[12] 理論
自分の心霊理論押しつけてくるやつって滑稽だよな。
去年の夏に俺と友人の2人で近所の廃屋に肝試しに行ったんだけど、そいつお守りなんて用意してきてんの。なんでも隣町の神社まで行って買ってきたんだって。
ばっかじゃねーのと思ったんだけどあんまりにもそいつが真剣に押し付けてくるもんだから、しぶしぶ受け取ってポケットにつっこんどいた。その時点でなんかもうちょっと気分なえてた。
気を取り直して廃屋探索してったところ1階には特になんもなかった。というかすでに人がたくさん立ち入った形跡。『呪われろ』とか『すぐ帰れ』とかの落書きがそこら中にあった。
こりゃめぼしいものは見つかんないだろうなと半ばあきらめムードで2階に向かったら急に物音。何かがごとごとと震えている音がはっきり聞こえた。
音を頼りに進んでいけば大きな箱が1つ。
大人は無理だけど子供ならその中に入ってそうなサイズのもの。木でできたずいぶんと古めかしいものなのに、どう力を込めても全然開く気配がなかった。
なんでそんな子供が入れそうなってこと連想したかと言うと声を聞いた気がしたから。「開けて」ってか細い少年の声。箱に触れた時ひときわ強くそれを感じたような記憶あり。
懐中電灯で照らしてみれば箱の上面に一枚お札が貼ってあった。画数の多い漢字が並んでてなんて書いてあるのかは全然わからなかった。
で、そのお札剥がせばいいんだって気づいたんだけど手を伸ばしたところでその手を横から友人に掴まれた。絶対にヤバいものが中で封印されてるから開けない方がいいのだという。
いやいや向こうは「開けてくれ」って言ってんじゃんって反論したら、それは罠であって箱の中でなんらかの悪霊が力をつけて外に出ようとしてるのだと主張して聞かない。
こっちも面倒になったのでそのまま帰ることにした。
俺は俺で用意してたものがあって、家出る時ふと思いついて食卓の上にあったアジシオを持ってきてた。悪いものには基本的に塩がきくって聞いたことがあったから。
廃屋出たところで自分の体にぱっぱっとアジシオひと振りして、一応友人にも「お前はどうする」って聞いたら、「そんなもん要らねえよ、下手な防御はむしろ危険だ」ってきれられた。
その日1日で俺はもうすっかり友人にはうんざりしてたんで、いちいち言い争うことはしなかった。その場で解散して各々家に帰っていった。
友人は四肢を引き裂かれて死んた。
何がよかったのか何が悪かったのかわからん。もしかすると友人も理論はあってたのかもしれん。ただそれらは理論でしかなく実際は時と場合によっていろいろあるってことなんだろう。
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