第23話 写真

 自室でくつろいでいると、唐突にLINEの通知音が鳴った。美羽みうは読んでいた漫画を閉じて首を傾げる。

「こんな時間に誰かしら?」

 少なくとも陽菜はるなではない。彼女からは先程、敬一けいいちの件で連絡をもらったばかりである。何か伝え忘れたことがあってLINEしたという可能性も一応あるが、もし伝え忘れたことがあったとしても彼女なら今日は避けるだろう。なぜなら今日は中間試験の最終日。勉強から解放されて自由な時間を謳歌する日だ。陽菜も試験前に我慢していたゲームを解禁すると言っていた。

 そうなると誰だ? 陽菜以外の友達かもしれないし、仕事に行った親かもしれないし、企業アカウントからの宣伝かもしれない。もしかしたら拓実たくみという可能性も……いや、それはない。美羽は今回の件から距離を取ることを事前に表明している。律儀な拓実のことだ。元カレ全員に勝つまでは連絡してこないだろう。

 じゃあ誰だ? 

 通知音は連続で鳴っている。回数が多いので企業アカウントからの宣伝ではなさそうだ。考えるだけ無駄なので、美羽はとりあえず見てみることにした。急を要する連絡の可能性もある。

 美羽は充電器からスマホを外す。

 そして、画面に表示された名前を見る。

 その瞬間、血の気が引いた。

 月島信長つきしまのぶなが。画面にはそう表示されていた。

 この名前は、美羽が今最も見たくない名前だった。

 こんなことならブロックしておけば良かった。そう思いつつ、恐る恐るトークルームを開く。信長からは画像が一枚と、メッセージがいくつか送られてきていた。

 上から送られてきた順に見ていく。

 一番上にあったのは画像だった。どうやら写真のようだ。しかし、やたらブレてる上に真っ黒だ。暗いところで撮ったのだろうということだけはわかるが、何が写っているのかはまったくわからない。

 解読は諦めて次に行くことにした。画像の下には吹き出しが連続していた。それを順番に読んでいく。

『倒したぞ』

『こいつと賭けてたんだろ』

『聞いたぞ』

『元カレ倒せばよりを戻すんだろ?』

『俺は倒したぞ』

『他の奴らを全員倒したこいつを』

『つまり』

『俺が最強ってことだ』

『どうだ?』

『意地張るなよ』

『戻って来いよ』

『やり直そうぜ』

 そして最後に親指を立てた漫画チックなクマのスタンプで一連の連投メッセージは締めくくられていた。

 読み進めるにつれて、美羽はだんだんと状況を理解する。

 要するに、信長が拓実を襲い、からと美羽に復縁を迫っている。状況を簡潔に表わすとそういうことだ。

 そして気付く。

 ということは……あの写真に写っていたのは――原田くん?

 どうしよう。恐れていた事態になってしまった。いや、現実は想像していたものよりもずっと悪い状況だ。

 美羽はすぐさま陽菜に電話をかける。

「もしもし? 陽菜? 落ち着いて聞いて。大変なことになったわ……」

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