第2話 美羽の困惑
いつもだったらそのまま自分の体もベッドに預けて、横になりながらスマホをいじるところなのだが、今日はそんな気分にならなかった。
頭に浮かぶのは放課後のこと。
彼氏である
実際、それを告げるところまでは美羽の予定通りに事が運んだ。拓実も了承して二人は無事に別れることになった。
だけど、そこから先が想定外だった。
まず、後ろめたさから退散を急いだ美羽が拓実に怪しまれた。
そこから「隠し事」の存在を拓実に気付かれ、別れを切り出すに至った理由を問い詰められることになった。
黙秘を貫く美羽だったが、それが逆に拓実を勘違いさせてしまう。
そして挙げ句の果てに出たのが、あの台詞である。
『だったら、もしも僕が飛鳥井さんの元カレを全員倒すことができたら、もう一度僕と付き合ってくれる?』
その言葉に勢いで頷いてしまったのも悪かった。訂正する隙さえ与えられず、拓実は教室から出て行き、残された美羽は冷静になってから激しく後悔したのであった。
「さすがに、これは
美羽は呟く。陽菜というのは、美羽がさきほどLINEを送った相手である。親友である彼女にだけは、拓実に別れを告げる計画を事前に伝えていた。
LINEでの結果報告には、「拓実に別れを告げたこと」「拓実も了承してくれたこと」の二点だけを書いた。心配させてもいけないし、なにより後半は美羽自身ですらいまいち状況を飲み込めていなかった。
「にしても、元カレを全員倒せたら復縁ねぇ……」
拓実は「美羽の元カレ」が自分と美羽の破局の原因だと信じていた様子だった。
実はその予想は当たらずといえども遠からずなのだが、事実と拓実の想像しているものとは方向性がまったく違う。
「そもそも倒すって何? 物騒なのは勘弁してほしいのだけど」
美羽には正直、拓実の思考が一切理解できなかった。
だけど、それでも彼女なりに一生懸命考えて、最終的に一つの結論に至った。
「まあ、原田くんも勢いで口走っちゃっただけでしょ」
本気で言っているわけがないのだから、気にする必要なんてない。
……それに、もし仮に本気だったとしても、それはそれでまったく問題ない。
だって、拓実が戦おうとしている美羽の元カレたちは全員、ハイスペック男子ばかりなのだから。きっと拓実では逆立ちしたって敵わないだろう。
その夜、美羽は安心して眠りについた。
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