第226話 サロンでの感想会
◇サロンでの感想会◇
「皆さん、なにやら昨夜から王都が騒がしいのですが、もしかして例の件なのでしょうか?」
サロンに皆が集まると、サフェーラ嬢が俺らに尋ねかけてくる。彼女の言う騒ぎとは妖精たちが引き起こしたあの惨状のことだろう。
様々な人材、人種が集まる王都だけあって隠匿されていたあの現象に気付いた者がちらほらといるようだ。大半の人間にとってはいつもと変わらない日常であったのだろうが、一部の人間にとっては身の危険を感じるほどの異常事態が引き起こされたわけだ。
一晩たって、その一部の人間の緊張感が他の者にも伝播し、王都全体が妙に騒がしいのだろう。…あるいは一夜にしてハニーグールが壊滅した不自然さに騒いでいるのかもしれない。
「そうですわね。私が聞いた噂は妖精達のナイトパレードが原因でしょう。…ある意味彼らは自滅したというわけですね」
「音頭を取っていたのは、
俺らは昨夜おきた現象をサフェーラ嬢とイブキに説明する。さらに一夜明けた後、ハニーグールがどうなったかを情報屋になりつつあるホドムズに調べてもらった結果も報告する。
王都の裏社会の一角を占めていたハニーグールがどうなったか。ホドムズ曰く、不明であるそうだ。というのも、全ての構成員が昨夜から行方不明になってしまったのだ。一人二人ならまだしも、全ての構成員の所在がつかめない。彼はスラム中を調べたそうだが、未だに死体すら見つからないそうだ。
噂の中には全員で夜逃げしたなんて話もあるそうだが、妖精が暴れたことを知っている俺らからみれば、何が起きたかは想像がつく。…ハニーグールの構成員は皆、妖精に連れて行かれたのだろう。
「教会も…今はかなり騒がれているみたいです…!
「あとは学院内の関係者ですが…そちらの対応はダイン教諭に任せてしまって問題ないでしょう。これで一応は事件が解決したわけですが…」
そんなことを話していると、唐突に窓が開かれる。そして黒い何かが、俺らの集まるテーブルの上に乗り出してきた。
「あ、皆揃ってる!ねぇねぇ!美味しいの下さいな!」
噂をすれば影と言うべきか、窓から話題の主が飛び込んできた。黒猫の背中に乗った花妖精のタータは、猫の背中から飛び降りるとお菓子の周りを飛び回る。昨夜はあんな事があったというのに、お菓子第一主義者にとっては大したことではないようだ。
「ほらタータちゃん、こっちにおいで。今日はフルーツのタルトがあるよ」
ナナがすかさず自分の皿からタータの分をより分ける。すでに狙いをつけていたのか、タータはナナの台詞を聞き終わる前に、そのタルトへと飛びついた。
「どこに行ってたんだ?まさか妖精相手に事情聴取があったわけじゃないだろ?」
「んー?昨日は夜更かししちゃったから寝てたんだよー。猫ちゃんのベッドでね!」
お菓子の菓子を飛ばしながらタータがそう答える。どのようにして夜更かししたのか聞きたい気持ちがあるが、踏み込んではいけない領域のような気もするため気が引けてしまう。好奇心は猫を殺すのだ。
「あ、そうだ!忘れてた!あのね、
タータの言葉を聞いて全員の手が止まる。わざわざ呼び出すことが疑問だが、恐らくは秘密の部屋の二人が解放されるのだろう。それとも昨夜に引き起こしたことの説明だろうか?考えたくは無いが、追加の仕事の指示の可能性もある。
「角の子と金髪の子は絶対に来いってさ!よくわかんないけど!」
俺らが具体的な理由を聞こうとすると、先んじてタータが言葉を続けた。その発言で、再び俺らは目を見合した。
「角って…私ですか?」
タルテが首を傾げる。全員の視線がタルテに向いた後、その視線が今度はサフェーラ嬢へと注がれる。この場で金髪はタルテとサフェーラ嬢の二人だけだ。角の子がタルテを指すならば、金髪の子とはサフェーラ嬢のことだろう。
「タータさん?金髪の角の子ではなく、金髪の子と角の子ですか?」
「そだよー。その二人だって。あなたのことじゃないの?」
「にゃーん」
疑問に思ったサフェーラ嬢がタータに尋ねるが、呼ばれているのはサフェーラ嬢で間違いないらしい肯定するように猫も鳴いている。何故この二人が?といった疑問が、全員の心のうちで共有される。
妖精の首飾りの面子の中で最も妖精と親和性が高いのはタルテであるから彼女が呼ばれたのだろうか?だとすればサフェーラ嬢はなぜ?一応は俺らに依頼をした依頼主だからであろうか?
「…まぁ、ひとまず全員で向かいましょうか。先ほどの口ぶりからするに、私達が向かっても問題は無いのでしょう」
「それが妥当か…。前回のように女子寮が集合場所じゃなくて助かったよ」
そうなれば男の俺は近づけない。秘密の部屋ではなく懲罰部屋に送られるだろう。懲罰部屋にはファダモンがいるであろうから、ここで俺も入室するとなると気まずいことになりそうだ。
未だに
特にサフェーラ嬢は念願の秘密の部屋を目撃できる機会が訪れたため嬉しそうに笑っている。それこそ、面倒くさそうな表情をしているイブキとは対照的な表情であった。
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