで綻びかけた戦線は維持された。押し留めた
だが、所詮は焼け石に水であったのだろうか。特殊な個体に苦戦していたのはここだけではないようで、広範囲で戦線が乱れ始める。そのため、俺らの後方では後退の指示となるラッパが高らかと吹き鳴らされた。
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