第24話 翌日
金曜日。昨日までの四日間で中間試験が終わったので、今日は普通の授業日だ。どうせ明日は土曜で休みなのだから、今日もついでに休みにすれば三連休ですっきりするのにと思うが、事前にカリキュラムで決まっているため休みにできないらしい。テストとテスト返しの間を埋めるための無駄な一日。どうせ授業も進まないのに何の意味があるのか。
はぁ、頭が痛い。親を安心させるためとはいえ、無理してまで来る必要なかったなと僕は後悔した。
昼休み。一人で弁当を食べていると、クラスメイトの女子に話しかけられた。
何気なく「何か用?」と訊くと、自分でも驚くほど愛想の悪い声が出た。昨日の怪我で顔面が青アザだらけになっているので余計ガラが悪い。申し訳ないと思いつつ、言い直すのも面倒に思えたため、そのまま返事を待つ。
すると、クラスメイトの女子は少し怯えた様子を見せながら、「高山さんが話あるらしいんだけど……」と言って教室の入り口を指した。
クラスメイトの人差し指の示す先に視線を向けると、そこには確かに高山さんが立っていた。彼女は僕と目が合うと、小さく手を上げる。
正直、今日は気まずいので顔を合わせたくない気分だったが、目が合ったからには無視はできない。渋々立ち上がり歩き出す。
僕と高山さんは教室前の廊下で向かい合う。
「……調子はどう?」
昨日の僕の身に起こったことは、恭平からすでに聞いているのだろう。高山さんは僕の出方を窺うように、おっかなびっくり話しかけてくる。
僕は答える。
「見た目ほどじゃないから大丈夫。……でも、ごめん。次の戦いはもうちょっと待ってほしいかな」
身体は良いが、メンタルのダメージが深刻だ。闇討ちをされたのなんて生まれて初めてである。しばらく立ち直れそうにないほどショックを受けた。
こんな状態では元カレと戦えない。
「大丈夫。私も昨日のことは聞いてる。無理しないで」
おおかた高山さんは、昨日の話を聞いて心配して会いに来てくれたのだろう。嬉しい。恭平も朝からやたら気遣ってくれているし、僕は良い友人を持ったものだ。
そう思った直後、僕の様子を見て一安心したのか、高山さんは本題に入る。
「ところで、……今日の放課後なんだけど、時間ある? もし大丈夫だったら昨日の店に来てほしいんだけど」
――なんだ。僕を心配して来てくれたのとは別に用事があったのか。まあ、心配して来てくれたのも間違いではなさそうなので良しとする。
ちなみに彼女が言った「昨日の店」とは、あのファストフード店のことだろう。
「どうして?」
「話さないといけないことがあるのから」
高山さんは目を伏せながらそう答える。
彼女が言う「話さないといけないこと」とはいったい何なのか?
安斎くんの件、昨日の男のこと、飛鳥さんのこと、飛鳥井さんの元カレのこと、思い当たる節は沢山あるが、どれなのか絞れない。
昨日の今日なので安斎くんのカンニング疑惑についての進展という説が有力だが、昨日の男についてという可能性もある。彼は僕の名前を知っていたし、僕を倒せば飛鳥井さんと付き合えるみたいなことも言っていた。高山さんなら彼が誰なのか知っているかもしれない。
「……駄目?」
僕が長く考え込んでいたせいで不安になったのだろう。高山さんが心配そうな目で再度訊ねてくる。
僕は彼女を安心させるために「いや、構わないよ」と答える。
実は、僕も話したいことがあった。それなのでこの申し出はむしろ好都合だった。
「ありがとう。約束ね」
高山さんはそう言ってすぐに自分の教室へ帰ってしまった。
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