第8話 黄金のダチョウ

 アテクシ先日、下の子くんがやっと自転車に乗れるようになったワー! などと言いましたが、予想通りというか期待を裏切らずというか、早速やってくれましたよ。

 タクシーに接触しやがった。


 あ、どうもごきげんようおなつです。

 おにいたん集団にチヤホヤしてもらいながら、いつものように遊びに行っていたのですよ。そんなに時間が経たないうちに上の子くんから電話がありました。

「あ、母さん! もーう〜……あのー……下の子くんがタクシーにぶつかったー」

 もうね、その一言を聞いた瞬間からのわたしの行動はあまりに迅速だったよね。決して大人しくないと断言できるような男の子ばっかり育てて、今まで散々色んなことを経験してきたからでしょうか。テンパってなにもできなーい、どうしよーう! などという可愛いことにはならなかったです。「今日は一日家から出ないゾ」とか思って部屋着のままでだらけていたのですが、タクシーとぶつかった、と聞こえた瞬間に立ち上がって着替え始めました。スマホをスピーカーにして上の子くんと話しつつ、着替えて眉毛描いて髪の毛セットして、マスク上着家のカギなんかを用意。家を出て歩きながら、ぶつかったらしいタクシーの運転手さんに電話を代わってもらったり、そもそもお前ら今どこに居るの、ってなって、今度は警察の人と話して上の子くんに迎えに来てもらったりなんだり、その間に脳みその反対側のところでは保険どれに入ってたっけ、などと考え、仕事中の旦那に連絡し、などなどわたしったら短時間でこんなにマルチタスクまがいのこと出来るのね、と我ながら感心するほどでした。

 上の子くんのお友だちも一度電話に出てくれて、下の子くんは怪我してないとか、これはタクシーが悪いから勝てますよ! とか、興奮気味に話していました。怪我がないなら良し。どっちが悪いかはお巡りさんに聞きます。今争点そこじゃない。ってなって、わたし今ちょっと自転車を壊しているので歩いて向かったんですが、ほーんとにもうあいつら日頃どこまで行ってんねん!! ってくらい遠かったです。おかげでわたしは珍しく翌日からきちんと筋肉痛になりましたよ。


 んで、がんばって歩いてようやく現場に到着したら、タクシー会社の人たちと警察と子どもら御一行がわらわらしていました。

 まず真っ先にお友だち数人にお礼を言って遊びに行かせてから、下の子くんを確認。下の子くんは壁に寄りかかって可哀想になるくらいちっさくなって、座って震えながらぼたぼた泣いてました。

 そのあと警察とタクシー運転手さんのところに行って事情を聞きまして、まあ平たく言うとうちの子が悪い、とわたしは結論づけました。

 なんかね、駐禁になってる狭い道に、路駐が何台も停まってたんですよ。そこをタクシーが通ろうとしたら目の前から自転車の子どもらが来たから、止まって待っててくれたんだそうな。おにいたんたちが車の脇をするっと通ったもんだから、ぼくもいける! と思って同じように進んだ下の子くんが結局よろけて、タクシーの側面を自転車で軽く擦った。という状況だったみたいですね。なんやねん全然たいしたことないやんけ。

 お巡りさんがあちらで話している間に「あんたが気をつけないのが悪いんでしょ!」と下の子くんを叱り飛ばしていたら、事故処理終わったお巡りさんは颯爽と帰っていき、そしたらタクシー会社の偉い人がこちらに来ました。

 ご年配の方だったんですけど、めっちゃ優しい方でした。

 子どもさん怒らないでやって。こちらとしてはお子さん怪我させなくて本当に良かった。ちっさい子がよろけたっていうのは初めから聞いていたから、車はこっちで直すので大丈夫やで。子どもさんも警察きて怖い思いして、もう充分やろう。うちも今後またタクシー使ってもらうこともあるだろうから。全部なかったことにしよ。

 って言ってくださいました。もうね、めっちゃ頭下げたよね。笑

 保険のやり取り面倒くさいことになると思っていたし、学校にも連絡しなきゃとか色んなこと考えていたので、本当に本当に本っっっ当にありがたかったです。上の子くんが「ここ駐車禁止って書いてあるのにいっぱい停めてるやつらが悪いんだ!」って要らんことを言ったら、「そのとおーりっ!! ほんまにそれ!! あんた偉い!!」とノリ良く応対してくださってました。

 取り敢えず運転手さんにもちゃんと頭下げに行って、新車だったらしいタクシーの擦ったあとも確認させてもらってもっかい頭を下げ、優しい対応をしてくださった偉い方にももっかい頭を下げ、みーんな居なくなってから、慌てて会社を早退してきてしまった旦那の車に自転車乗せて帰ってきました。


 下の子くんはすっかり怯えきって、ひっついて固まったまままったく離れず、せっかく乗れるようになった自転車にはもう乗らないと言い放ち、母にはくどくどとしつこく叱られ散々なことになってました。叱らないでやって、とは言われたけれどもわたしだけは叱らねばならんのよ。まったくもー。

 上の子くんは、わたしが色々応対している間ずーっと下の子くんの隣にいてくれてました。おにいたん素敵よ。

 上の子くんの幼少期からおよそ10数年、なにか起きるたびひたすら各方面に謝り倒してきているので、なんだかこういった場面には慣れてきたような気すらします。そんなことを旦那と話しながら下の子くんを抱っこしてたら、ごめんなさい、としおらしく謝ってきたので、子どもの責任取るのが親の仕事ですわ。でもお前はもうちょっときちんと反省しろ。と言っておきました。

 いやー疲れた。本当に疲れた。脚の筋肉痛がすごい。

 みなさんもみなさんのお子さんも自転車にはお気をつけくださいね。事故は急に来るからね。こんなもんに慣れてもしょうがねえんだよー。

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