第28話 VS月島信長(1)

 夜の公園で僕と月島くんはにらみ合う。背後を振り向くと、飛鳥井さんが「信じられない」とでも言いたげな表情で僕のことを見ていた。

「原田くん……どうしてここに?」

「ちょっと胸騒ぎがして」

 少し気取って答えるが、その実、心臓はバクバクと大きく音を立てていた。

 良かったぁ。間に合った。安堵と共に、僕は密かに胸をなで下ろす。

 僕がここに来れたのには理由がある。

 今日ファストフード店から帰宅した僕は、飛鳥井さんが帰り道で見せた、あの思い詰めたような表情についてずっと考えていた。

 あの時、飛鳥井さんはいったい何を考えていたのか。それがどうにも気がかりで、あの表情を思い出す度に胸騒ぎがしていた。

 そして考えるうちに、一つの可能性に思い当たった。

 もしかして、飛鳥井さんは自分1人で月島くんの件に決着を付けるつもりなのではないか? と。

 その可能性に思い立った瞬間に、居ても立ってもいられなくなった。

 すぐに電話をかける。しかし、彼女は出なかった。

 嫌な予感がした。僕はすぐに家を飛び出し、飛鳥井さんの家へ向かう。

 そして、向かう道中で横を通りがかった公園で飛鳥井さんと月島くんを発見し、月島くんが飛鳥井さんに殴りかかろうとしているのを見たので、慌てて飛び出してかばったというわけだ。

 会話は聞こえなかったし、僕が見つけてすぐ殴りかかっていたので、いまいち状況はつかめていないが、月島くんの反応からして、飛鳥井さんが彼を説得しようとして失敗したのだろうということは予想がついた。

 とにかく、僕が今するべきことは飛鳥井さんを守ることだ。

 僕は飛鳥井さんと月島くんの間に割って入り、飛鳥井さんを背後にかばって立つ。

「ここは僕に任せて、飛鳥井さんは逃げて」

 飛鳥井さんに耳打ちする。

「でも……」

「大丈夫だから。僕を信じて」

 そう言って、月島くんに正対する。

「飛鳥井さんは僕が守る」

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