第6話 学校での日常と過去

鞄から本を出し読もうとしていると、友人の月城奏つきしろかなで君嶋梓沙きみしまあずさが話しかけて来た。


この二人は、俺が高校入学当初孤立してぼっち飯を食ってた時に話しかけて来た、物好き達だ。しかもこの二人は、学校公認のバカップルな陽キャ男女なので、イチャつくのが激しい。現に今もイチャついている。


「おはよ〜翔」


「おはよう〜翔くん」


「おはよう二人共」


二人に挨拶を返し再び本を読もうとすると梓沙がシリカの話を始めた。


「なあ、翔〜今日も凄いよな聖女様の周りは」


「そうだな、下駄箱では収まらず教室でもあんなに囲まれてるなんて、流石としか」


「だよな、聖女様って何者なんだろうなあの地毛の銀髪」


「さぁな俺にも分からん」


俺がそう言うと梓沙は、若干からかう様に言った。


「翔って本当に恋愛に無頓着だよな」


「まあ、そうだな。いつか別れるかもしれないから辛い思いは、したくない」


そう俺は、恋愛に微塵も興味が無い。理由は、簡単だ。最後には、必ず別れるし、いざこざが起こるからだ。故に中学生の頃、陽キャグループの女子が俺の事を好いてて、それが気に入らなかった陽キャ男子に嫌がらせをされた事が有るからだ。


「辛いって俺らは今何もラブラブ何だぞ?」


そう言うと梓沙は、奏を抱き締めていちゃつき始めた。


「ほれほれ〜これを見たら翔も彼女欲しいだろお?」


「いや、熱苦しい。イチャつくのは家でしてくれ」


俺が言うと梓沙は、不服と言わんばかりに見てくる。


「つまらないなあ〜」


「つまらなくて悪かったな。で翔、課題のプリントはやったのか?」


そう言うや否や梓沙の顔は、見る見るうちに青ざめて行く。


「ぷ、プリントって数学のか……?」


「そうだが?」


「お、終わった……翔見せてくれ!?」


「つまらない男だから俺は見せないよ」


俺が嫌味気味に言うと翔は、顔を顰めながら頼み込んで来た。


いつもと同じだ、こいつはイチャついててプリントをやるのを忘れてた毎回、毎回俺に見せてと頼んでくる。だが何故だか答えを見てプリントをやってる割にはちゃんとテストでは上位に位置している。


「悪かった! 謝るから見せてくれ!」


「はあ、分かったよ」


「マジ助かるかる! すぐ返すから」


プリントを俺から借りた梓沙は、すぐに自席に戻ってペンを動かし始めた。それを横で見てた奏は、俺を見て言った。


「いつもありがとね、翔くん」


「気にするな」


「ああ、言ってるけど多分梓沙は、梓沙なりに翔くんに恋愛をして欲しいんだと思う」


「そっか」


俺が素っ気ない返事をすると奏は、ニカッと笑いながら「うん!」と言って梓沙の隣の自席に座って授業の準備をしていた。


(俺が恋愛なんて……する訳が無い……)


恋愛は大っ嫌いだ。あんな事があったんだからもう二度と恋愛なんてしたくない。


そう俺が自分を卑下しているとスマホのMainの通知が鳴った。その通知を見てみるとシリカからだった。その内容を見てみると。


『翔くん、顔を上げてください』


その内容を見て、俺はシリカの方を見た。


シリカは俺の視線に気付いたのか、再びMainを送ってきた。


『翔くん顔が落ち込んでるから笑顔になって下さい』


返事を返そうとした時いつの間にかシリカが俺の座席の横に居て、通りながら言った。


「家に帰ったら楽しみにしてて下さい」


その言葉を聞いた俺は、無自覚に――。


「楽しみにしとくよ」


と自分でも驚くくらいにすんなりと返事をしていた。


本当にシリカは凄いな。聖女様だから人と沢山接するのか人の気ずかいが上手いな……。一生頭が上がらいかも。


俺がシリカの事を考えていると授業開始の独自のチャイムが鳴り担当教師の声によって授業が始まった。




























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銀髪吸血鬼のシリカさんは好きな人に告白をされたい。欲を言えば手を繋いでキスをしたい 翠川おちゃ @sankumaasi

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