第128話 ぬっぺっぽう亜種
◇ぬっぺっぽう亜種◇
「盾持ちはあの口を引き付けろ!ほかは横に回って突き崩せ!」
今までは骨の殻を背負ったような出で立ちであったが、今の
「気をつけろよ!あんまり近づくと押しつぶされるぜ!」
「聖水だ!聖水!ここで最後なんだから手持ちは使い切るつもりで攻めろ!」
その大口で噛み付こうと蠢く
「待っててくださいね…!今押さえ込みます…!」
おっさんの群れに対抗しようと
「エイヴェリーさん!これ効いてるんすか!?」
おっさん達が剣を振いながらエイヴェリーさんに尋ねる。肉の塊である
「こんなもん、端から切って削っていきゃぁ良いだろ!」
肉屋の切り売りのようにおっさんが
皮膚を剥がれた様な様相の人間の上半身が飛び出し、近づいたおっさんの腕に組み付いた。
「がぁああ!?なんだコイツ!?」
筋肉も無く、爛れた肉と骨しかない存在だが、つかまれたおっさんは悲鳴をあげる。それどころかその目は、その腕が尋常じゃないと物語っている。
「おっさん!動くな!その腕叩ッ斬る!」
俺は空中に飛び上がり、空から降り立つようにして
「ハァ…ハァ…。助かったぜ…、妖精の。まさしく
「おっさん…!?その腕は…?外せないってことか?」
おっさんは自分の腕に掴みかかっている
「クソ…。こいつの腕が、俺の腕の肉とくっついてやがるんだ…!肉ごと剥がすしかねぇ!」
おっさんは自分の腕の肉ごとそぎ落として、掴んでいた手を自分の腕から引き剥がす。地面に落ちた手を見れば、
「…!?あまり
俺は全体に向かって注意喚起をする。そして治療のためにおっさんを担ぎ上げた。風で確認すれば、メルルもタルテも近場にいるためちょうど良い。
「おっさん。治療しに行くぞ。ちょっとばかし耐えてくれ」
「すまんな…。何か吸収されたみてぇでよ。力が入んねぇんだ…娼館でひたすら頑張ったあとみてぇだ…」
…二人の前に連れて行くのやめようかな…。そう思いはしたものの、俺はおっさんを担いでメルルとタルテの元に駆けつける。二人はナナと一緒にエイヴェリーさんと何やら話しこんでいた。
「メルル、タルテ。急患だ。おっさんを治療してくれ。ただの傷じゃぁない」
単なる回復ならタルテで十分だが、僅かな間であっても
「…なるほど、先ほどの警告はこの傷ですか…。微かに嫌な魔力の残滓がありますね」
メルルがその傷口をみて診断をする。彼女も一時期はタルテのように教会に通って闇魔法を習っていたと聞いている。そのときに消毒や病原菌の殺菌などで治療師の手伝いもしたのだろう。診察する姿は様になっている。
「あー。ハルト君。ちょうど良いところにー。いまからでかいの仕掛けるよー」
「でかいのですか?それは魔法でってことで?」
先ほどの警告で多少攻め手の勢いは減ったが、それでも一方的に攻めていられてる。無理に攻めて現状を変える必要はないとは思えるが…。
「ハルト。時間だよ。あまり時間を掛けると日が暮れちゃう」
「あぁ…。なるほど。そういうことか…」
俺の疑問を感じ取ったのか、ナナがそう答えてくれる。今は他のアンデッドの姿は無いが、日が暮れれば街の中から出てくる可能性がある。そうなれば挟撃、あるいは
「僕の土魔法はちょっと通りが悪いみたいだからねー。それで光魔法使いと闇魔法使い。それと火魔法使いに相談してたってわけー」
たしかに剣の通りは良いとは言えないだろう。聖水で焼かれた傷口は煙を上げてはいるものの、ゆっくりと回復していっている。エイヴェリーさんの全力の攻撃であれば、細切れにできるかもしれないが、それにはちょっと剣が足りない。さすがに今戦っている面々から剣を取り上げるわけにも行かないだろう。
「メルルとタルテちゃんは疲弊してるから、私がメインでやるつもりなんだけど…。ハルトも手伝ってくれないかな?」
ナナは俺に向かってそう呟いた。アンデッドに特攻のあるのはメルルとタルテの魔法だが、それもあってここまでに大分無理をさせてきた。…魔法を打つのが好きなナナは多少、不完全延焼なのだろう。
「解かった。そんじゃま、作戦立てようか…」
俺はそう言ってナナと向き合った。
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